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学園を放火しようとする闇堕ちした学年一の美少女をヤンデレヒロインに更生させるまで  作者: 野谷 海
幕間 古今東西春夏秋冬

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番外編 和島学園七不思議 File11





 七不思議の真相を知った僕は、調査の翌日というか同日、学校で飛鳥先輩にのみ、この事実を伝えた。


 先輩は話を聞きながら、大きな欠伸をする。


「ふぁあ……ご、ごめんなさい。なるほど、そうだったのね」


「やっぱり眠いですよね。あれから少しは眠れました?」


「ええ、2時間だけ……それで、なんで私にだけこっそりそのことを教えてくれたの?」


「飛鳥先輩はかなり怖がってましたから、謎が解けた方が安心するかなと思ったので。逆にあの2人にとっては、謎は謎のままがいいと思ったんです……」


「ふふ……確かにそうかもしれないわね」


「ところで、あのスマホはちゃんと持ち主に返せました?」


「……ええ。そのことなんだけど……ちょっと気になる事があって……」


 口ごもり、言い辛そうにする先輩。


「ど、どうしたんですか?」


「その子にスマホを見つけた経緯を話したんだけどね、私たちがアレを見つけた時間帯には、と言うか昨晩通して一件も、着信履歴がなかったの……アラームも、かけてないって……」


「え……じゃあ、あの音はいったい……」


「やっぱり……おかしいわよね? 確かにあの時、音が鳴っていたわよね!?」


 飛鳥先輩は取り乱しながら僕の両肩を掴んだ。


「せ、先輩……僕を、殴ってくれませんか?」


「ど、どうして?」


「今聞いた事を全て、忘れたいので……」


「じゃ、じゃあ先に私を殴って!」


「僕には先輩を殴るなんて死んでも出来ませんよ!」


「なら私だって同じよ!!」


「どう、しましょうか……」


 飛鳥先輩は、恐怖を噛み殺すように語り出す。


「……私なりにね、それについて考えてみたの。もしあの電話が花子さんの仕業だったのなら、それは私たちを驚かせようとしていたんじゃなくて、イジメの被害者を助けようとしてくれたんじゃないかって。その子の話だと、イジメられてからはよくあのトイレに篭って泣いていたみたいなの。もしかしたら、それを見かねた花子さんが……って……」


「そうかもしれないですね……でも、この事はあの2人には内密にお願いしますね? 絶対にまた駆り出されちゃいますから……」


「でも春人、私には結構楽しんでいたように見えたわよ?」


「そ、そうですか……?」


「うん……やっぱりあの2人には、敵わないなぁって思っちゃった……」


 僕はふと、体育館でのドッジボールを思い出した。


「たぶんあの2人は、逆のこと思ってるんじゃないですかね……」


「どういう意味……?」


「あ、いえ、今のは忘れてください」

 


 僕と飛鳥先輩の話が一区切りついた丁度良いタイミングで、昼休みの園芸部活動を任せていた2人が戻ってきたようで、部室の扉が半開きになる。彼女たちには飛鳥先輩と大切な話があるとだけ伝えていた。

 

「ただいま戻りましたー。春人せんぱーい、もう入ってもいいですかー?」


「うん、ありがとう。大丈夫!」


 ジロジロ、クンクンと、何かを疑うように部室中を嗅ぎまわる夏樹ちゃん。


「どうやら、ここで変な事はしてないようですね。安心しました」


「変な事って……」


「いったいお2人でなんのお話をしていたのか、とっても気になりますが……眠たいので今は寝ます。チャイム鳴ったら起こしてくださ~い……」


 夏樹ちゃんは一瞬にして座ったまま眠りにつくと、飛鳥さんもそれに続いてソファへと向かった。


「春人、私も少し横になるわね?」


「分かりました、お休みなさい2人とも。冬月さんは眠くない?」


「眠いけど、あなたに寝顔を見られるくらいなら死んだほうがマシ」


「そ、そうですか……」



 2人の寝息が聞こえ始めると、冬月さんがため息混じりに言う。

 

「結局、昨日は何も収穫がなかったわね」


「そういえばさ、冬月さんが七不思議に興味を持ったのって、ひょっとしてお母さんの影響だったりする?」


 白雪姫は開いた口が塞がらないといった表情を浮かべていた。


「なぜ……分かったの……?」


「昨日僕がその質問をしたら、合宿でお母さんの話をしてくれた時と、同じ顔してたから……かな」


「私もまだまだね……あなたの言う通りよ。小さい頃、よく母と遊園地のお化け屋敷へ行っていたの。本当はそんなに怖くなかったけれど、怖がるフリをすれば、自然と母に抱きつくことができたから。幼いながらに、私はその口実が欲しかったの。今回の件で、少しあの頃を思い出せたわ。そういう意味では、私には収穫があったのかしら」


「夏樹ちゃんに感謝しないとだね」


「そうね。それに、あなたの新たな弱点も知れたし、やっぱり私にとっては大豊作だったのかもしれないわね」


 恐らく、彼女がこの時に見せた含みのある笑顔の理由は、あの作戦を思いついたからだろう。


 ――冬月さんが部室にて死んだふりを仕掛けてきたのは、この翌日のことだった。


 

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