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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(7)再び救出依頼

まだ続きます

 何人かがスロノと同じような屈辱、虚無感を味わった経験があるこのギルドは再び喧騒に包まれている。


「あのクズ野郎、やっとくたばりやがったか。だけど冷静に考えれば・・・俺の妻も、いや、元妻もオークの餌になったと言う事だよな」


 現実を完全には受け入れられずに落ち込む者も相当数いる中で、相変らずリノは放心状態から脱する事が出来ずにいる。


「は~。後味は悪いけど、完全に潮時だな」


 一方のスロノはギルドに薬草採取場で見かけた少年を見つけたのでここで挨拶をしておけば明朝にはこの町ともおさらばだと思っているのだが、中々そうはならない状況に陥る。


「た、助けてください!」


 何と、少し前のリノと同じような事を言いながら、頭上に獣の耳を携えた少女がギルドに飛び込んできた。


 救助要請が来るのはギルドの風物詩と言えなくもないのだが、この短い時間に全く同じような事を言いながら飛び込んでくる状況と言うのも珍しいので、今度は何が起きたのかと全ての冒険者と受付が少女に視線を送っているのだが・・・


「ちっ、獣かよ!」


 誰の一言かは不明だが獣耳を見て亜人種と呼ばれている獣と人の混ざった人種である事を確認した瞬間に、この場にいた冒険者達は一気に興味が失せたのか視線を戻して喧騒が戻ってしまう。


 飛び込んできた少女はまるでこうなる事は分かっていたとばかりに受付に向かい改めて救助要請の交渉をしている様なのだが、見た感じではとてもうまく言っているようには見えず、根がお人良し、日本で生活していた記憶があるスロノとしては何となく見捨てるのも忍びないと言う気がしているので、さり気なく薬草採取の少年に近づくついでに獣耳を持つ少女と受付との会話を拾う事にした。


「・・・ですので、|前金で虹貨1枚(100万円)が必要です!」


「そ、そんな。そんな大金は持ち合わせていません。仲間を助けて頂ければ夫々の所持品を販売してでもお支払いしますから、助けてください!」


 冒険者が危険に陥っている時には、少し前のトレン達の様に受付の指摘を無視して強制的に依頼を受けたり普段の素行が悪かったり、と、余程の事が無ければ今後のギルドの貴重な戦力を失う事を防止するべく先ずは救出が先に行われるのだが、亜人族に対してはそうではないようだ。


 意識を少女と受付の会話に集中しつつも、少年に近づいて声をかけるスロノ。


「頑張っているようだね。今日も依頼を終えたのかい?」


「あ、こんばんは。そうです。丁度戻ってきたのですが、ちょっと気分が悪いですよね。あんなところを見させられて」


 少年は少女の懇願と嫌そうに対応している受付の方を見ているので、自分と同じ気持ちになっている同士がいたと少しだけ明るい気持ちになる。


「そっか。君もそう思うか。で、君なら今後どうする?」


「そうですね。あの受付の方の仰る通りに、前金を支払わなければ話を聞く権利はないと厳しく理解させる必要があると思いますよ?そもそも亜人族なんて、せいぜい人族の手足になれるかどうかと言った所でしょう?」


「・・・・・・」


 全く自分の予想とは真逆の事を言われてしまい目の前の実直そうに見える少年もその程度かと残念な気持ちになるとともに、こんな事ならば態々少年を待たずにさっさとこの町から離脱していれば嫌な思いをしなくて済んだのに・・・と思っているスロノ。


「は~、そっか。じゃあ、せいぜい頑張ってな」


 これだけ伝えると、既に話は終わったとばかりに受付が去ってしまい茫然としている少女の元に向かうスロノ。


「ちょっと良いかな?少しあっちで話をしないか?ここだと言いたい事も言えないだろう?」


 この時点ではスロノの評判は悪いままを維持しており、周囲の冒険者達も報酬を平気で搾取するような奴が亜人族に話しかけていると言う認識なのだが、亜人族自体が庇護の対象になっていない事から誰も助言や助け舟を出そうとする者はいなかった。


 唯一他と異なる視線を向けている存在と言えば何が何だか分からないと言った表情の少年と、相変らず茫然としているリノだろうか。


 亜人の少女はもう何を言っても何をしても仲間を助けられないと諦めているのかスロノの言われるままに後ろをついて行き、やがてギルドから少し離れた食事処に到着する。


「で、腹が減っていれば何を頼んでくれても構わないが、状況を教えてくれ。ただし冷静に。な?」


「あっ、あ、あの。話を聞いて頂けるのですか?」


 怯えた表情を見せる少女に対し、スロノは笑顔を崩さないように気を付けてさも当然とばかりに頷く。


「当たり前だろ?君は本当に困っている。俺は・・・噂は聞いているかもしれないが、ひょっとすると君の困り事に対して力を貸せるかもしれない。絶対とは言えないが、話してくれないか?」


 亜人族に対してスロノの噂は回っていないらしく、噂と言われても少々“きょとん”とした表情の少女だが、何かに気が付いたように急に真面目な顔になって一気に話始める。


「突然オークの群れが私達の所になだれ込んできたのです。普段から気を付けて行動していましたので絶対とは言えませんが、あの環境にオークが来るなんて今まではなかったんです。それなのに・・・。お兄ちゃんとお姉ちゃんが私を必死で逃がしてくれたんです。二人を助けてください!」


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