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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(68)Sランカーの実力②

 流石の魔道リューリュも攻撃用の炎の魔術の調整、ソルベルドの真空波のような攻撃の相殺に使った風魔術の発動の負荷で自分の守りが多少疎かになって被弾していた。


 ソルベルドも脱出直後に攻撃してから避難し、火傷を負ってしまった手に回復薬を振りかけて槍が冷却するのを待っていた。


 ドロデス達の想像通りに普通の槍ではないのであの熱量でも溶け落ちる事は無く、加熱状態が異常状態と判断されているのかソルベルドが手を治療している短い時間で放熱が完了して通常状態に戻っている。


「ほんま面倒や。そこのくすんだ黄金の見た目だけ立派な三人!自分の実力を把握したようやな。今引き返すんなら特別に見逃したるわ」


 どうあっても近接の能力では手も足も出ないと理解し、それが態度に出てしまったのか・・・ソルベルドに見透かされてしまう。


 一方のミランダとスロノは未だ闘志が衰えていないので見逃す対象には入っていないが、ソルベルドのこの行動が逆に【黄金】の三人に火をつける。


「はっ!クソ野郎が何をほざきやがる。確かに俺達の実力じゃテメーに傷をつけるのは難しいかもしれねーがよ?それは自分の命を守って行動する前提条件があるからだぜ?俺達はこの依頼を受けた時点で命なんざ捨てているんだよ!舐めるんじゃねーぞ?」


 相手は間違いなく比べるのもバカバカしい程の格上だが、玉砕覚悟であればかすり傷程度は負わせる事が出来るだろうと思い一瞬萎れてしまった心に活を入れる三人。


「はぁ~、ほんまに面倒やわ。思った以上にそっちの二人も実力がありそうやし、雑魚三人の対手も大変や。ホナ、今は見逃したるわ」


 これだけ言うと挨拶とばかりに全力の衝撃波による攻撃をした直後に、この場から消えて行くソルベルド。


 魔道リューリュであれば風魔術を応用して追跡する事が可能だが、最後に放たれた攻撃を全員分相殺する為に風魔術を使用したおかげで追跡するのが一瞬遅れ、その短い時間で陰のソルベルドは完全に気配を消して消えてしまう。


「逃げたわね・・・ドロデスちゃん達の気合と覚悟で撃退した様なものね。凄いじゃない!あの陰湿君を撃退できたなんて誇って良いわよ!」


 事実を誇張する事で一瞬折れかけた心を持ち直せるように配慮しているリューリュだが、腐ってもAランカーの三人はその意図を把握しつつも決死の覚悟を見せる。


「いや、はっきり言って俺達の読みが甘かった。もう少し戦力になれるのかと思っていたけどよ?どう甘く考えても俺達は実力不足だ。だが、あんなクソ野郎に頭を下げるつもりも逃げるつもりもねーぜ?最悪は自爆覚悟で道連れにしてやるからよ!」


 周囲を警戒しつつも依頼達成の為に即座に移動を開始できるので今までの経緯から向かっている方向と同じ方面にソルベルドが逃げたのは間違いなく、何時何処で襲ってくるか分からないので何となく余裕のある会話の内容とは裏腹に緊迫している。


「いや~、でも私も驚いちゃったわ。ミランダちゃんもスロノちゃんも凄いのねぇ?ミランダちゃんの情報は持っていたけど、私にも何も情報が入らなかったスロノちゃんは今まで上手く能力を隠していたのかな?」


 常に余計な緊張状態だと体に過度な力が入って実力を発揮できないのは良く知られているのだが、スロノもそうだが【黄金】の一行もまさかAランカーの自分達がその状況になっているとは気づかずに移動しており、さり気なくリューリュが軽い話題を振って自然に力を抜いてもらえないか試している。


「えっと、はい。そうですね。でも俺なんてまだまだですよ。後になって気が付きましたけど、どう見てもミランダさんやリューリュさんが俺の術を調整してくれていましたよね?あれほど都合よく炎の球体を調整できるわけはありませんから」


「あら?気がついちゃった?それも含めて流石ねぇー。ドロデスちゃん。ミランダちゃんもそうだけど、何処でこれほどの逸材と仲良くなったのかしら?人を見る目があるのか人を引き付ける何かがあるのか・・・その風貌だと前者かしら?」


「ちょ、ちょっと待て!何で前者で決定しているんだよ?人を見る目があると言われるのは嬉しいが、俺には人を引き付ける魅力がねーのか?」


 思惑通りに緊張がほぐれつつも周囲への警戒は疎かにしていないことを確認できたリューリュは、良い状態を維持すべくこの会話に乗る。


「それはそうでしょう?どう見ても強面なんだから引き付けるより反発する方がイメージに合うと思わない?でしょ、ミランダちゃん?」


「え?えっと、ふふふ。そうですね。でもドロデスさん達はこんな見た目ですが、とっても優しくて懐が大きいんですよ?」


「あら~!良く見ているじゃない!良かったわね、ドロデスちゃん達」


 まるで観光旅行中の会話の様になっており、これならば問題ないとリューリュも少しだけ肩の力を緩める事が出来た。


「お~い。なんだか良い話で纏めている様だけどよ?こんな見た目ってなんだ、こんな見た目って!何時も伝えているがよ、俺達は繊細なんだぜ?」


 その後は普通の話をしつつ高速で移動し、特段襲撃も無く野営になる。


 陰のソルベルドの二つ名の通りに行商人に化けて行動している様な男が大人しくしている訳はないと分かっていつつも、苛烈な性格だと理解してしまったので、仮に町中で宿泊しようものなら襲撃の目撃者まで的にされかねないと思い野営をしている。


 過去にドロデス達を背後から襲撃した人物だと確定したので、冒険者の禁忌すら平然と行うような人材だと判断された事もある。


 全く気配を掴めなかった人物が見張りをしても成果は出ないので必然的に魔道リューリュは継続的に、他には交代でリューリュと共に見張りを担当する事になる。


 正直リューリュの負担が大きすぎるが、他の面々ではソルベルドの気配を一切掴めなかった以上は仕方がない。


 この中で唯一他の能力も行使できるスロノとしては、少しでもリューリュの負担を軽減する為に<操作>Cを自らに付与して周囲の獣や魔獣を秘密裏に支配下に置き、自然な動きを維持しつつ野生の能力を活かして警戒に当たらせていた。


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