「見た目は父様、中身は母様!遺伝子最強です!
私はその時、ピンッと来ましたの!
父様が母様のことを
『天然人たらし』
と仰っていた理由に。
我が母ながら……幼い置物王子の心まで掴むなんて。
本当に、恐ろしいお方ですわ!
ですが、私的にはラッキーですの。
だって、母様に恋をしたのなら──
私は、置物王子の婚約者候補から外れる、ということですもの。
私は顔立ちは父様似。
髪の色も瞳の色も母様そっくりなのは、オーレリアですわ。
妃候補に選ばれるとしたら、どう考えてもオーレリア。
あとはもう、
オーレリアが置物王子の妃候補になるよう、流れを作れば良いだけですの!
以前、父様と母様が話していたのだけれど、
公爵家の令嬢は、王家に求められたら結婚を断れないらしいのですわ。
──それは困ります。
私、結婚相手は自分で選びたいですもの!
そんなことを考えているうちに、
気づけばエンジェラ様も置物王子も、母様に連れられてサロンへ向かって歩いているではありませんか。
「フィオナ、行くよ」
ぼんやり考え込んでいた私に、手を差し出して待っていてくれたのは、ルイス兄様でした。
私は小走りで兄様に駆け寄り、そのまま抱きつきましたの。
兄様は優しい笑顔を浮かべて、
「フィオナは、いくつになっても甘えん坊さんだな」
そう言いながら、私を抱き締めてくださいました。
……あの時のエンジェラ様のお顔。
ぷぷっ。
──でも、きっと兄様はマザコンだと思うのです。
一にも母様、二にも母様。
三、四が私とオーレリアと父様で、
五がエンジェラ様と置物王子。
でも、母様の兄様への溺愛っぷりを見ていると、仕方ない気もしますわ。
兄様は「愛される」ということを知っていらっしゃるから、
誰に対しても平等に優しいのですもの。
……まあ、私たち家族に対しては、特別ですけれども!
そんなことを考えているうちに、サロンに到着してしまいました。
「ルイス様、私のお隣に……」
そう言いかけたエンジェラ様を無視して、
私とオーレリアで兄様の両脇を確保したのは、言うまでもありませんわ!
「こら! フィオナ、オーレリア!
エンジェラ様に失礼ですよ!」
そう言われましても、無視ですわ。
無視、無視!
すると母様が、困ったような顔をして、
「こんな調子じゃ……婚約者なんて、まだ先の話ね」
なんて仰るものですから、
「私は八歳、オーレリアは六歳ですわ。
婚約者なんて、まだまだ早いですわ!」
と、即座に言い返しましたの。
すると母様、
「私が婚約したのは、五歳だったわよ」
と口にしてから、
『しまった!』というお顔をなさったのを、私は見逃しませんでしたわ。
「お母様。その婚約者は……お父様だったのですか?」
そう問い返すと、母様は口ごもってしまいました。
「でしたら、私たちに婚約者など、まだ早いですわよね?」
にっこり微笑んで言って差し上げました。
すると母様ったら、
「まったく……口が達者なんだから。誰に似たのかしら?」
なんて仰るのです。
その時──
入口で話を聞いていた父様が、とうとう我慢できずに笑い出しました。
「フィオナの性格は、間違いなくフレイアだと思うぞ」
そう呟くと、父様大好きなオーレリアが、
「父様~!」
と駆け寄ります。
父様は嬉しそうに両手を広げ、
そのままオーレリアを大切そうに抱き上げました。




