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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(80)絶望から⑥

 ミランダの言葉から、選択肢が四つもあるのであればどれか一つは許容できる話があるはずだと思っている騎士。


 最悪は国を追われる事になっても命さえ助かれば全く問題ないと思っており、寧ろある程度情報を話してしまっている上に作戦が失敗しているので、主であるミュラーラ公爵や陰のソルベルドから狙われかねない以上、逃げる他ないと思っている。


 ある意味覚悟の視線になった騎士に対し、ミランダは四つの選択肢を冷静に告げる。


「一つ目。情報を吐いた上で埋められる」


 のっけから選ぶ価値すらない選択肢が提示されて表情がこわばっているのだが、その変化に気が付きながらも淡々と選択肢を提示するミランダ。


「二つ目。情報を吐いた上で刻まれる」


 短い言葉ながらこれで半分の選択肢が提示されてしまうので、もう少し真面な選択肢を希望するべく口を開くのだが、それも完全に無視して三つ目の選択肢に入るミランダ。


「ま、待って・・・」


「三つ目。情報を吐いた上で燃やされる」


 結局情報を吐いた上で始末される選択肢しかないので、慌てながらも何も話せず涙が出ている騎士。


「四つ目。情報を吐いた上で私達を捕虜として城まで案内する。当然城の中の情報、ソルベルドやミュラーラ公爵の情報、さっき言っていたパーミット侯爵の情報も全て開示する。さぁ、どれが良い?」


 選べる選択肢は一つしかないのだが、城に戻れば生き残れる可能性が一気に高まる上に敵を誘導したと言えなくもないので、無条件で最後の案が採用される。


「わ、わかりました!誠心誠意ご案内させて頂きます。一先ずパーミット侯爵の情報ですが、ハルナ王女を逃亡させたのがパーミット侯爵の子供二人だと判明したので、侯爵を反逆罪として捕らえる準備がされています」


「な、なんで避難(・・)せざるを得ない状況を作った者ではなく、避難の手助けを行う方が反逆罪なのですか!!」


 当然の疑問だが、ハルナの常識は権力に取りつかれたミュラーラ公爵の常識ではない。


「なんでも、ミュラーラ公爵から国王陛下に対し、王位継承を邪魔する為に城から追い出したと報告されたようなのです」


 完全に冤罪であり、何とかハルナを手中に収めようとあの手この手で脅迫まがいの事をし続けていたのはミュラーラ公爵なのだが、それを受けてこのままでは命の危険があると判断したパーミット侯爵家の二人がハルナを避難させたのが実態だ。


「けっ。胸糞わりー話だぜ。だからお偉いさんは気に入らねー奴ばかりなんだよ!」


「ドロデスちゃんの言うとおりね。獣人国家でもそうみたいだけど、それについては人族にもこれ以上ない程当てはまるのが残念よ」


 立場上相当上の人物との交流もあるリューリュなので、今のドロデスの話にこれ以上ない程に同意できてしまう。


 憤慨しているドロデスやリューリュをよそに、ミランダは少し怯えている騎士に対して追加の情報を求める。


「で、肝心の二人は日中と夜間、どの部屋にいるのか、その部屋は何処にあるのか、警備状況はどうなのか、分かっている範囲で教えてもらえるかしら?」


「は、はい!その・・・お二人にお目通りできる立場ではないので何時何処にいらっしゃるのか分からないのですが、恐らくお二人共日中は二階の執務室にいるものと思われます」


「・・・そう。つまり、何も知らないと言う事ね?警備状況は?」


 雲行きが怪しいので、記憶を呼び覚まして少しでも有益な情報を与えようと必死の騎士には、主に対する忠義など微塵も見えない。


「そ、それは・・・」


 立場が低い騎士なので、普段から警備任務に就く事は無く雑用ばかりであり、今回も間違いなく動けなくなっている【黄金】一行の処理をする汚れ仕事の為に派遣されている。


 つまり、ミランダが欲する情報など一切持っていないので、言葉に詰まってしまう。


「わかったわ。じゃあ、もう聞きたい事は無いから、貴方の今後についてはドロデスさんに一任しようかしら?」


 四つの内三つ目は納得できる選択肢だったのだが、最後の一つは甘々だと思っていたドロデスなので、ミランダのこの一言で情報を引き出すための罠だったと気が付き獰猛な笑みになる。


「お~、そう言う事かよ。随分とヌルい対応だと思ったがよ?俺が勘違いしていたわけだな?」


 死神(ドロデス)が鎌ではなく斧を持って近接しているので、痛む体に鞭を打ちながら森の中に向かって走って逃げる騎士。


「んじゃ、ちょっくら行って来るぜ?」

 

 幾らなんでも幼いハルナに惨状を見せる訳にはいかないので、敢えて少々逃亡させたうえで始末すると告げたドロデスと、その後跡形も無く消す必要があるのでリューリュが何も言わずに同行する。


 一瞬何らかの音が聞こえたのだが、恐らく喉を潰された騎士の断末魔だったのだろう・・・その数秒後にドロデスとミランダが普通に森から出てきたので、王国バルドに向かって進んでいる。


「当初の想像よりも少し短い距離しか安全に移動できなかったけど、これでも儲けものでしょ?そう思うわよね、スロノちゃん?」


「そうですね。リューリュさんの作戦勝ちですね。でも、侯爵の件もありますし、二日以上経つと陰のソルベルドがこちらに来るとなると・・・色々と考えなくてはいけませんね」


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