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『ヘブンスガール・コレクション』~悪役第二皇子に転生したが、気付けば主人公格に?!~  作者: 月詠 昼光


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第23話:ルーキー

 その日、音楽室で特訓していたデッドリッグとヒロイン達の下へ、部屋の扉をノックして挑戦して来た者が居た。


「何?下らない用事だったら、叩き出しますわよ!」


「僕たちも、音楽祭に参加したいのです!」


 決して下らない用事では無かった。


「──勇者、現る……!」


 デッドリッグを以て、こう言わしめたのだ。本気なのなら、ヒロイン達が待っていた勇者だ。


「で?楽器は?持ってきているの?」


「あ、いいえ。売って頂くか、貸して頂こうかと思いまして……無理ですか?」


 ローズがハァーッと息を吐いた。


「練習用のを貸してあげるわ。


 購入するのなら、本気で音楽祭に参加するのを条件に、特別価格で売って差し上げますわ。


 でも、もう4ヵ月しか無いのだけれど、初心者だけで練習して、通用すると思っているのかしら?」


「うっ……。


 ……出来れば、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致したいのですが──流石に、ダメですかね?」


「覚悟は決まっているの?」


「「「「ハイッ!」」」」


 ローズは再び息を吐いた。


「半端な覚悟で無い事を願うわ。


 ちょっと待ってなさい」


 ローズは、予備の魔法機ギターと魔法機ベースを持ち出した。


「ドラムは、流石に予備が無いから、バチルダから借りて教えを請いなさい。


 担当は誰?あとはギターとベースとボーカルに分かれると思うのだけれども」


「自己紹介が必要でしょうか?」


 ローズは面倒臭そうにこう返した。


「呼び名と担当だけ言って貰えれば十分だわ」


「僕がボーカルのルファーです!」


 2年生らしき茶髪蒼眼の男がそう名乗ると、続いて──


「ギター担当のギーです!」


 同じく、黒髪黒眼の漢が続き──


「ベース担当のダーフェルです!」


 金髪碧眼の女の子がそう言い──


「ドラム担当のイーディです」


 最後は、落ち着きのある坊主頭に紅眼の巨漢がそう答えた。


「そう。曲は決まっているの?」


 リーダーらしきルファーが、様子を窺いつつ、こう言ってくる。


「出来れば、『吸血鬼は一円玉がお好き』を歌わせていただければと……」


「成る程。昨年、演奏した曲ね。


 今年も歌おうと思っていたんだけれど、あなた達に任せてしまって大丈夫かしら?」


 何故か知らないが、4人がドン引いた。


「お、俺達がその曲を奪うように歌うと云うのは、流石に気が引けると申しますか……」


「いいのよ。貴方たちは貴方たちなりの演奏をしてくれれば。


 順番も、4曲目にして、ワタクシ達に休憩時間を少し頂戴。


 ワタクシ達が練習しなくて済む分、多少なりとも楽になって助かるわ」


 リーダー当確のルファーが、恐る恐るこう聞いて来る。


「その……少々ご指導頂ければ、大変助かるのですが……」


「ウチの新入りと一緒に特訓と云う事になるけれど、毎日放課後、休日には朝から晩までビッシリ、練習しないと間に合わないわよ!」


「その程度の覚悟は出来ております!」


 ローズは「ふぅ~ん……」と呟く。


「イーディ君、今からバチルダがやる事を真似してみて貰える?


 バチルダ、例のをお願い」


 バチルダがスティックを置くと、「コレかしら?」と言って右手で三角を描きながら、左手で四角を描く。


「……ム!出来ない事は無いが、集中していないと──あ!言ってる(そば)から失敗した!」


「ソレを一曲5分と考えて、集中し続けられる?


 出来るのなら、指導に値するわ」


 何故か、ローズは期待感を込めた目で、イーディを見た。


 様子を見ながら、コソコソと話す者は居たけれど、イーディがそれを5分続けられるまで、邪魔は入らなかった。


 その5分をやり遂げたイーディに、ローズはパチパチと拍手を贈る。


「はい、仮にだけど、合格。


 後はバチルダに指導を仰ぎなさい。


 他の3人はコッチ」


 そう言って、ローズはギーにギターを、ダーフィルにベースを渡した。


「魔法機ギターと魔法機ベースは、レンタルなら金貨1枚、購入なら各金貨10枚ね!」


 ギーとダーフィルは打ち合わせて、こう答えを出した。


「購入でお願い致します!」


「宜しい。今日はお金をそんなに持ってきている筈も無いから、試験レンタルで、代金は後日に現物と引き換えで宜しく。


 さあ、時間が無いから、早速特訓に取り組むわよ!」


「ローズさん、チューニングから教えては如何かしら?」


 ベディーナがそう提案を切り出す。


 ローズは「えーと……」と考え込んでから、こう結論を出した。


「そうね。じゃないと、来年、チューニングを教えられる人材が居なくなりますものね」


 凄く感覚的な事なのだが、ローズはギーに、ベディーナはダーフィルに数学的観点から見た、『正しいチューニングの仕方』を教え込んだ。


 コレは、毎日少しずつ行う。その内慣れるだろうと云う話だ。


 そして、やはりメジャーコードを中心に練習は進められ、余りの難しさに、イーディに至っては──


「両手で三角と四角を描きながら、ステップも踏む練習が必要だ!」


 等と、各自、自分なりの課題を見付けて、毎日特訓に取り組むのであった。


 尚、デッドリッグが。


「アレ?俺、4曲目を歌う筈じゃ無かったっけ?」


 等と疑問を口に挟むが、ローズが少し考えた後に。


「6曲目に歌って頂くのが、宜しいかと」


 そう結論を簡単に出すが。


「いやいや、7曲目はアンコールの時用に練習するって言ったじゃん!


 俺が失敗()いて、アンコールが出なかったら俺の責任になるから、責任重大じゃねぇの?!」


 と、直ぐに気付き、ローズは恐らく前世の影響だろう、「チッ!」と舌打ちしてこう言った。


「(気付かなければ良かったのに)。


 なら、ルファーさん達に3曲目をお願いして、殿下には5曲目をお願い致しますわ。


 そして、殿下はそこまでの覚悟が決まっておいででしたら、曲目は『デュ・ラ・ハーン』で宜しいかしら?」


「……何気に縁起の悪そうな曲名を──


 否、ソレで構わない。真剣勝負に出ろ!って云う事だろ?」


「ええ。殿下の美声に、卒倒(そっとう)する者が現れないか、若干不安ではありますが」


「いやいや、美声でも音痴だろう?


 流石に、卒倒する者なんて出ないよ。ハッハッハ……」


「あら。大分、音痴も治って来た事に、お気づきになられていないので?


 きっと、卒倒する者が現れますわ。ホホホホホ……」


「……縁起でもねェ……」


 だが、本当に演奏から1年後、再ライヴに卒倒者が現れかねない事は、ローズだけが知っていれば良いだろうに、全員が気付いてしまった。


 ボーカル・デッドリッグ。そんな配置換えを、ローズは今の段階から仕込んで置きたかったのだ。


 その結末が、どう動くのかは、未だ誰も予想していない。──否、『全知全能神』と『ラプラスの魔』を除いて。


 それ程に、その二柱は特別なのだった。

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