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19. 飛龍に乗って


「あのぉ、飛龍に乗るんだったらぁ、一緒に連れてってもらえませんかぁ?」


 マインの作戦は、ごくごく単純なものだった。


 厩舎の前で飛龍を使おうとしている冒険者一行に、媚び媚びの猫なで声で同行を頼むというものだ。

 しかし、顔出しをしたら騒がれるので、深くフードを被っているし、やはりローブでは着膨れして見えるので、大抵の冒険者は無視だ。


 一緒にいる俺まで醒めた目で見られることにいい加減しんどくなってきて、マインを尻尾を掴んで引っ張って行こうとした時、二人の冒険者が立ち止まった。マインがすかさず相乗りを提案すると、顔を見合わせた。


「あんたら初心者か? 飛龍は二人乗りだから、二人で一緒にってのは無理だと思うぜ」


「えぇ? そーなのー? 困っちゃうなぁ……」


 マインは相変わらず猫なで声で、ゆっくりと自分のローブの前を開き始める。おいおい、顔出しするつもりじゃないだろうな。


 流石にそこは腐っても有名人だったようで、マインはフードを被ったまま、ローブの前だけを開いた。


「ブッ!!!!」


 なんとその下は、俺と一緒に買いに行った例のビキニアーマーだった。あの面積の癖してクソ高くて俺のなけなしの貯蓄がごっそり持ってかれたんだが、まさか着てくるとは思わなかった。


「なんとか、お願いできないですかぁ……」


 マインが身体を揺らすと、たゆんとビキニアーマー。効果は絶大だった。


「ビキニアーマー、本当に存在したんだ……それじゃあ、『くっ、殺せ……!』ていう女騎士も存在するんだね……」


 二人組の冒険者は、きっと初めてドラゴンを見たとき以来の感動に目を潤ませ、「この二人に飛龍を準備してくれ! 代金は全て俺たち持ちで頼む!!」と叫ぶ。


 しかし、ビキニアーマーがあるからくっころ姫騎士がいるって論理は無茶苦茶だ……と言いたいところだが、俺の冒険者、くっころ女騎士もいた。なんだかんだ、夢って叶うもんなんだな。泣けるわぁ。

 ビキニアーマーに拝むだけ拝んだ冒険者たちは、俺たちに一匹の飛龍を見繕ってくれた。そして、自分たちも飛龍の背に乗ると、こう問うてくる。


「あんたら、クエストはなんだ? もしよかったら複合してもいいんじゃないか? 感動させてもらったが、その格好じゃ魔物相手には危険すぎるぜ?」


 なんだ、とてもいい人たちだ……いや、違うな、ビキニアーマーの金属のアーマーに対しての革の紐の耐久性の矛盾を信じている、純粋な目をしている。


 マインは、ほれ見たことか、と俺にドヤ顔。ま、確かに、この身なりの冒険者と協力関係になれば、成功確率は上がるだろう。


「えぇ? いいんですかぁ。コカリトスを狩りにいくつもりなんですけどぉ」


 すると、二人の伸びきった鼻の下が、しゅんと縮んだ。


「……コカリトスか。俺たちは遠慮しとくよ。それじゃあ、御武運を」


 二人は、すぐさま飛龍の腹を蹴り、天高く飛び立っていった。俺は彼らが点になるのを見送ってから、「な? コカリトスってのは、あれくらい装備が揃った冒険者でも、逃げ出すレベルの魔物なんだよ」と、マインに言う。

 しかし、マインは完全無視で、飛龍の背中に乗ると、「ヴッ」と悲鳴をあげた飛龍に、「ちょっと!? そんなリアクションされたらマインが重いみたいじゃん!」


 ……まぁ、タダで飛龍に乗れるのなら、こっちとしてもありがたい。奥地だったらコカリトス以外にもそれなりに強い魔物もいるだろうし、”冒険者と村娘”効果も見込めるしな。


 俺はマインの後ろに乗ると、思い当たってこう聞いた。


「おい、お前、飛龍の乗り方わかってんのか?」


「へ、わかんないわよ?」


「……お前、本当に馬鹿だな!」


 俺がマインの身体に手を回し、飛龍の手綱を握ろうとすると、「ちょ、ちょっと、何抱きついてんのよ!」と、マインがジタバ暴れる。


「おい!! 暴れるな!!」


 俺の言葉虚しく、マインのヒールが飛龍の腹に突き刺さる。飛龍が「グェッ!?」と悲鳴をあげ、地面と垂直に飛び上がった。


「ぐぇ!?」


 結果、マインの体重が全部俺にかかり、飛龍と同じような声をあげてしまう。なんとか飛龍の鞍にしがみついてマインを支え、「マイン!! 一旦手綱を引け!!」と叫ぶが、マインは「ひゃっほー!!! 気持ちいいーーー!!!」と叫ぶ。もしやこいつ、冒険者ハイとかじゃなくて、元からイカれてるんじゃねぇだろうな。


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