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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
84/243

(84)綻びが出始める③

バレーボール、勝ってほしーいいいいいい

 執務室で騎士の帰りを待っているミュラーラ公爵と、何時でも出撃できるように集中して体を解しつつ自らの状態を慎重に確認しているSランカー、陰のソルベルド。


 一応ソルベルドは気配を消してはいないので二人の関係性を疑われないように未だに覆面をしているのだが、互いに一言もしゃべらずにいる執務室に、ギルドに向かっていた騎士が戻ってくる。


「お待たせいたしました!」


 少々興奮気味でありつつも表情は明るいので、目的の情報を得る事が出来たのだろうと判断したミュラーラ公爵。


「その様子であれば、誰がこの国に入っているのか分かったようだな」


 この騎士に対しては一切の情報を与えていないので敢えて簡潔に問いかけたミュラーラ公爵の問いに対し、明確に首肯する騎士なので、その姿を見て陰のソルベルドも動きを止めて騎士の言葉を待っている。


「はっ!ギルドに問い合わせた結果、国内にいるSランカーについて情報がとれました。何と、この大陸で5人認定されているSランカーの内、4人がこの国に入国しているようです!コレは驚くべき事です!!」


 頂上の存在のほぼ全てが自らの国家に来ていると理解した騎士なので興奮しているのだが、この話を聞いたソルベルドとミュラーラは思わず互いを見てしまう。


 二人の中ではリューリュは死亡しているので、5人中4人と言われると、ミュラーラ公爵との関係性を秘匿する為に一部の者以外には内密で行動していたソルベルドの存在が明らかになっている事になる。


 二人は何処で情報が漏れたのか訝しんでおり、一方の騎士は普通であれば自分と同様に興奮してもおかしくない事態なので、自らの主であるミュラーラ公爵と謎の存在の反応が著しくなかった事に疑問を感じている。


「あの・・・」


 不思議そうな表情をしている騎士の声に我に返ったミュラーラ公爵が、先ずは情報を得るのが先だと続きを促す。


「いや、何でもない。それで、入国している面々は誰なのだ?」


「はい。一人目は聖母リリエルです。以前からその存在は噂になっておりましたが、ギルドの前で癒しを行っている姿をこの目で確認してまいりました。あり得ない程の回復能力で、噂に違わない実力を持っている事が確認できました」


 この情報は聞かず共得ていたので、特に態度に変化がないミュラーラ公爵とソルベルド。


「二人目は、流星ビョーラです。各地で起きる紛争を収めるために国王陛下の依頼で動くべく入国し、間もなく活動を終えるとの事でした」


 この話ぶりから、今までの状況であればソルベルドの相手は流星ビョーラになるのだが、既に環境は大きく変化しているので続きの情報を待っている二人。


「三人目は陰のソルベルドです。何やら国家の騒動を引き起こしている存在と手を組んでいるようで、ギルドでは大騒ぎになっていました!聖母リリエルや流星ビョーラとは真逆の立ち位置、国家に仇成す存在です!」


 これには思わず目を見開いてしまった二人なのだが、騎士としてはSランカーが国家の騒動を引き起こしていると言うあり得ない情報だったからだろうと勝手に判断して四人目の情報に移っている。


 ソルベルドやミュラーラ公爵は何故ここまで情報が洩れているのか不思議に思っているのだが、互いの協力を証明する証拠は確実に焼却しているし、今もソルベルドは覆面をしているのでミュラーラの腹心には存在が明らかになっているが、得られるのは物証ではなく証言だけなので問題ないと思っている。


 特に腹心の騎士と例の食堂に同行した際にもソルベルドの名前は出していないし、ソルベルド自身も目元を隠して顔を見せていない。


 多少の焦りがありつつも、平静を装い四人目についての情報に耳を傾ける二人。


「四人目ですが、魔道リューリュです。何とこの獣人国家である王国バルドでもその名を轟かせている【黄金】一行と共に入国しておりました。なんでも聖母リリエルからの依頼でこの国まで来たようですが、聖母リリエルによれば本来の依頼は流星ビョーラによってある程度解決したとの事でした」


「な、何!?本当に魔道リューリュが【黄金】と共に入国したのか?情報に齟齬が発生していないか?」


 流石に動揺してしまうのだが、殺害したはずの存在が生存しているのであれば間違いなくミュラーラ公爵とソルベルドの関係はそこから漏れたと容易に想像する事が出来る。


 その上、魔道リューリュであれば自分達の知らない何らかの魔術で殺害の証拠を得ている可能性もあるので、一気に形成が悪化したのを悟るのだが、いくら情報収集能力に長けている陰のソルベルドや公爵の立場を持つミュラーラでも、昨日今日は大人しくしていたのでその辺りの情報を得ているわけがない。


 仮に情報を得ていたとしてもどの様に対処すべきか・・・良い案が出ていたのかは全く別の話しだ。


「わかった。もう下がれ」


 騎士を追い出すと、二人は思案にふけった後に互いに案を出している。


「流石のワイも、三人のSランカー相手では騎士の肉壁があっても厳しいわ。騎士が二人を抑えてもらえればええねんけど、現実的には無理でっしゃろ?」


「当然だ。化け物二人を抑えられる騎士など存在するわけがないだろう!」


 最早騎士の肉壁(・・)と言われてもそこに突っ込む余力はなく、これ以上作戦を継続するのは不可能であり、逆に自らの関与を疑われないようにするにはどうすべきかに話しが移行する。


 何かできる事も特にないので一先ずソルベルドは出国して暫く身を顰める以外に良い案が無く、決定直後に即座に消えて行くソルベルドと、冷静に考えればソルベルドはその実力から逃亡し続ける事も可能だが、自分だけは隠れる実力も無いので非常に立場が悪くなっている事に今更ながら気が付いたミュラーラ公爵だ。


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