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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(69)ソルベルドの望むモノ

「まさかワイにまで情報を秘匿できる能力持ちとは思わんかったわ。おもろい人材やけど、逆に言えば邪魔な存在、危険な存在とも言えるわけやな」


 王国バルドで活動している聖母リリエルを助けるために移動している【黄金】を始末しに向かったが、思わぬ反撃にあった上に目的を達成するためには相当なリスクを負う状況になったと判断して即座に撤収しているソルベルド。


 敵を誰一人として行動不能にできずに自らの目的が達成できなかったのは近年記憶にないので、言葉は冷静だが内心は相当な怒りの感情が渦巻いている。


 想定外の事態の中で魔道リューリュが同行していたことが最も厄介なのは事実だが、過去に会ったスロノを当時は能力なしと判断していたのに現実的にはあり得ない程の<魔術>を使って見せた事に驚いている。


「何らかの方法で能力を隠しよったんやな。あの時、ワイはまんまと騙されたわけや」


 行商人として活動しつつ民から自然に情報を得ていたのだが、その際に強者の気配を察して元凶とも言える存在が不確かなままスロノの近くに移動してその存在を確認しようとした時の事を思い出している。


「まっ、道中は長いし王国バルドでもやり様はありまっせ」


 常に周囲を警戒している【黄金】一行の想像とは異なり、その身体能力を極限まで引き上げて一気に王国バルドに戻っている陰のソルベルド。


「戻ったで。リリエルが助力を求めた【黄金】やけど、残念ながら今回は始末出来んかったわ。思わぬ援軍が登場していたんや。聞いて驚け!魔道リューリュや」


「・・・お前と同じSランカーの一角、<魔術>Sを持つリューリュか。厄介だな。で、何もせずに【黄金】を見逃したのか?それにリューリュは何故同行しているのか把握しているのか?」


「リューリュはリリエルと仲が良いさかい、そのせいでっしゃろ?それに【黄金】も敢えてあの場で危険を冒して始末するような実力ではない事は証明しているやろ?」


「そう言えばそうだな。【黄金】一行はお前が背後から攻撃して全員仲良く行動不能になったのだったな。だが、だからと言って放置してはリューリュの動向も含めると後々大きな問題になるぞ?それに、その当時からは一人メンバー(ミランダ)が増えているだろう?」


 話しぶりから【黄金】がギルドマスターの依頼を受けて異なる町に向かっていた頃、相当前から【黄金】の実力を体感するべくソルベルドが行動していたのは明らかであり、つまり・・・同じように相当前から今回の騒動を起こそうと計画していた事になる。


「まぁ、確かに相当な魔術を使っておったわ。それに、もう一人もあり得へん魔術を使っておった奴がおってん。確かに油断できへんわ」


 注意喚起されたついでに最弱のただの付き人と考えていたスロノがあり得ない攻撃を仕掛けてきた事を思い出し、【黄金】は気を付ける必要がない相手との認識に変化はないがリューリュが加わってスロノもいるのであれば相当危険な相手になると、正確に状況を把握する。


 自分の力を過剰評価もしないし、敵の力を低く見積もる事もしない冷静な判断が出来るところもSランカーに成る為に必要な資質なのだろう。


「・・・戦闘に関してはお前に一任している以上、こちらがこれ以上余計な事を言う事はない。必要な事は、敵になり得る存在の排除。そこだけは忘れるな!」


 相変らず商人の恰好をしているソルベルドとは異なり、相当豪華な装飾品と共に過剰に煌びやかな服を着ている頭上に耳がある獣人は部屋から出て行く。


「言われんでもわかっとるわ。ワイの願いは唯一つ。最強のSランカーに成る事やからな。リリエルだろうがリューリュだろうが、目障りな存在や!」


 武に魅せられたのだろうか、至上の存在と崇められている上に相当な財力・権力まで手に入れているSランカーながらも同格が残り四人()いる事が不満なソルベルドは、その中でも頂点を極めたいと渇望している。


 普段商人やら一般の民やらに変装して各町を渡り歩いて市民から直接情報をその耳で聞いているのだが、彼等の中で時折話題に出て来るSランカーで誰が最強なのか勝手に盛り上がっている事に感化されたのかもしれない。


 普段から各国を好き勝手に移動していたソルベルドなので、人族の一部からは相当格下に見られている獣人族の国家でも普通に入国して活動出来ている。


 Sランカーの身分を隠しながら活動しているが、危険な場所であっても絶対的な戦力を持っている自信があって普段通りに好き勝手に行動しており、その行動がこの国家の重鎮であるミュラーラ公爵の目にとまる。


 人族でありながらもこの国家で平然と活動できる存在自体が異質なので、自らの手駒を幅広く手に入れたいと考えている重鎮であれば触手が伸びるのは当然だろう。


 ミュラーラ公爵は自分が王位継承は出来ないと理解しつつ実権を握るべく他の同格の存在を貶めようと企んでおり、利害が一致したソルベルドと行動を共にしていた。


 ソルベルドはその身を鍛えぬく事で否が応でも頂点を目指せるし、場合によっては他のSランカーを始末しても良いと考えていた。


 一方のミュラーラ公爵は自らの関与を隠しながら不条理に他国に侵略する事でソルベルドの活動の場を与えつつ更に国内を混乱に陥れ、上手くソルベルドを制御して敵の反撃を防ぎ国内を安定させ、それを成果として権力を手に入れようと考えていた。


 互いに勝手な欲望を達成する為に行動しているのだが、同じような存在は引き合うのか隠す事無く事情を説明して今に至っている。


 ソルベルドの方は公爵だろうがミュラーラ程度は簡単に始末できると考えているし、ミュラーラ公爵はソルベルドがSランカーと明かされているのだが、例え反旗を翻えされても自分との繋がりを隠しながら行動している以上は反逆者と思われておらずに国家戦力が使えるので、余裕で対抗できると考えている。


 ある意味そこに巻き込まれてしまったのが聖母リリエルであり、彼女も二つ名の通りに本心から癒しを与えるべくソルベルド同様に各国を転々としているのだが、国家が混乱していると聞いて獣人国家の王国バルドに赴き日々癒しを与えていた。


 おひざ元に同格が現れるとは思っていなかったソルベルドだが、差し当たり目的達成の為に他国にケンカを売りに行こうとした所で癒しの効果かは不明だが国内が安定し始めた事でリリエルを妨害するようにミュラーラ公爵から指示を受けていた。


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