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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(89)護衛

 Aランカー複数人だろうがスロノが持つSランカーと同等の能力であろうが、ソルベルドと比較するとどう考えても力の差は歴然である為に、同じように熟練のSランカーに助力を求めつつギルドと言う巨大組織を使って居場所を特定しようと提案するリューリュ。


「それしか方法がない・・・のだろうな。余の方からギルドに依頼を出しておこう。直近で依頼を達成して報酬を支払ったばかりだからな。一応顔は繋がっているだろう」


 騒動の現場になってしまった王国バルドの国王であるバルド自身が直接ギルドに依頼を出せば、重要度が跳ね上がる依頼になるし、当人が口にしていた通りにギルドに多大な益を与えた実績がある事から無下にはされない自信があった。


 もちろん依頼時には魔道リューリュと聖母リリエルも含めた面々からの依頼とつけ加える事で、よりギルドが力を入れざるを得なくなる状況に持っていける。


「こんな事なら、会った事はないけど流星ビョーラにも声をかけておけばよかったわ。全てが想像できない程短期間で上手く行ったので、油断していたわね」


 今回の事象が一気に改善に向かったきっかけは、国王がミュラーラに告げずにギルドに対して依頼を出しており、その依頼を流星ビョーラが受けた事による。


 流星ビョーラは騒動が解決してギルドから報酬を得た所までは情報が流れてきたのだが、その後所在は全く掴めておらず、高い確率でこの国から出国していると考えられていた。


 次にギルドに依頼を出したとして再び依頼を受けてくれるのか、そもそも依頼を受けられる状況にあるのかも分からないので、逃した魚は非常に大きすぎたと悔やんでいる魔道リューリュ。


「きっと大丈夫ですよ。但し、報酬は十二分に準備しておきましょう」


 噂レベルの範疇を超えないのだが流星ビョーラがお金大好きな人物だと認識している聖母リリエルなので、今回の依頼は国家の騒動を収めるよりも活動エリアは狭いながらも敵対する存在の力は跳ね上がっているのは明白であり、そこを踏まえると、より高額な報酬が必要だと主張している。


「じゃあ、これ以上の案は出そうにないから、暫くはこの国に全員が留まってなるべく離れないようにする他ないわね」


 リューリュがこの話を終わらせようとしたのだが、ハルナがいつも以上に黙っているのに気が付いて話しかける。


「ハルナちゃん?何か心配事・・・って、脅すような事を言っておいてなんだけど、今のところは大丈夫よ?私達がいる以上はあの陰湿野郎は手を出せないから」


「はい、ありがとうございます。でも、パーミット様の事を考えると・・・」


 自分の為にパーミット侯爵改め筆頭公爵の家族二人が犠牲になったのを未だに悔みつつ、筆頭公爵自身の安全についても心配になっているハルナ。


「ハルナ・・・失った命は戻ってこない。今回の一件で、我ら王族はパーミット筆頭公爵家に多大な恩が出来た事は間違いない。臣下とは言え息子や娘を失った傷みをあの程度の報償で済ませて良い訳はないからな。時間をかけて償っていくほかないだろう」


 直接的にパーミット筆頭公爵に対して王族が何かしたわけではないのだが、結果的に裏切り者とも言える臣下のミュラーラを制御できていなかった事は事実であり、どう考えても責任があると認識している国王バルド。


「そっか。あの御仁にも守りが必要よね?」


 丁度話題にパーミット筆頭公爵が出てきたので、確実に当事者である事から陰のソルベルドの魔の手から守る為に何かしらの対策が必要だと訴えるリューリュ。


「確かにリューリュの言う通りだ。しかし、あの怪物(ソルベルド)に対抗できる戦力を余は持ち合わせておらん」


 隠密系統の強者を従えてはいるがソルベルドに勝てるとは思えず、更に近衛騎士を全て送り出してもせいぜい時間稼ぎが良い所だろうと感じており、それは事実ではある。


「数で押せない事も無いが、疲労を感じた瞬間に離脱される未来しか見えないのでな・・・厄介な奴が冒険者の頂点にいるものだ」


 この話を黙って聞いているスロノは、護衛に当たる騎士の一人に能力を徐々に与えるのも有りかと一人考えているのだが、騎士が本来持っている能力を底上げする為の能力のストックがあるのかも判断できない状況なので、直に動く事はない。


 話題にも出ていたが永遠にこの国に留まるつもりも無いので、陰のソルベルドの対応が出来ないまま出国して単独で行動した際、例え同じレベル帯の<魔術>Sを駆使しても絶対に勝てないと確信しているので、練度を上げる必要があるとも思っている。


「陛下。パーミット筆頭公爵がお見えです!」


 話が終了しないままいた所、丁度話題に出ていた筆頭公爵の来訪を侍従が告げる。


「通せ」


 国王の許可の元入室してきたのは、戦場での成果を報告してきた時とは打って変わって正装している筆頭公爵であり、黒と茶色の混ざった短い髪もその強さを象徴しているかのように見える。


 鋭い銀目は全てを見通すかのような視線だが、敵意などあろうはずもないので雰囲気は穏やかだ。


「陛下、皆様。我がパーミットの名に懸けて、ハルナ王女をお守りできたことを誇りに思っております。しかし脅威は未だ去っていない為、新たにハルナ王女の護衛足り得る人物を連れてまいりました」


 一歩引いたパーミットの後ろには、同じように黒と茶の髪で鋭い銀目を持つ女性がいた。


「こちらは我が娘のミュー。必ずや王家の、ハルナ王女の助けとなるでしょう」


 実はパーミットに残された家族はこの場に連れて来られた長女のミューだけなのだが、ミューもハルナのために散った妹や弟と同様に国家に対する忠誠心が高く、二人が散ったと聞いた時には非常に悲しんだのだが、ハルナを守れたと聞き誉を感じていた。


「初めまして。私はミュー。ミュー・パーミットです。これからは、あの二人に代わって私がハルナ王女をお守り致します」


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