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桜吹雪

(困った、早速ピンチになったな……)


「シンエイさんが近道だって路地裏に入るからじゃないですか!」


 東條ちゃんがすっごく怒ってらっしゃる、感情が雪崩込んでくるから間違いない。


 冒険者になると意気込んでギルドを目指した俺達だが、マップで最短距離を目指したのが悪かった。


(そう言われてもね、東條ちゃん狙いでもあるから君の美貌が原因かもしれないよ?)


「ご機嫌取ってる場合ですか、どうにかしないと……」


 見た目気にしない彼女にこういうお世辞は通用しなかったが、野暮ったい見た目を改善した彼女はなかなかの美少女である。

 スタイルも男を引きつける魅力もあるので彼らは確実に東條ちゃんを狙って来ていると思う。


 それよりも今はこの現状をどうするかだ、4人の男に路地でエンカウントし、ご丁寧に身軽な小柄な男に逃げ道まで塞がれてしまっている。


 有り体にいえば八方塞がり、彼らを倒すにしても勝算があるとは思えない。


(詰んでしまったかな)


「もう少し私の身になって言葉選んでください」


 流石の東條ちゃんも危機的状況に震えている、緊迫感を和らげようと軽いノリで語りかけるが案の定怒られてしまった。


「何1人で叫んでんだ」


「怖くて現実逃避してんじゃねぇか」


「俺らが夢心地を味あわせてやるからよ、そんな怖がらなくったって良いんだぜ」


 目の前の大柄な男達が口々に言葉を吐き、背後を取った男はナイフを舌なめずりしながら彼女の足を舐めるように見ている。


 明らかにゲスな人種で間違いないだろう。

 店主から情報を得ていたが、この国の冒険者は相当ガラの悪い者が多いのは間違いないようだった。


(何とか出来なくも無いんだけどね、ちゃんと東條ちゃんと話し合ってスキル取りたいしさ)


「今そんな事言ってる場合ですか」


(それもそうだけど簡単に使えるスキルがあるかどうか……)


 一覧を開き、今の状況でも有用なスキルを探す、これならと目に付いた風魔法のスキルをアクティベートしてみる。


(エアショットがこれで使えるはず)


「どうやってですか?」


(えっ?あれ?俺は使い方が分かるのにな、使用は出来ないようだけど)


 変わりに使用してみるとバッテン印とともにブッブーと音が思考に割り込んでくる。


「もう、頼りになりませんね」


(グサッ、その通りなので何も言えない……スキルになったせいか余計にダメージ受ける言葉だな)


 そうこう言っている間に東條ちゃんの細腕が男に掴まれてしまう。

 これはマジでシャレにならないピンチである。


「ちょっ、痛いっ!離して」


(ど、ど、ど、ど、ど……)


 流石に焦りに動揺してしまい、どうしようとも念話で伝える事さえ出来ていない。

 そんな時、彼女の手を掴んでいた男の顔に蹴りが食いこんだ。


「女の子に乱暴する外道は天誅」


 鼻の骨が折れたに違いない、靴が顔にめり込み大きな体が後方へ吹き飛ばされて行った。


 飛び蹴りを放った人物は東條ちゃんの肩を支え、残りの男へ向かって親指を下向きに立てている。


「この、何しやがる、しゃしゃり出てくんじゃねぇ、うぎゃっ」


 背後にいた男がナイフを彼女の背に向けて突き出そうとするが、頭上に握られた拳を落とされて地面へと叩きつけられる事になった。


「この国の治安は最悪だな、冒険者にもクズが多い、儂らの株を下げんで貰いたいもんだ」


 東條ちゃんと壁の僅かな隙間を塗って前に出た影、1人は鳩尾を、もう1人は顎を柄で殴ったのだろう。


 実際には見えていない、ただ殴られた所起点に吹き飛ばされた事で推測出来ただけである。


「ねぇ大丈夫?女の子1人でこんな所彷徨ったら危ないよ」


 スラッとした細い体のシルエットがわかりやすい、フィットした服に身を包むお下げ髪の少女がまだ震えていた東條ちゃんの手を握り声をかける。


「しかし、ここはクズばかりだな、やはり早々に引き返した方が良いかもしれんな」


「確かに、魔竜の復活で魔物の活性化で儲かると踏んで来たが、長居したい場所では無い」


 袴姿の刀を腰に下げた白髪の男と大盾を背中に背負い、地に伏している男達を縛り上げる男が嫌気がさした表情を浮かべた。


「あの、ありがとうございました」


「無事で何よりだ、しかし、もう少し危機感を持った方ががいいぞ、娘さん」


「すいません、冒険者ギルドに向かうなら近道だと聞いて」


「なになに、女の子が1人でギルドに用事なんて珍しいね」


 突発的な事についていけていなかった東條ちゃんの思考が追いついたのか、頭を下げてお礼を口にし、危機を脱した事に安堵する。


「千鶴、こんな所で話していても気が休まらんだろ、ギルドにこいつらを連れてくついでに送ってやればよい」


「それもそっか、ギルドに行くなら私達と行こうよ」


 「じゃあ、お願いします」


(ふむふむ、そっちの嬢ちゃんが忍びであっちの白髪のおっちゃんが剣豪と、後ろのあんちゃんはガーディアンか、安心だな)


 「シンエイさんはもう少し反省してくれません?」


(えっと……マジすいませんでした)


 地面にめり込むつもりで土下座するつもりで深く猛省する俺だった。

そろそろブックマークや評価を頂きたい願望はありますが


今はより楽しんで貰えるように精進

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