【灰竜】1
目の前に信じがたい光景が広がっていた。
──幻だ。
──違う。
──幻だ。
──違う。
──現実だ。
──違う。
──幻だ。
──違う。違う。違う………!!
「………嘘だ…」
見つけた時には死んでいた。
可哀想になるほど、青白くて冷たい。
生気のない幼馴染の姿を、網膜に灼きつくほど覚えている。
それがまた、目の先で確かに動く幼馴染の姿を確認した。
俺は咄嗟に茂みの中に身を隠す。
人違いかもしれない。でも、彼女だ。遠い昔から覚えている面影が目先の彼女の姿と重なった。
山の中腹で見回りをしていた最中だった。
待ち望んでいた瞬間。
全身が打ち震える。
止まっていた息がようやく吹き返した心地がする。
思いがけず長らく捜していた彼女が現れて、期待と混乱で、どうしていいのか暴走しそうになる心を鎮めるのに努める。
そのまま気配を消して、様子を見守った。
彼女の肩を揺れ、顔には笑みを湛え、蒸気が上がりそうなほど頰を赤くしている。
目は溌剌とした眼差しで光が宿り、肌も青白くなんかなく、冷えた外気に触れて白い息が吐かれている。
どうやら走ってそこまで駆けてきたようだった。
視界が滲む。
乾いた音がぽつぽつと聞こえた。
涙だ。
知らない間に零れ落ちた涙が枯れ葉に当たっていた。
泣きたくないのに、彼女を見ようとすればするほど、とめどなく溢れてくる。
袖で目元を拭いながら視線を戻すと、先ほどまでいなかった誰かと話しているのが見えた。
彼女の横に立ち、白い猫の特徴を持つ短髪の青年と談笑している。
生前と変わらない。
彼女の笑い声が届いたのは微かだったが、陽だまりに包まれたように暖かくなる。
遠い昔の声が蘇る。
──ああ……そこにいたんだね。




