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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(63)状況の整理

 本来は恩を受けた聖母リリエルの助けになるべく王国バルドに向かっているはずだったのだが、突然現れた陰のソルベルドが発した一言で状況が一変してしまう。


「シャール。得た情報から判断しているのだろうが、もう一度確認だ。移動中にあのクソ野郎(ソルベルド)が俺達を襲ってくる可能性があるのは間違いねーか?」


「聖母リリエルからの情報から考察すると、可能性と言うレベルではなく確実だろうな。どう見てのあの二人は相反した立ち位置で行動している。つまり、ソルベルドからしてみればリリエルの戦力を増やすわけにはいかないはずだ」


「チッ・・・」


 ミランダを加えて準備万端で向かったとしてもSランカーに勝てるビジョンが全く思い浮かばず、犬死にの可能性が高いので悔しさからか舌打ちしてしまうドロデス。


 今回敵になる可能性の高いソルベルドの能力は、公になっている情報では<槍術>S。


 一方の【黄金】はドロデスが<斧術>A、ジャレードが<盾術>A、オウビが<闘術>A、ミランダが<魔術>Aで、三人が近接、一人が遠距離型だ。


 多対一なので人数を考えれば圧倒的に有利な状況なのだが、それでも勝てるビジョンが思い浮かばないのが別格のSランカーなのだろう。


「ミランダ。突然で悪りーがパーティーを抜けてくれねーか?」


 突然ドロデスが爆弾発言をするのだが、だれがどう考えても依頼を断らずに王国バルドに向かうので途中間違いなく負ける戦いにミランダを巻き込まないようにしていることはわかる。


「ドロデスさん?ちょっと私のことを見くびってもらっちゃ困るわよ?ドロデスさんがリリエルさんに恩を感じているのと同じく、私も【黄金】に恩を感じているのよ?それに、まだ負けると決まったわけじゃないわ!【黄金】は戦う前から情けないことを言うようなリーダーが率いていたのかしら?」


「!?・・・ふ、ははははは、こいつは一本取られたぜ!確かにミランダの言うとおりだ。俺としたことがビビッちまって情けねー。それにハルナのこともあるからな。気合を入れ直して動くぜ!」


 ドロデスの闘志に火が灯ったようで、口は開かないがジャレードとオウビも気合を入れ直した表情になっている。


「えっと、もちろん俺も同行するので戦力に加えてくださいね?」


 軽く話しているように聞こえるスロノの声だが、実は相当の覚悟をして発言している。


 その理由は間違いなく持ち得ている戦力を開示したうえで作戦を練ることになるのでスロノとしては<収納>だけの能力を開示するわけにはいかず、相手が別格であるならば自分の安全対策も含めて別格の能力を付与する必要があると考えていた。


 つまり、流石に<収納>Exについて話すわけにはいかないが、最低でも<魔術>Sについては【黄金】のメンバー限定ではあるが公開が必須と腹を決める。


「話はまとまった様だな。申し訳ないがギルドとしてはこれ以上何かを開示するほどの詳細情報は得られない。今後【黄金】がどう動くのか判断は冒険者側に委ねることになるので、よろしく頼む」


 会話の流れから依頼を受けるのは間違いないのだが未だ方針が決定していないかのような言い方をしているのは、仮この会話を聞かれて情報がソルベルドに伝わっても【黄金】の行動が阻害されないように配慮していた。


 残されたのは【黄金】とスロノ、ハルナ。


「スロノも助かるぜ。正直戦力は喉から手が出るほど欲しいからな」


「えっと、そのことですけと・・・」


「<収納>以外の能力のことだろう?言いたくなければ言わなくても良いぜ?」


 間違いなく生きるか死ぬかの状況になるのに能力の開示をしなくとも良いと配慮しているドロデスの言葉を受けて、そもそも命を救ってもらった恩人でもあることから現時点で持っているレベルSの能力である<魔術>については即座に開示する。


 口で言っても信用してもらえない可能性も考慮して<収納>している能力を自らに付与するのだが、やはり練度の関係か力を完全に押し留めておくことはできなかった。


 逆に言えばスロノが突然あり得ないほどの強者の雰囲気をさらけ出しているので、思わずハルナ以外が一瞬無意識で警戒態勢に入ってしまったほどだ。


「おいおい、スロノ。こんなところでどうした?」


「えっとですね、今俺が持っている最高の攻撃(・・)能力を説明する為に、実際にその力の一部を見ていただこうと思いました。信じてもらえないかもしれませんが、俺が持っているのは<魔術>Sです」


「「「「「・・・!?」」」」」


 ハルナを含んだ全員がスロノは相当な能力を持っていると認識していたのだがまさかこれから対峙する人外の存在であるSランカーと同じレベルとは思ってもいなかったので、元から無口なジャレードとオウビも含めて全員が黙っている。


「ス、スロノ君?確かに今のスロノ君の雰囲気から考えると私の魔術よりも格上なのは感じるけれど・・・」


「ははははは、良いじゃねーか!これであのクソ野郎(ソルベルド)と同格がいる上に俺達もいるんだ。勝利の二文字が明確に見えてきたぜ!」


「あの、確かにレベルで考えればそうですが、申し訳ないのですが練度の観点から考えると相当未熟なのは間違いないです」


 レベルのおかげで術の発動、威力、そしてある程度の調整はお手の物だったのだが、今尚溢れ出る力を抑え込めていないのでソルベルドと比較すると相当格下であるのは間違いなく、油断しないように告げるスロノ。


 いつまでもこの状態ではソルベルドに情報を与える可能性があるので、【黄金】が納得してくれた時点で能力は収納している。


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