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学園を放火しようとする闇堕ちした学年一の美少女をヤンデレヒロインに更生させるまで  作者: 野谷 海
第3章 芽吹く恋、燃える恋

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第24話 勉強会と殺害予告




 さてと、さっきはまんまと冬月さんに騙されてしまったけれど、気を取り直して勉強を始めよう。冬月邸のお手伝いさんがわざわざ他の部屋から運んできてくれた大きめなローテーブルを囲んで、僕たちは教材を広げた。


「冬月さんっていつもテストでは何位くらいなの?」


「そうね、いつも学年10位以内には入れているわ」


「さ、流石だね……そんな冬月さんにちょっと教えて貰いたい問題があるんだけど……」


「嫌よ。どうしてタダで教えて貰えるなんて思ったのかしら? 花守君は見かけによらず随分と図々しいのね」


 先ほどのドッキリが大成功したのがよっぽど気分が良かったのか、白雪姫様はとっても上機嫌だった。勝ち誇った様子の彼女は、更に僕を挑発して楽しんでいるようだ。でもそんな僕にも、切り札がある。


「冬月さん……この前のカレー勝負、僕が勝ったよね? 今日だけでいいから、僕に勉強を教えてよ」


 彼女は言い訳を考えるように黙り込んだ。でも何も思い浮かばなかったのか、小さく舌打ちをしたかと思うと、怪訝な顔で僕が開いていた問題集を覗き込む。


「どれ……?」


「ここの問3なんだけど……」


「……へえ、花守君はこんな簡単な問題すら解けないの? 花ばかりに目を向けていないで自分の脳みそにも水をあげた方がいいんじゃない? そうね、滝行なんてどうかしら? それとも一年中晴れている国で日光浴でもしてくれば少しはマシになるかもね」


 したり顔で嫌味を述べる様相も、優美で麗しい……じゃなくて、ちょっとだけムカついた。


「あのぉ冬月さん……出来れば皮肉抜きで教えて欲しいんだけど」


「私に教えを乞う身でありながら、教え方にまでケチをつけるだなんて、贅沢も休み休み言ってもらえるかしら?」


 僕が敢えてぐうの音も出さずに耐えていると、向かいに座る夏樹ちゃんがハムスターのように頬を膨らませてこちらを見つめていた。


「なんか……お2人っていつも仲良いですよね……」


 聞き捨てならない僕と白雪姫はもちろん反論する。

「夏樹ちゃん……どうやったらそう見えたの?」

「そうよ風間さん、この人と同じレベルだと思われているなんて、それこそ心外だわ」


「だって……合宿の時も、冬月先輩が春人先輩の部屋に行ったら、春人先輩、ケロッとした顔で戻ってきましたし……あの時、いったいお2人でどんな話をしてたんですか……?」


「別に……大した話じゃないわよ」


 今まで微笑ましいと言わんばかりに傍観していた飛鳥さんが、ここで口を開いた。

「ねえ雪乃ちゃん……そのことだけど、実は私も気になっていたの……」


「飛鳥さんまで……」



 飛鳥先輩には逆らえない冬月さんは、先日のささやかなキャンプファイヤーの件を、かいつまんで2人にも話した。勿論、僕と彼女の秘密の関係については伏せながらだけど。


「そ、それってつまり……2人きりの部屋で電気を消して……イケナイ火遊びをしていたってこと……?」


「飛鳥先輩……間違ってはいませんが、その言い方とニュアンスが気になります」

 

「……やっぱり、仲良いじゃないですか……なんか心が通じ合ってるって言うか……」

 と、なぜか不機嫌な夏樹ちゃん。


「どうしてそうなるの? 私はただ……」


 冬月さんは途中で言葉を詰まらせた。まぁ、これ以上は物騒な話になってしまうから致し方ない。


「冬月先輩は、春人先輩のこと……どう思ってるんですか……?」


「は……? 風間さん、それは一体どういう意味?」


「そのまんまの意味です……もしかして、す、好きなんですか?」


「そ、そんな訳ないでしょう!? ちょっとあなた、勝手な想像で飛躍しすぎよ!?」


「じゃあ嫌いなんですか?」


 白雪姫は目線を逸らして答える。

「その極端な質問はやめてくれる?」


「ほら、やっぱり好きなんじゃないですか!」


「……この無益な押し問答はもうお終いよ。早く勉強に戻りしょう」


 むすっとしている夏樹ちゃんと不服そうな冬月さんの様子を見た飛鳥先輩が取り繕ったようにその場を執り成す。

「まぁまぁ2人とも……春人はみんなのものだから……ね? 今は勉強に集中しましょう?」


 あれ、飛鳥先輩……揉め事の鎮め方までやっぱりちょっとズレてませんか? 僕のこと、公園にある遊具か何かだと思ってます?


「まぁ……今はそうかもしれませんけど……」

 夏樹ちゃんはなにやらボソッと呟くと、もう一度問題集と睨めっこを始めた。



 こうして多少のいざこざはあったものの、外も暗くなってきた頃、キリの良いところで勉強会はお開きとなり僕たちはおいとますることに。


 帰ろうとした僕を冬月さんは「ねえ……」と、囁くように呼び止めた。


「どうしたの?」


「勘違いして欲しくないから釘を刺しておくけれど、私は花守君のこと、まだ好きじゃないから……」


「分かってるよそんなこと……」


「そう……ならいいわ。これからも生き残れるようにせいぜい頑張って…………でも、もしもあなたが私以外の人を好きになったのなら、その時は、隠さずに言って……」


「言ったら……どうなるの……?」


「せめて、その人と2人一緒に殺してあげる……」


 僕には分かる。これは冗談や脅しなんかじゃない。冬月さんなりの温情なんだろう。でもそんなことを告げられてしまったら、もしもこの先本当にそうなったとしても、口が裂けても彼女には言えないと思う僕だった。


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