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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(91)ソルベルド②

「当初の予定通り、あの王女を攫うんが最善やな」


 人気の無い建屋の一室で食事をしながら、今までの情報を整理しているソルベルド。


 国王を拉致する事も一瞬考えたのだが、ハルナが王位を継がず共王女として何かしらの対処をしてしまえばある程度収束してしまうし、パーミット筆頭公爵を手にかけても一時的な混乱しか起こせないと考えていた。


 それならば当初の想定通りに次期国王となるべき存在を拉致すれば、長期にわたって国を混乱に陥れる事が出来、その噂を聞くかギルドからの依頼によってリューリュやらリリエルやらが戻ってくると想定している。


「仮に二人が共に戻って来はっても、リリエルの性格であれば幼い人質は非常に有用やしな」


 人質がある故に情に厚いリリエル、ソルベルドに言わせれば隙の多いリリエルと対峙しても勝利の線が見えているし、リューリュもハルナと接して情が湧いている可能性が高いので、同じ状況になると確信しているソルベルド。


 その後暫くは罠の可能性を排除するべく情報収集し、時には内外共に厳戒態勢になっている王宮にすら難なく侵入している。


 流石に王宮内部では行動範囲は限られており、過去ミュラーラから仕入れていた情報を基に警備の薄い範囲、つまり事が起きても大して問題にならない場所を中心に活動し、やがてその時を迎える。


「朗報やな。ワイの弛まぬ努力が実を結ぶ時がやって来たんや。天はワイが頂点を取るべきやと判断したんやろな」


 王宮内部の警備の薄い・・・とは言ってもそれでも非常に厳しい警備体制がひかれているのだが、今は倉庫とも言えないガラクタ入れになっている場所であり、そこにハルナが時折訪れる事を知った。


 何故そんな場所に?と思っていたソルベルドは更に情報を得た所、どうやらこの場所で既に亡くなっているパーミット筆頭公爵家の付き人と過去に良く遊んでおり、故人を偲ぶ為に訪問していると知った。


「甘々やな。護衛の騎士は雰囲気からワイの敵ではあらへんし、楽勝やろ!」


 ハルナと付かず離れず護衛をしているのは、パーミット筆頭公爵家唯一跡取りでありながらも自ら望んで危険に陥る可能性がある任務に就いているミュー。


 鎧を着こんでいるわけではなく軽装であり、帯剣もしていない事から体術系統の能力を持っているのだろうと判断しているソルベルド。


「見かけは女やが、顔を見せんのはなんでや?あの覆面の下に何か隠してはるのか・・・何も情報が無いさかい、そこだけは注意せんとあかんな」


 体つきからミューが女性と正しく判断しているのだが、何故か覆面をしているのに対して警戒している。


 本来ミューは素顔のまま護衛を行うつもりであり、ハルナから任務中は覆面をつけるように指示された際に覆面によって第三者にとって替わられても気が付く事が出来ずに危険度が増すとハルナに進言していた。


 確かにそのリスクはあるのだが、メリットとしてはミューが誰なのか第三者には明らかにならず、過去ミュラーラの様に権力に取りつかれた者のターゲットにならない様に配慮した結果と伝えていたのだが、実は他の目的があった。


 連日の様に平然と王宮に忍び込んで、ガラクタが散乱している倉庫でターゲットが来るのを待ち続けていたのだが、やがてその日はやってくる。


「ではハルナ王女。私はいつもの通り扉の前でお待ちしております」


 護衛のミューを引き連れて、思い出に浸り二人に感謝を述べる為に倉庫に入って来たハルナ。


 ミューはハルナの邪魔をしない様に扉まで下がりつつも、自分も妹と弟に対して心の中で褒め称えていた。


「ホイ、そこまでや!」


 すると、ハルナには聞き覚えのある恐怖の対象の声が聞こえ、ミューにとっては誰だか分からないながらも明確な敵が天井から音も無く飛び降りてくる。


 潜んでいた場所的にハルナの近くには着地出来なかったのだが、護衛であるミューの実力を推測した結果作戦の遂行の妨げにはならないと判断していた。


「貴様!」


 即座に迎撃姿勢になるとともに倉庫の外にいる騎士達に異常を伝えようと大声を出そうとするのだが、それよりもはるかに早くソルベルドは恐怖で足がすくんでしまったハルナの近くに到達してしまう。


「声を出してもええけど、そん時は大切な王女がどうなるのか・・・試すのは止めへんよ?」


 明確な脅しとハルナの様子、何よりこの厳戒態勢の中平然と王宮に忍び込める実力を目の当たりにして、目の前の男が陰のソルベルドであると悟るミュー。


「Sランカーも落ちたものだ。人質を取らないとこの私と真面に向き合えないとはな。それで優位に立ったつもり・・・なるほど。その地位に昇るまでも卑怯な手を駆使し続けたのだろうな」


 <闘術>B、一般的には相当な強者であるミューは、目の前の男が陰のソルベルドと理解しつつも力の一切を感じ取る事が出来ないながら、ギルドに認定された別格の存在である事だけは疑いようがないので、油断だけはしていない。


 状況は最悪であり敵の手の中に護衛対象がいるので、打破すべく一対一の戦闘に持ち込もうとソルベルドを挑発している。


 勝利が出来ないながらも戦闘によって周囲に侵入者の存在を知らせる事が出来るし、その隙にハルナが逃げられると踏んでいた。


 ソルベルドの実力を目の当たりにしていれば非常に甘い考えと言わざるを得ないのだが、ミューとしてはこれ以上できる事は無く、挑発しながら戦闘態勢を維持している一方、ソルベルドは躾の一環でこの無駄な挑発に乗ってやっても良いと考える。


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