エンジェラ姫対ルイス兄様見守り隊~置物王子……恐るべし
「出ましたわね、ブラコン姉妹!」
そう叫びながら、エンジェラ様が私たちを指さした。
「失礼ですわ! 私たちは『ルイス兄様守り隊』ですの!」
「ですの!」
そう言い返した私たちの背後から、
「エンジェラ様、いらっしゃいませ。
今日はどのようなご用件ですか?」
兄様の、柔らかくて優しい声が聞こえた。
――ダメですわ、兄様。
この女に、そんな優しい声をかけてはいけません。
「ルイス様~♡」
目をハートにして、兄様を見上げるエンジェラ様。
「チッ」
思わず舌打ちをすると、
「フィオナ? 今の舌打ち、まさかフィオナじゃないよね?」
背後から兄様の声がした。
――まずい。
兄様は、礼儀作法にはとても厳しい。
ゴゴゴ……と音を立てているかのような、怒りのオーラを背中に感じる。
「に……兄様、気のせいですわ」
作り笑顔を浮かべる私に、ルイス兄様は言った。
「だいたいフィオナは、女の子なのに剣術など学ぶから……」
『はぁ……』と溜め息をつかれる。
すると、その様子を見て、
「プッ」
と、エンジェラ様が笑った。
私がキッと睨みつけると、
「剣術? フィオナは剣術を学んでいるのか?」
と、声が上がった。
いつもならエンジェラ様の隣で大人しくしているバーナード王子だった。
バーナード王子は基本的に無口で、大人しい。
綺麗な顔立ちをしていらっしゃるから、勝手に理想の王子様像を作られ、女子たちにきゃあきゃあ言われているけれど――
私はルイス兄様以外に興味がないので、正直どうでもいい。
(そもそも、うちの父様も母様も美形ですし。
美形耐性はありますの)
「はい。普段は我が家の護衛騎士に学んでおりますが、
たまに父様からも教わっておりますわ」
そう答えると、
「レイモンド殿に学んでいるのか!」
突然、置物のようだったバーナード王子が前のめりになった。
「え? えぇ……」
戸惑う私に、
「それは羨ましい。一度だけ、レイモンド殿の魔法と剣の合わせ技を拝見したが、実に見事だった」
思い出してワクワクしているバーナード王子を見て、
(あら。ただの置物王子だと思っていましたけれど……
意外と見どころがありますのね)
そう思っていると、
「まぁ、まぁ……なんてお似合いなお二人かしら。
バーナード兄様が女性とお話なさるなんて、珍しいですのよ」
エンジェラ様がそう言いながら、どさくさに紛れて兄様に近づこうとする。
──が。
オーレリアが、スッ……と一歩前に出て、それを阻止した。
(ナイスですわ、オーレリア!)
親指を立てて微笑むと、オーレリアも親指を立てて頷く。
そんな私たちの様子を見て、
「プッ」
と、バーナード王子が吹き出した。
「お二人は、本当にルイスが好きなんですね」
その時、私は初めて――
“置物王子”の笑顔を見た。
思いのほか可愛らしいその笑顔に、
オーレリアの瞳がハートになったのを、私は見逃さなかった。
「オーレリア!」
私の声に、オーレリアはハッと我に返る。
──置物王子……恐るべし、ですわ。




