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第4話:悪役哀しいかな

──Side:デッドリッグ


 今朝はローズさんが上機嫌だ。


 昨晩、ローズさんの来襲があった。


 その際に、「お願いだから、シナリオ通りにはしないで!」との強い懇願があった。


 まぁ、確かにシナリオ通りでは、面白くないだろう。


 そのローズさんは、今日は俺の隣に座っている。


 代わりに、正面には俺と同学年のヒロイン候補、黒髪黒目の美人さん・デルマ・ビカウント=マイアーとブリュネット(栗色)の髪とダークブルーの瞳の美人さん・カーラ・バロン=ワグナーとが座っている。


 因みに、バチルダさんは俺の右側側面手前に座っている。


「「お話は伺いました」」


 デルマさんとカーラさんにも、前世の記憶があるらしい。


 因みに、全員、この国に骨を埋めるつもりは満々らしい。この、雰囲気だけ中世ヨーロッパで、技術的には近代の日本に近い、チグハグで住みやすい国に。


 特に水回りが快適なのだ。キッチン然り、トイレ然り、風呂場然りである。


 しかも、平民ですら普段使い出来るレベルの価格帯でのトイレットペーパーの存在の普及も大きい。


 その辺は衛生環境的にも大きいし、何より快適さが前世の環境に近いのが便利だ。……流石に、コンビニ迄は存在していないが。


 しかし、問題は、色濃く残る『イジメ文化』だ。


 デッドリッグ自身、バルテマーからのイジメが行われる設定だったが、彼にも前世の記憶がある現在、その可能性は、低くなっている事は間違い無いだろう。


 『確実にイジメられる筈』と、『イジメは無いかも知れない』と云う現実の差は、それ程までに大きい。


 見るのとヤルのでは違うとは言え、バルテマーの検証した事は、全キャラをその為のオモチャにするほど壊したシーンは、中々ショックだったに違いない。


 実際、バルテマーが誰一人攻略する事無く終えた末路は、バルテマー自身しか知らない。


 その場合、デッドリッグの『公開処刑』は、果たして行われるのか、否か。


 デッドリッグも、その辺りは知らないのだ。


 そして結局、ローズから『一通り済んだら、もう一度!』との懇願を受けている。


 で、あるならば、一通りを済ませない、と云う選択肢が考えられるが、『3日に1回』と言い出したデッドリッグの条件は、必要条件となってしまった。


 少なくとも、ヒロイン達の希望は、その通りである。


 それでも、皆、『21日』は待たなければならないのだ。ローテーションを終えるまで。


 それが、1年後まで続く。


 そして、来年の入学生に、ヒロイン候補が一人居る。


 もしもその娘も前世の記憶持ちだとしたら、このローテーションに入る可能性は考えなければならないだろう。


 序でに言えば、順番云々に関しては、予定日の夜中に順番を控えた娘が、デッドリッグの部屋を訪れて行為に及ぶ、と云う事になっている。


 その行動を起こす事に関しては、それ相応の覚悟が要るだろう。そして、逃したらそれっきりだ。


 少なくとも、『18日後』迄は、確実にデッドリッグとの繋がりを作っておくため、全員が順番にデッドリッグの部屋に来るであろう。


 そして、デッドリッグは密かにバルテマーから、『追加コンテンツのヒロインが居たら譲らないが、他7名は任せた!』とのメッセージを受け取っている。


 しかも、証拠となるように、バルテマー専門の意匠をした封蝋が為されており、文書自体にも印が押されている。


 逆に言えば、7人全員を救済しなければ、『公開処刑』も(やぶさ)かでは無い、と云ったところか。


 ラベンダーの香りのするその学舎──火傷対策の精油の精製の為に植えられている、大量のラベンダーがその香りの原因である──にて、そんな秘め事が行われているのだ。


 誰かが気付いても不思議ではない。


 だが、『第二皇子』と云う立場が、その自由を見逃させている。


 バルテマーは、その事に対して、思う所が無い訳でもないだろうが、追加コンテンツへの期待が、彼へのストッパーとなっている。


 どうやら、今回の入学生には居ないようだ。


 そして、バルテマーの卒業前に起きなければならないと云う条件故に、来年の入学生に居る事が、ほぼ確定的となった。


 だが、忘れてはならない。


 本来は、デッドリッグはバルテマーの恋路を邪魔する『悪役』なのだと云う事を。


 そう考えれば、今のデッドリッグも十分『悪役』っぽいなと、デッドリッグ自身、そう思うのである。


 そして、男性キャラクターの人気投票で、『1位』でもあったのである。


 デッドリッグが救済しなければ、未攻略ヒロインに待っている、悲惨な末路。


 その上で、デッドリッグは思うのである。──ハゲデブオッサンにだけはなってはならないと。


 第二皇子らしく、公爵位を陞爵されて、イチ地方を繁栄させる。(つい)でに、バルテマーの手助けもしなければならない。


 何となくであるが、グルメの類については、バルテマーに因るテコ入れが済んでいるようで、毎日の食事も美味しいし、喫茶スペースで食べるスイーツも美味だ。


 技術関係についても、バルテマーが主導しているのだろう、産業革命が起こりつつある。


 否、一部の技術については、産業革命よりも早く導入されている。


 トイレットペーパーやティッシュペーパー等の一般的な紙の販売は、最高値(さいたかね)が定められているが故に、導入が容易だ。


 ただ、利益が余り上がらないので、ほぼ一社独占で商いしているものと思われるが。


 但し、一点、デッドリッグがバルテマーに確認しなければならない事がある。


 それは、7番目のヒロインにして、デッドリッグより一つ年下のヒロインを狙っているのか否かと云う点だ。


 現実問題、その娘が前世の記憶を持っているか否かと云う条件によっても変わって来る。


 デッドリッグとしては、追加コンテンツのキャラクターの溺愛モードに移る事は警戒したかった。


 出来れば、二人攻略。バルテマーにそれをお願いしたかった。


 だが、哀しいかな、デッドリッグは一応、悪役。──バルテマーサイドから見て。


 それを確認する事も、中々に難しいのであった。

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