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ロイヤルマリッジがじれったいので、私いやらしい雰囲気にしてきますね?  作者: 鴇田 孫


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第6話 病めるときも恋せよ作戦

 あ、それはもしかすると旧石器時代の石器じゃないかな?なんて、新しい場所に野菜を植えたいので耕していたら石器が出てきて調査団が入り今日は野菜を植えるどころじゃなくなったハゥラです。こんにちは。


 昨日はエリザベス様が興奮して鼻血を吹き出して倒れてしまったので、セオドールに運んでもらった。

 本来なら種を植えてたら手がふれあって、「あっ」みたいな雰囲気に持っていきたかったのにコンチクショウである。


 エリザベスを部屋に寝かせ、医者を呼んで無事が確認できたので(そりゃそうだよね、どんなハレンチなことを想像したんだ…)

 ハゥラは両腕を組み、ふむと考えこんだ。

 ニヤリと笑うとセオドールを見た。


 「いいわ、セオドール。次の作戦を考えましょう!」


 「えっ、もう!?」


 「“病めるときも恋せよ作戦”よ!」


 「……いやな予感しかしませんね」


 「つまりね、アルフレッド殿下をお見舞いに行かせて、ベッドの横であーん♡っておかゆを食べさせるの!」


 「……それ、殿下が気絶するか、わたしが止めに入るかの二択ですね」


 「だーいじょうぶよ! 恋の神様は、行動した者に味方するの!」


 そう言ってハゥラは拳を握った。

 セオドールはため息をつきながらも、その横顔を見て、少しだけ微笑んだ。


 (……全く、遠慮なく引っ掻き回すのが得意なんだな。畑の土じゃあるまいし。)


 まぶしくて、あたたかくて、ちょっと暴走気味で。その光の中にいると、自分の中の冷たい部分が少しずつ溶けていくような気がする。


 「じゃ、準備してくる!」

 「……ああ、止めるのは無駄でしょうしね」


 ハゥラはスカートの裾をひるがえし、風のように駆けていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「よしっ、作戦開始っ!」


 ハゥラは両手に大きなお盆を抱え、得意げに歩いていた。

 中身は、辺境の母直伝の野菜がゆと、ハーブ入りのスープ、湯気といっしょに、やる気もモクモク立ちのぼっている。


 「セオドール、行くわよ!」


 「……本当に行くんですね。はぁ」


 「当たり前でしょ。恋は待ってても実らないのよ!」


 セオドールは渋々、ドアの前に立った。中では、エリザベスがベッドに横たわっている。

 額に白い布をのせ、寝息は穏やか――


……なのだが、枕元の近くの机のうえには山のような書類が積まれていた。


 「ちょっ…これ全部……アルフレッド殿下の動向日誌……?」


 「これこれ、勝手に見るでない…だいたいいつもこうですよ、寝る前に、日付ごとに並べております。見返したりして、楽しい時間をお過ごしです。」

 「恋する乙女って、研究熱心なのねぇ……」


 (w)


 ハゥラは小声で感心し、そっと扉を開けた。


 「エリザベス様、お加減はいかが?」


 「ハ、ハゥラ…………?」

 「お見舞いに来たの! 今日はね、“病めるときも恋せよ作戦”を決行するのよ!」


 「えっ……な、なにをするの……?」


 「おかゆ! 愛情たっぷり、ハート型よっ!」


 お盆をどん!と置くと、セオドールが頭を抱えた。

 「ハート型おかゆ」という発想が、王城の格式と完全に不一致なのは明らかだ。


 そこへ、タイミング悪く――いや、良すぎるというべきか――

 ドアがノックされた。


 「殿下がお見舞いに参られました」


 「えっ!? もう来たの!?」

 「……ハゥラ様、どんな速攻なんですか」


 ハゥラはすばやく、エリザベスの肩を押した。

 「さあ、笑顔! あ、でも病人らしく、ちょっと儚げに可愛く! はい、布団整えて、髪ふわっと!」


 アルフレッドが入ってきた瞬間、部屋はふわっと甘いハーブの香りに包まれた。

 殿下の眉がわずかに動く。


 「……様子を見に来ただけだ。無理をするな」

 「ひゃ、はい……アルフレッド様……」

 エリザベスの声は蚊の鳴くように小さい。


 そこでハゥラがすかさず動いた。

 「アルフレッドさ〜ん、せっかくなので、はいっ! “お見舞いのあーん♡”をどうぞっ!」


 「……は?」

 「せっかくですし、ねっ? 看病って、愛の力が一番効くって辺境では常識なんですよ!」


 アルフレッドの手にスプーンが押しつけられた。

 エリザベスの顔は真っ赤。

 セオドールは後ろで壁に頭を打ちつけている。


 「お……おまえ、何を考えているんだ」

 「エリザベス様が元気になる事だけですよっ!さ、ささ、どうぞ」


 ハゥラの目がキラキラしている。悪いヤツだw

 殿下は観念したように息をつき、スプーンを取った。


 「はぁ……それでは、少しだけ。」


 スプーンがエリザベスの唇に近づく。

 エリザベスのまつげが震える。

 その瞬間――


 「殿下、スプーン逆、逆です!」


 「……っ!」


 ハゥラの声で、せっかくの空気がぷつりと切れた。

 おかゆはスプーンの柄から滑り落ち、アルフレッドの手に熱々のしずくを残した。


 「……あっつっ!」

 「きゃーっ! 殿下ー!殿下の玉のような肌にやけどーーーー!」


 慌てるハゥラと、赤くなって固まるエリザベス。

 セオドールはため息をつきながら、布を差し出した。


 「……やっぱり、恋は“実験”ではなく“自然発酵”が一番ですね。」

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