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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
87/233

(87)侯爵家と公爵家③

 謁見の場にいる【黄金】一行やスロノは今初めてパーミット侯爵を目にしているのだが、その壮絶な決意、特にスロノは実際にハルナを逃がす為に命を懸けて行動していた二人の存在を知っているので、こちらも自然に頭を下げている。


 この場にいて頭を下げていないのは元凶であるミュラーラと、国王を守護すべく視界を狭める訳には行かず、本心では同じように哀悼の意を表したいのだが動けない近衛騎士、そしてその礼を受けているパーミット侯爵だけ。


「ありがとうございます。これであの二人も彼方の世界で自分の行動を誇らしく思える事でしょう。私も向こうに行った際には、勇気ある行動、揺るぎない忠心に対して心から褒めてあげようと思います」


「・・・くそっ!」


 一人場違いなのは諸悪の根源とも言えるミュラーラだけであり、最後のあがきとばかりに、一気に最も近くにいるパーミット侯爵に襲い掛かる。


 謁見時には国王の安全を確保する為に近衛騎士以外は国王自身が特別に許可をしない限り武器の類いは全て没収されており、長期間戦場にいて疲労している上に帰還直後に一時的ではあるが幽閉状態にあって体力が奪われているだろうパーミット侯爵であれば、容易に人質にできるだろうと考えている。


 その後はそのまま逃亡し、追跡を振り切った段階で始末すれば良いと安易に考えているのだが・・・そう上手く行くわけがない。


 この場にいるのが近衛騎士だけであれば上手く事が運んだ可能性は非常に高いながらも、スロノは特段能力を付与していない状態である為に除外されているが、Sランカーが二人も存在していることを忘れてはならない。


「何が忠臣だ!笑わせるな、パーミット!!!」


 本音を曝け出しながら手の届く位置にいるパーミット侯爵に襲い掛かったミュラーラなのだが、一歩踏み出した右足に突然力が入らなくなり倒れてしまう。


「な、何が起きた!!」


 もう破れかぶれになっているのか冷静に状況を把握する力も失われているのだが、冷静であったとしても何が原因で倒れたのか理解する事は出来なかっただろう。


 理解できないのはこの場にいる近衛騎士を始めとした面々も含まれるが、例外は実際に攻撃をした聖母リリエルと同格の魔道リューリュの二人だけ。


「本当に見苦しいですね。どす黒い、汚れしかない心に支配されてしまった存在が、汚れ無き心を持つ者を手にかけその命を奪う。何故この世界には悪が蔓延ってしまうのでしょうか?残念でなりません」


 子供を失った事実を受け止めて尚、必死で平静を装っているパーミット侯爵の心中を考えたのか、綺麗な金目にうっすらと涙を浮かべつつ、内容は厳しいながらもおっとりと、それでいて芯の通った声を発している聖母リリエル。


 言われている内容はこれ以上ない程にミュラーラ―を下げているので、公爵と言う高い立場である事から条件反射で反論してしまう。


「お前が何かしたのか?公爵である私に向かって、冒険者風情が何をした!!」


 ここにきてもミュラーラが一切反省の気配を見せない事から、より悲しそうな表情になってしまった聖母リリエルを見て、魔道リューリュが割り込む。


「あはははは、バッカじゃない?このおっさん。庇う価値も無い程の悪党は何処にでもいるのね。善悪に種族なんて関係ないって、改めて勉強になったわ」


 【黄金】やスロノも何が起きたのか把握できていないのだが、この流れで間違いなく聖母リリエルが何かしたのだと確信し、確かにドロデスが束になっても敵わないと言っていたのが正しいと誰しもが認識している。


 事実リリエルは、ミュラーラが攻撃のそぶりを見せた瞬間に強烈な回復を遠距離から右足の一部に実施しており、通常ではできない過剰な回復によって一気に足の機能が損なわれて倒れていた。


 多少難易度は高くなるのだが、例えば攻撃の対象が重要器官、心臓や脳であれば音も無く相手を始末する事も出来てしまう恐ろしい能力だ。


「た、確かに、ドロデスさんが回復でも相当な力を持っている存在と言っていたのも理解できますね」


 思わずスロノが、雰囲気からは全く想像できない聖母リリエルの恐ろしさをドロデスと小声で語り合っている。


 一方のミュラーラは、ここで行動を止めてしまっては逃亡すらできないと思い必死でパーミット侯爵の近くに行こうとするのだが、何故か両手両足共に自由に動かせなくなっている。


「これが私から与える貴方への罰です。他の方からの罰も甘んじて受け入れると良いでしょう。パーミット侯爵。改めて貴方の御家族に対し深い哀悼の意を表します」


 初撃とは異なってミュラーラから視線を外していない状態だったのだが、リューリュを除く全員、リリエルが再び何をしたのか理解できないまま話が進んでいる。


 パーミット侯爵はゴミでも見るかの表情で足元のミュラーラ―を一瞥すると、視線を外してリリエルに向けて一礼する。


「では、余からの罰を話そうか。当然貴様(ミュラーラ)は死罪。そして家は潰す。家族に関しては本件の関与について厳しく調査の上、応じた対応を取る。その後ミュラーラの持っていた全てをパーミット侯爵の管理下に加え、パーミット侯爵は筆頭公爵の地位を与える。この程度で罪滅ぼしになるのかはわからんが、せめてもの償いとして受け取ってくれ」


 ハルナの依頼、国家の騒動は突然の収束を見せたので安堵している【黄金】一行とスロノ。


 その後は暫くこの国に留まり、種族を超えた友情の懸け橋となるように行動しながら生活をしていた。


「でも、流星ビョーラが来ていたなんて驚きよね?リリちゃん(リリエル)は知ってたの?」


 肩の力が抜けたのか、あの騒動も過去の話しとして軽く口にできるようになっているのか、魔道リューリュが同格のSランカー流星ビョーラがこの国に入国して活動していた事を不思議がっている。


バレーボール、オリンピック出場決定おめでとー

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