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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(89)ソルベルド、現る③

「ペッ・・・」


 ソルベルドの予想通りに崩れた瓦礫の中から赤い髪と血走った眼をした男が、額から少しだけ血を流しながら出てきた。


クソ野郎(ソルベルド)!不意打ちとは汚ねー真似をしてくれるじゃねーかよ?チマチマコソコソしやがるテメーらしいぜ。瀬角楽しく嬲っている最中だったのによぉ?丁度良いぜ。そこの偽善者(リリエル)と共に始末してやる!」


「はっ、言うてくれるやんけ。ホナ、その実力が本物かワイが確かめたる。この()のソルベルドが相手したるわ。感謝するんやな!」


 ソルベルドは何故かチラチラとミューの方を見ており、思わず二つ名も勢いで勝手に自分が考えた恥ずかしい名を宣言してしまうが、当人は真剣なので無駄に堂々としている。


「え?」


 この中で唯一ソルベルドの訳の分からない二つ名に反応できたのは比較的落ち着いている聖母リリエルだけであり、呼んでもいないのに勝手にこの場に来て想像もできない行動を始めているソルベルドを見て、ついに頭がイカレたと思っている。


 回復を妨げる何らかの耐性を持っているのであれば、いくら自分の回復術でも治らないかもしれないと少し斜め上の事を考えつつ、荒れ狂う戦闘をしっかりと視認する。


「やはり、毒物か劇物でも口にしたのでしょうか?」


 どう考えてもハルナやミュー、国王や近衛騎士に余波が行かないような立ち回りで攻撃をしている上、戦闘の場所を建屋内ではなく外に移動するべく動いている節があるので、ソルベルドの思惑は不明ながらも今はこの流れに乗る事にしたリリエル。


 仮に二人が手を組んで攻撃されてしまうと、陰のソルベルド単体であれば対処できる自信はあるのだが、暴風エルロンとは相性が悪く防戦一方だった事もあって、短い時間での敗北が確定するからだ。


 その考えに思い至った際、リリエルを油断させる為に敢えて二人が敵同士として振舞っているのかとも考えたのだが、両者共に決して手を抜いているようには見えなかった事からその線はないだろうと、正直、内心安堵している。


「これだけの動きであれば、私は余計な事をしない方が良さそうですね」


 暴風吹き荒れている戦場なので、遠距離での過剰回復術による攻撃は狙いが定まらない為、逆にソルベルドの行動を阻害してしまう可能性が高い。


 既に戦場はソルベルドの希望通りに園庭に移されており、少し前までは非常に美しかった花々や噴水などは瞬く間に破壊され、荒れ狂う暴風と共に見るも無残な状況になっている。


「余波でここがどうなるのか分かりませんので、皆さんは一旦避難する事をお勧めします」


 惨状を冷静に見下ろしているリリエルは、中途半端に破壊されてしまっているこの部屋もいつ崩れてもおかしくないので避難を促した後、たった二人で軍隊の大混戦と言えるほどの被害を僅かな時間で出している現場に飛び降りる。


 加勢するつもりではなく、より近くで待機する事でソルベルドが負傷した場合に即座に近接して、直接的に回復術を行おうとしていた。


 暴風エルロンを捌くためには、少々情けない気持ちになっているが目の前の陰のソルベルドに頼るほかないのが現状だからだ。


「オラオラ!どうしたよ?そんなもんか?クソ野郎(ソルベルド)


 暴風のソルベルドはリリエルの存在も意識しつつ戦闘しているので、遠距離攻撃を受けないように敢えて暴風を起こしながらソルベルドに攻撃を仕掛けており、ソルベルドも自らに向けられた暴風を漆黒の槍を使って捌きつつ反撃している。


 暴風エルロンの言葉からは彼が優位に立っているように聞こえてしまうのだが、リリエルの目には互角ではなく、リリエルの存在にも気を配っているせいかエルロンの方が不利になっている様に見える。


「はっ、随分と余裕がないやんけ?勢いだけは立派やが、雑魚の域は出てへんな。御大層な二つ名に相応しくない実力である事、この()のソルベルドが教えたるわ!」


「ふざけんな!オラァ!」


 一部訳の分からない事を言っているソルベルドだが、本気で戦っているのでそこを突っ込む余裕はないエルロン。


 エルロンが持っている見た目細い棒は、ソルベルドが持っている漆黒の槍同様普通の棒ではない事は誰の目から見ても明らかであり、事実一般的な人物がこの細い棒を持とうとしても数人がかりで漸く持ち上げられるような代物だ。


 とてつもない質量を持つ棒を軽々と振り回し、勢いに乗った重みのある棒による攻撃なのだが、同じく身体が劇的に強化される能力を持っている<槍術>を持つソルベルドなので槍で捌き、相殺し、と上手く対応出来ている。


 普通の槍であれば一撃で粉砕されるのだが、特殊な槍であるおかげで破壊される事も無く、その技術もあって明らかに優位に戦闘出来ているソルベルド。


 逆に致命傷は負っていないが、細かい傷が増え続けているエルロン。


「この野郎・・・見かけ通りにふざけた野郎だ!」


 一旦距離を取って、まるでソルベルドの刺突と同じような姿勢を取っているエルロンと、その姿勢を見て挑発されていると思ったソルベルドは、同じく刺突の姿勢に移行する。


「!?・・・何を考えているのか知らへんが、ワイの事を舐めすぎや!この槍に()の重みを乗せた刺突、受けられるモンなら受けてみぃや!」


 ソルベルドも不思議な挑発を返した直後、互いに全力で槍と棒を突き出して相手への攻撃を行うのだが、武器もほぼ同等の強度を有し身体能力もほぼ同等なので、互いに武器から手を離さないながらも弾かれる。


 その後に弾かれた勢いで互いに回転して再度攻撃を仕掛けるのだが、同じように武器がぶつかった直度の動きに大きな違いが発生した。


 何と<棒術>Sと公開されている暴風エルロンが、武器を手放したのだ。


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