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旅の第一歩

 

 スキルの取得を終えたセンリはその後日が落ちるまで疲れの為か深い眠りについている。

 彼女の寝顔が見れないのは残念であが、それよりも問題は暇だという事、馬車でもそうだった様に彼女が眠ると視界は真っ暗。

 暗闇の中眠気の来ない状態で過ごすと言うのはとてつもなく辛い。


(にしても何か相談しているのだろうか)


 気配察知に宿屋内には隣の部屋に集まる5人の存在、他の仲間も合流し一部屋に集まって数時間はそのまま動いていない。


(後は外の連中、敵意は無いにしろ監視されているようで嫌になるな)


 人気の多い所では気づかなかったものの、人が減れば自ずと尾行されている事にも気配察知で気付く事が出来た。

 猫のマタタビ亭に来てからは動きを止めた相手、目的は俺達か桜吹雪のメンバーなのは間違いない。


(危機察知に反応無いから今は放置してるが、起きたら伝えるだけはしといた方がいいかもしれないな)


 思考を回す事で暇を潰し時間の経過を待っていたら扉を叩く音が聞こえる。


(東條ちゃん!おぉい、起きろ、千鶴が来たみたいだぞ)


 やいやいと彼女の思考に思念を送ってみるが、寝ている者に対して果たして有効なのかどうか分からない。

 結局反応がなく入ってきた千鶴に起こされる事となった。


(寝込みを襲われても対処が遅れるな、これは何か手段を考えなければ)


「ん、んんー、私寝ちゃってたんですね」


「色々あったし疲れちゃったのかもね、もうすぐ夕食の時間だから起こしに来たんよ」


 千鶴の明るい口調が今は和む、センリにとっても見せはしないが心細さを払拭してくれる存在になっているようだ。


 1階の食堂へ連れられて共に降りれば、そこには既に他のメンバーが座って待っていた。


「改めて自己紹介をするとするか、儂はリーダーの劉禅(りゅうぜん)


「知っての通り、千鶴ちゃんだよ」


「うむ、ライオットだ」


「うちはシャイリンなぁ、まちごうても子供扱いしたあかんよ」


 可愛いとぼそっと呟きかけたセンリだったが、その前に彼女から釘をさされてしまう。

 ハーフドワーフなのだと説明するシャイリン、12歳位に見える赤毛が目を引く少女に見えるが実際はこの中で一番の年長者であった。


 俺はステータスで実年齢を知ったが女性の年齢に触れるのは野暮と言うものだろう。


「僕はロン、精霊魔法で主に回復をになってる、うちのメンバーは遠慮がないし迷惑かけなかったかい?」


 シャイリンと同じくカンフー映画に出てきそうな服装に身を包んだ細い線の細めの男、物腰が穏やかでメンバーの中では1人浮いている様に思える性格をしている。


 桜吹雪は4人が前衛職、後衛職のロンは他のメンバーの尻拭いを行う気苦労が耐えない人間のようだ。

 称号にみんなのお母さんと巫山戯たものがあって笑いそうになったが、効果に仲間への回復、補助効果1.5倍とあり笑えなくなった。


(なになに、気苦労が絶えずフォローばかり、面倒見が良く母の様な包容力を持つ者に与えられる)


 効果は破格だが欲しいと思えないのは、彼の幸薄そうな雰囲気が感じ取れるからだろうか。


「うちはこの5人が全メンバーだ、これも縁よろしく頼むぞ」


 前衛職ばかりに偏っている気がするがそれなりに名の知れたパーティーらしい、出身国の珍しさと言うのも有名なひとつでもあるのだとか、何より彼らの人の良さは少し共にすれば分かる。


「さて、センリ、国を出るなら儂らと共に行かんか?」


 運ばれた食事をしながらたわいない話をしていたと思えば、食事が終わった瞬間に劉禅から突然の申し出があった。


「劉禅、あんたはせっかちが過ぎるわ。警戒さしてしまうで」


「こういうのは早い方が良いんだよ、面倒を抱えておるのは分かっておる、それを踏まえての話だ」


 センリには何故そんな事を言われるのかは分かっていない、桜吹雪のメンバーは彼女が監視されている事に気づいているのだろう。

 千鶴の職業はそういうものに敏感そうであったし。


(多分街に入ってからこっちを監視している奴らに気づいてるんじゃないか)


「っ!えと……私」


「まぁまぁ、大丈夫、無理にとは言ってないからね……気づいてる素振りはしちゃだめだよ」


 さりげなく窓とセンリの間に体を入れ、彼女が見せた動揺を隠した千鶴が彼女へ耳打ちする。


「詳しい事聞くのは野暮ってもんやし、それでもうちらはあんたの力になろう決めたんや」


「元々僕達も離れようとしていた所だったんだよ、あまり居心地の良い所では無いからね」


「女の一人旅危ない」


「何より世間知らず、そういうのは慣れっこなんでな、慣れる為にもセンリにとって益がある話だと思うが」


 確かに彼らの話は的を射ている、経験も知識も足りない今、彼女だけで旅をさせるのは無謀だ。


 何より善意で言っている事は間違いない、少しの付き合いだが彼らがほっとけないお人好しなのは良く分かる。


(ここは……)


「お願いします、迷惑かけるかもしれません。でも、今は頼るのが一番な気がします」


 俺が提案する前に彼女から言葉が出る。

 彼女自身も不安はずっとあったようだ、召喚された当初から俺の指示に従ってくれたのも、右も左も分からない現状で頼れそうな相手がいたからなのかもしれない。


 孤独というのもあったかもしれない、所詮今の俺は存在不確かなスキルという謎だらけ、不安をぬぐいさる存在には慣れていなかったんだろう。


(俺も賛成だ)


 こうして俺達は国を出るまでの間、桜吹雪のメンバーと行動を共にする事となった、この選択が新たな火種になっているとは露知らずに……

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