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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
78/238

(78)絶望から④

 ハルナを運搬している騎士は、一刻も早く主であるミュラーラ公爵に成果を届けたいし、【黄金】一行を運搬している騎士は、こちらも一刻も早く【黄金】一行(荷物)を廃棄したい。


 廃棄すればその分身軽になるので、短い時間別行動になったとしても廃棄後に移動速度が上がるので、先行するハルナを抱えている騎士には簡単に追いつける。


「例の穴蔵に捨てたらすぐに追いつくから、先に行っていてくれ!」


「了解っ!」


 ある程度の距離は無事に進めた事を確認したのだが、どうやらここまでと判断した【黄金】一行は、騎士が方向転換した瞬間に示し合わせた様に各自が抱えている騎士を始末する。


 何も知らない存在であれば気絶程度でも良いかと思っていたのだが、今までの行動や会話から判断すると、間違いなく今回の一連の行為に関する詳細を知っている上で喜々として参加しているので、敵の戦力を削減する意味もあって容赦のない対応を取っている。


 他種族とは言っても人型の種族に容赦のない制裁と言えなくもないのだが、国家権力がかかわる事案で不必要な情けをかけては、間違いなく自分の首が絞まると誰しもが正しく認識していた。


―――ドサドサドサ―――


 全ての騎士が一瞬でその生命を刈り取られて倒れており、証拠隠滅とばかりに即座に魔道リューリュによってその痕跡すらこの世界から消え去る。


 ハルナを抱えている騎士は振り向く事無く移動を始めており、多少人が倒れる音が聞こえようが、仲間の騎士達が抱えている荷物を落としたのかと思っているのでそのまま走っている。


 魔道リューリュによる魔術行使も、流石は別格で熟練のSランカーによる魔術行使なので何も気配を察知する事すらできず、只管走っている。


 走りながらも種族特性もあって背後から走ってくる複数人の足音は即座に感知できるので、思いのほか早く荷物を廃棄できたのかと思うだけで特段警戒はしていない。


 目的地に早く到着して成果(ハルナ)を提出する必要があるので、前を向きつつ後方を追随している存在に話しかける騎士。


「思ったよりも早かったな。このまま行けば、城でお待ちのミュラーラ様やソルベルド様から報奨がいただけるぞ。ミュラーラ様は当然だが、ソルベルド様も流石だな。人族とは言ってもSランカー。戦闘力だけではなく知略にも優れているとは恐れ入った。これほどあっさりと同格の魔道リューリュを含めた一行を始末してハルナ王女を手に入れるなど、通常では考えられない」


「・・・ソルベルドは城で待っているのか。間違いねーか?」


「お前、作戦実行前の話を忘れたのか?不測の事態が起これば狼煙を上げるし、二日経過しても俺達が戻らなければソルベルド様が状況を確認しに来ると言っていただろう?」


「成程な。じゃあ二日は安全に移動できるわけだ」


 あまりにも会話が成立しないので、移動しながらも軽く後方を確認した瞬間に騎士は吹き飛ぶが、破壊音は極限まで抑えられている。


 何が起きたか分からないが、吹き飛ばされた後に一拍遅れて体中から痛みを感じつつ、本来いるべきはずの仲間(騎士)ではなく、時間的に毒によってそろそろ死亡しているはずの【黄金】一行が視界に入る。


「お、お前等!何故生きて・・・」


 今得たばかりの情報ではこの周辺に最大の敵である陰のソルベルドは存在していないのだが、魔道リューリュによって念には念を入れるために大声を出せない様に喉を潰される。


「情報漏洩、ご苦労さん。あのクソ野郎が二日ほどこの周辺に来ねーのは理解したぜ。そこから考えると、テメー等の足で二日ほどの距離にある城にいるって事だろ?」


 もとより情報源にはなり得ないと思っていたので、二日ほどソルベルドがこの周辺にいないと聞いただけでも儲けものだと思っているドロデスに対し、スロノが今迄の経験を踏まえて持論を述べる。


「そうとは限りませんよ、ドロデスさん。この先に馬車が隠してあるのかもしれませんし、運搬に適した何らかの存在が隠れているかもしれませんから。その辺りを危惧してリューリュさんも攻撃の音やこの騎士の声に対策をしたのですよね?」


「流石スロノちゃん、その通りよ。ドロデスちゃんはもう少し色々と考えられるようになると良いのにねぇ?」


「うっ、すまねー。じゃあ名誉挽回だ。おい、この先に何らかの移動手段があるのか?正直に答えりゃ―、命は助かるかもしれねーぞ?」


 最も陰のソルベルドの気配を掴めるリューリュが肩の力を抜いている様に見える事から、油断はしないながらもある程度の余裕が生まれており、ドロデスは痛みに苦しみながら声がなかなか出せていない騎士に向かって問いかける。


 騎士にしてみれば突然の状況変化に頭が追い付いていないまま痛みに耐えているので、そう簡単に答えは出てこないだろうと理解した上で言い方を変えるドロデス。


「お前もお仲間の事は気になっているだろう?どこに行ったのか、親切な俺が教えてやるぜ。俺達がここにいる事で想像できているだろうが、お前のお仲間は天に昇ったわけだ。その先が天国か地獄かは知らねーがよ?で、お前は未だこの世界に留まっている。早く仲間の元に向かうべきじゃねーか?」


 質問など一切消え去り、まごう事なき脅しをかけている。


 目の前の【黄金】の一人ドロデスだけでも絶対に勝てない相手なのに、同格が多数いる上に魔道リューリュまで存在しており、奇跡など起こり得ないと理解した騎士は項垂れる。


 痛みに堪えつつも・・・奇跡ではなく僅かな希望に縋るほかないので、知っている情報を余す事無く正直に伝える事で命を繋ごうと試みた。


「・・・なので、一時間ほど移動した場所に馬車が準備されている。到着日に食事をあの場所でとらない事も想定されたので、今日到着せず共ソルベルド様に連絡が行く事はない」


 助かりたい一心で、知り得ている事を偽りなく伝えている。


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