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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(62)打合せ

 頭に血が上っていると言いつつも冷静な判断ができているドロデスなので、このまま依頼を達成しに向かっては何らかの障害が出ると自ら判断した結果少しクールダウンするために時間をおくことにした。


「どの程度時間をおくのかはわからないが、良ければ隣の部屋でゆっくり休んでいてくれ。ギルドを通した依頼についてはどの程度時間的に余裕があるのか、王国バルドのギルドに問い合わせておく」


 ギルドマスターはこれだけ言うと席を外し、ギルド間の特殊な通信装置を使用して王国バルドのギルドを通して送付された依頼、聖母リリエルの二つ名を持つSランカーからの依頼について調整を始める。


「しかし、何故この依頼に二人もSランカーが絡んでいるのか・・・」


 自分では想像もできない力と権力を持ち得る存在なので何を考えて行動しているのか知る由もないのだが、経験したことのない揉め事になりそうだと多少の頭痛を伴いながら歩いている。


 一方言われた通りに隣の部屋に移動した面々は各自がゆっくりと寛ぎつつも、スロノとミランダは陰のソルベルドや聖母リリエルについて話をしている。


「今回の依頼は聖母リリエルさんからだったのですよね?それを同じSランカーが止めに来る。過去にドロデスさん達を背後から攻撃したことも、今回の行動と何か関連があるのですかね?」


「スロノ君。私も話をしてみて何とも言えない不気味さをあの人(ソルベルド)から感じたけど、過去は関係ないと思うわ。そもそも背後から攻撃して・・・言い方は悪いけど一撃で行動不能な状態にさせた上で止めを刺していない。その状況が今回の話に何か繋がるとは考えられないわ」


 例えばSランカーと言う最強の存在になってしまったので強敵を育成する目的で【黄金】に近づいて実力を試した行動と言えなくもないが、そうだとしても今回の依頼を停止させる言動に繋がらない。


 あえて言えば今の【黄金】では何も成せない程に難易度が高い依頼である為に親切心から忠告している可能性はゼロではないのだが、そこまで考えているミランダから見ても会話をしていた雰囲気から根拠はないながらもこの線は絶対にないと確信していた。


 結果、以前の背後からの攻撃と今回の件は全く無関係だと結論付けた。


「そうですか。ところで、俺からしても“うさん臭さ”は感じましたけど強者独特の雰囲気は全く感じませんでした。ドロデスさん達も同じだったようですが、ミランダさんはどうでしたか?」


 スロノは<鑑定>を自らに付与すれば雰囲気も何もなく実力を判定することができるのだが、ギルドにいる間全く素のままなので能力的に相手の実力を測る術は一切持っていない。


 逆に自らにレベルSの能力を付与した際、ソルベルドと同じようにまったく強さを感じさせないようにできるかと言われると・・・今の時点では相当厳しいと感じていた。


 これが高レベルの能力を大した労力も無く簡単に手にできてしまう、破格の<収納>Exの弊害だ。


 ソルベルドを含めるコツコツと積み上げてSランカーとして認定されている五人は、相当な経験をして能力も独自に進化させている。


 正直スロノはその部分の経験が大きく欠落しており、自らを鍛えると言う通常の流れでレベルSの力を手に入れた存在と接触して己が不足している部分、どうしても不足してしまう部分を認識させられた。


「正直、私も怪しい雰囲気満載としか感じなかったわ。あの話し方が余計にそう思わせているのかもしれないわね」


 意識を別の部分に向けさせて注意をそらすのは基本の戦術ではあるのだが、別格の力を持っている以上はそれだけでAランカーの目をごまかせるわけもないので改めて能力について奥の深さを思い知ったスロノ。


 二人が勝手に会話をしているのだが、もとよりジャレードとオウビは話すような人物ではなく、ドロデスは気持ちを落ち着かせようと目をつぶって集中している。


 ハルナは今の話についていけないのか単純にスロノとミランダの話を黙って聞いているだけなのだが、そこに王国バルドと連絡をしていたギルドマスターのシャールが戻ってきた。


「待たせたな。一応向こうと連絡がついて依頼主から情報を仕入れた。そもそも【黄金】に依頼を出したのは国の状況が相当荒れているので癒しに集中するために力を借りたいと言うのが概略だが、もう少し突っ込んで聞いてみた」


 依頼に関する話なので、ドロデスも目を開けてしっかりとギルドマスターの話を聞いている。


「荒れているのは事実で、王位継承で荒れているのかと思いきや・・・」


 チラっとハルナを見たギルドマスターだが、怯えるでもなく心配そうにするでもなかったのでこのまま話して大丈夫だろうと続ける。


「まぁ発端はそこらしいんだが、功績を得るためなのか何なのか一部の連中がトチ狂って他の国に侵略しようとしているらしい」


「そ、そんなことはあり得ません!たとえ他国を侵略しようが、王位は絶対に転がってこないのです!」


 流石に黙っていられなかったのかハルナが口をはさんでくるのだが、その眼には涙が溜まっている。


「悪かった。だが、申し訳ないがこの情報は事実だ。聖母リリエルが自ら情報を得て、それを直接聞いたから間違いない。今の流れから行くとどうやら陰のソルベルドは聖母リリエルと相反する立ち位置にいるので、彼女側の戦力増強を防ぐべく接触してきた可能性が高い。だとすると依頼に向かう道中も危険だぞ?」


「そんな・・・」


 事は悪い方向に進んでいるのは確実であり、自国の状況が悪化していると聞かされて動揺しているハルナと道中Sランカーに襲われる可能性について言及されて渋い顔の【黄金】だ。


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