三度の飯より兄様が好き──っ!
物心ついた時から、私には大好きな人がいた。
「フィオナ、僕の可愛い大切な妹」
私を抱き締めてくれる優しい腕は、父様のものとも母様のものとも違う。
それは、兄──ルイス兄様の腕だった。
妹のオーレリアが生まれたら、きっとその愛情は父様や母様のように、オーレリアへ向かうのだと思っていた。
でも、両親がオーレリアにかかりきりで、私が寂しい思いをしていた時も、ルイス兄様だけは変わらなかった。
「オーレリアとフィオナは歳が近いから、寂しいよね」
二つ下のオーレリアは身体が弱く、しょっちゅう熱を出していた。
母様は付きっきり。
寂しくなかったと言えば嘘になる。
それでも兄様は、私を抱き締めて、「大好きだよ」をたくさんくれた。
いつしか私の夢は、兄様のお嫁さんになることだった。
……が、しかし。
兄妹では結婚できない、という現実にぶち当たった。
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優しくて、頭が良くて、保護魔法が得意なのに、攻撃魔法と剣術が苦手なルイス兄様。
父様はそれを察していたのか、兄様の頭を撫でながら言った。
「得意なことを伸ばせばいい」
兄様の憧れは、強くて格好良い父様。
我が父ながら、父様は本当に格好良い。
魔法も剣術も、父様に勝てる人はごく一部なのだとか。
父様はよく、こんなことを言っていた。
「お前たちの母様が無鉄砲だからな。強くないと守れないんだよ」
苦笑いしながら言うけれど、私はそんな父様が自慢だ。
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そんな我が家に、最近、不穏分子がやって来た。
この国の姫君、エンジェラ様である。
事あるごとに我が家を訪れては、
「ルイス様~♡」
と、兄様に抱きつこうとする。
──もちろん、私とオーレリアで阻止しますわ!
「エンジェラ様、本日はどのようなご用件ですの!」
「ですの!」
私とオーレリアで両手を組み、兄様の前に立ちはだかる。
一度、兄様にエンジェラ様のことをどう思っているのか聞いたことがある。
「う~ん、そうだなぁ。フィオナと同じ年齢だから、フィオナとお友達になれるといいね」
……斜め上の回答が返ってきた。
ということは。
エンジェラ様は、兄様のお眼鏡にかなっていない、ということですわ!
そんな方を、易々と兄様に近づけるわけにはいきません。
兄様は我が家のマイナスイオン。
いえ、空気清浄機と言っても過言ではありません。
あの母様でさえ、ルイス兄様に注意されると大人しくなるのですもの。
そんな兄様の婚約者様は、私とオーレリアで吟味しなくてはなりません。
だから私たちは──
『ルイス兄様守り隊』として、日夜業務に励んでいるのですわ!
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そうそう、その業務の一環として。
私、攻撃魔法と剣術を習得中ですの。
兄様の補佐は、妹である私が担うべきものですもの。




