表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
9/213

(9)ゴミの活用と

今日は夕方からの投稿です

 ある程度意識を取り戻してはいるが、這う事しかできないロイハルエスだけがこの場で生存している。


「もう一度伝えるぞ?お前はこの場で放置。どうなるかは・・・今の所オーク共は満腹らしいからこの場には来ないだろうが別の群れが来る可能性も捨てきれないし、もう少しで完全にこの森は闇に包まれる。どうなるかわかるよな?夜行性の獣や魔獣に嬲られ、食われて死ぬんだ。お前は明日の朝日を拝む事は無い!」


「お、おい!ふざけんなよウスノロ!冒険者が危機に瀕している時は相互補助の原則があるだろうが!そんな事をしてタダで済むと思うのか?さっさと回復薬をよこせ!早くしろ!」


 ここまでしっかりと現実を突きつけて尚今までの経験から絶対に目の前のスロノが言う事を聞くだろうと思っているロイハルエスなのだが、スロノは一向に動こうとしない。


「ところで、あのトレンとか言うクソ野郎。この状況でお前と一緒に行動していると言う事は元からお前と繋がりがあったようだな。俺とリノを引き裂く事が目的だったのか?」


「あぁ!そうだ。だからどうした?お前は俺が捨てた女をかすめ取りやがった。立場をわからせてやる必要があるだろう?だが、回復薬をよこせば許してやるから早くよこせ!」


 落ち着いて聞けば何を言っているのか意味不明ではあるが、ロイハルエスは回復薬を飲んで回復した後に目の前のスロノとボコボコにしてこの場に打ち捨ててギルドに戻り、スロノの邪魔があったせいでパーティーは壊滅したと告げるつもりでいた。


 有り得ないが、この状況で一晩この場でスロノが生き延びたとしても先制的にギルドに報告しておけば最近のスロノの評判もあって更に扱いが悪くなる事が確実だと思っての結論だ。


 スロノは殆ど動けないロイハルエスを無視する形で、周囲の亡骸を必要に応じて一瞬収納して即座に輩出している。


 余りの速度なのでその場にあった物体が一瞬ブレた様に見えるだけなので確信はないのだが、自らの命令を無視して遺品漁りでもしているのかと怒りが湧くロイハルエスは恫喝したい気持ちにかられるが、最早大声を出せるほどの体力は残っていない。


「こいつは・・・<回復>Eか。こっちは見かけによらず<剣術>D。帯剣していたようには見えないが、自分が戦う訳はないと思っていたのか?」


 スロノの独り言は聞こえるのだが、何を言っているのかは良く分からない。


 スロノとしてはこのまま朽ちるのであればせめて能力だけでも今迄の慰謝料代わりに貰っておこうと思い、装備等活用できる物を持っていそうな人物に対してだけは亡骸を一瞬収納して分別した上で排出しており、それ以外は能力だけを収納している。


「最後はあのゴミ(ロイハルエス)だけど、<操作>E。態々くたばるのを待って取りに来るほどの能力ではないな」


「お、お前。何を言っている!そんな事より早く回復薬をよこせと言っているだろうが!」


 弱弱しいながらも口調は強いままだが、一晩生きながらえるとは思えない程の惨状になっている。


「そうだな。このままだと獣達から発見される前に意識が飛ぶ可能性があるから、そこだけは対処してやるか」


 <回復>の能力を使って助けるつもりも無ければ回復薬を渡すつもりも無く、突然<魔術>の能力を使って未だに出血している傷口を強引に焼いた。


「ぎゃーーー!!」


 突然の激しい痛みに襲われて、今までにない程の叫び声をあげるロイハルエス。


「おいおい、うるせーな。お前の無駄にでかい声のせいで近辺の魔獣が反応したぞ?」


 何故視認できない魔獣の様子がわかるのか、そもそも<収納>Eのはずであるスロノが<魔術>を行使できるのか、高価な魔道具を駆使して術を行使する事も出来なくはないが、その場合でも購入できる資金は持っているはずがないと思い混乱しているロイハルエス。


「は~。もう一度だけ伝えてやる。お前のバカでかい声のせいで周囲の魔獣が明確に反応した。つまり、間もなくこの場に魔獣共が集まると言う訳だ。良かったな?精々今迄の悪行を反省しながら消えろ!じゃあな」


 反論する時間や質問する時間すら与えずに一気にこの場から消え去るスロノと、激しい痛みに襲われながらも、常識的に考えてもスロノが言っている通りにこの森で悲鳴を上げてしまった以上は何らかの獣か魔獣に存在を察知されてしまった事だけは理解できるので、震えながらも必死に這って移動して隠れる場所を探すロイハルエス。


「畜生。なんでこの俺様がこんな・・・」


 その後この森でもギルドでも、そして町の中でも、リノを除くロイハルエス一行を見た者は一切いない。


 スロノが把握していた通りに夜行性の獣がロイハルエスの元に向かっており、いくら必死で隠れられたとしても獣は匂いで追跡する事が容易な為、彼の最後は凄惨なものだった。


 丁度大怪我をして止血されたのが足だった事もあり、そこからこんがりと焼けた肉の匂いがしているのだから最も意識が飛び辛い場所から徐々に食われると言う恐怖の中で生涯を終えていた。


 その頃のスロノはロイハルエスのバカでかい声によって意識が戻ってしまった可能性のある獣人の少女の元に急ぎ戻っていたのだが、心配は杞憂だったようで未だに兄と姉に覆いかぶさっている状態ではあったのだが、何時までもこのままにしていくわけにはいかない。


 ロイハルエスにも伝えたのだがそろそろ夜行性の獣や魔獣が闊歩し始める時間であり、夜目が効き十分な戦闘能力があるスロノは良いとしても、幼い少女をこの状況に置き続ける事は出来ないからだ。


「助けられなくてすまない。急いで弔ってあげよう」


 流石に危険な状況が待ち受けている事位は分かるらしく、悔しそうな、それでいて悲しそうな表情をしながらも最後に優しくそれぞれの頬を撫でて立ち上がる少女。


 一瞬とてつもない高貴な存在に見えてしまったスロノは、その仕草に見惚れてしまっていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ