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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(72)移動中の一行

 陰のソルベルドの急襲をはねのける事に成功した【黄金】一行だが、これ以上ない程の強者だと認識してしまった為、リューリュの配慮もあって過剰な警戒は行っていないながらも慎重に行動していた事で移動速度は極端に落ちている。


 正にミュラーラ公爵とソルベルドが話していたとおり、夜も更けた状態で移動するわけにも行かずに時間を見計らって宿泊できそうな場所で体を休めつつ、無理のない範囲で移動を続けている。


 ソルベルド単体と比べると格下のAランカーや一般人に含まれるハルナも存在している一行であり、そこに警戒をしつつ移動となるので、どうしても時間が必要になってしまう。


「今日はあの先に見える場所で泊りましょ?アイツ(ソルベルド)も暫くは大人しくしているのかもしれないわ。油断はできないけど、このまま行けば王国バルドに後数日で到着できそうね」


 リューリュの言葉を否定する事はないのだが、あの先(・・・)と言われても他の面々には視認する事が出来ていないので、曖昧に回答するほかない。


「・・・わかりました。美味しい食事が出ると良いですよね?昨日のリューリュさんはびっくりするほど食べていましたから」


「え~?ミランダちゃんも同じくらい食べていたじゃない?それに、男性陣はお酒も入っていたし、私なんて可愛い部類よ?」


 第三者的に話を聞いている男性陣としては、どっちもどっちであり得ない程食べていたと言いたい所なのだが、何がきっかけでとばっちりが来るのか分からない為に、必要以上に周囲の警戒に意識を向けて会話に参加する事はなかった。


「到着!!良いじゃない?」


 獣人国家の領地に入ったのか、町に入ると周囲は獣人しかいない。


 本来人族がこの場所に来ようものなら、敵対種族を睨みつけている視線に怯えて野営を選ぶのだろうが、一向は最低でもAランカーなのでその程度の視線は全く気にならないし、リューリュに至っては食事の匂いに対する感想を述べている。


 男性陣も、流石にソルベルドが町中で襲ってくることはないだろうと若干警戒を緩めている。


「うっし、そんじゃぁ腹も減ったから早速飯にしようぜ?」


「ドロデスさん達は、お酒が飲みたいだけじゃないですか?」


「まぁ~、否定はしねーよ。そんな事を言って、実はスロノも同じじゃねーのか?」


 【黄金】四人、スロノ、リューリュ、ハルナで話しながら最も良い匂いを撒き散らしている店に相談なしに向かっていた。


 ありとあらゆる場所で普通の民、商人と立場を変えて情報を仕入れていたソルベルドなので、【黄金】やらリューリュやら、残念ながらスロノに対してはそこまで情報を仕入れる必要性を感じていなかったので不明だが、食事の好みまで把握されている。


 ソルベルドが情報を収集して精査した結果、スロノを除く面々が好む匂いを敢えて出させており、仮にスロノが反応せず共流れで同じ店に行くだろうと思っていた。


 敢えて罠を仕掛けるのをこの町に設定したのも、高ランカーになると悪意には敏感になる事に対する対策が容易だからだ。


 そもそも町に入った直後から敵意や悪意の視線を向けられているのであれば、本当に敵対行動を取る悪意なのか、そもそもの種族嫌悪による悪意なのか区別が出来ず、そこに大きな油断が生じる。


 町中の存在が悪意の塊と言っても過言ではないので、それら全てに警戒する事は流石のSランカーでも不可能だ。


 一行は全ての視線、悪意を完全に無視して平然と町中を歩いており、とある店に普通に入って行く。


「おぉ~、良いじゃねーかよ!成程。好きな酒をその目で確認しながら選べるってわけだ!楽しみだぜ!」


 ドロデス、ジャレード、オウビの三人は、店の棚に並んでいるお酒に目を輝かせている。


「もうっ、あの三人は変わらないわね。スロノ君!あの三人は放っておいて良いから、何を食べるのか決めましょう?」


 まるで呆れたと言わんばかりのミランダだが、リューリュ、ハルナと共に、酒と同じように陳列している甘未に視線が固定されている。


「い、いらっしゃい。ウチの店は初めてのようだね。一定料金を食事の前に頂くシステムなんだ。時間は一時間程度、その間であれば並んでいる品は好きに食べて、飲んでもらって構わない」


 嫌悪感からか、視線は非常に厳しいながらも強面三人に怯えているのか頭上の耳がペタンと垂れている男性が店のシステムを説明している。


「良いじゃねーか!いくらだ?」


 一度支払えば時間が来るまで好きに飲めると理解したドロデスが最も早く反応し、全員分の金銭を支払うと酒が陳列されている場所にジャレードとオウビを伴って向かう。


 女性陣と半ば強制的に巻き込まれているスロノは甘味が並んでいる場所にいるのだが、スロノとしては少々持て余しそうな品々だったので、そっと移動して普通の食事が並んでいる場所に向かう。


 スロノの耳には、女性陣のアレが良いコレが良いと言う黄色い声と、ドロデスがあーでもないこーでもないとお酒の匂いを嗅いで残りの無口な二人と意思疎通を行っている声が聞こえている。


「何だか楽しいな」


 危険と隣り合わせにいる極限の状態であるはずが、思わぬところで楽しい雰囲気を味わえたことから嬉しくなっているスロノ。


 こうなるように陰のソルベルドが仕組んでいるとは誰も分からないまま、食事が始まる。


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