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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
56/235

(56)不思議な存在

今日は投稿遅れました

「ワイはしがない行商人や。所で兄さん?この周辺で逃げるようにいなくなった奴、見とらんか?」


「え?ちょっと良くわかりませんけど、どうかしましたか?何か盗まれました?まさかお金ですか?」


 スロノは本心から答えており、敢えて名乗っていない行商人に扮しているソルベルドの思惑……相当な戦闘能力を持つ存在を確かめに来たとは全く気が付かずにいる。


 ソルベルドもこれだけ近接した状態でスロノから強者独特の雰囲気が一切ないし、僅かな体の動きからも戦闘に関してはど素人だと判断できていた。


「いや、そういう訳じゃないんやが、気のせいでもあらへんし……まっ、気にせんといてな!これはお詫びや」


 勝手に話しかけて勝手に完結したのだが、何やら商品の一つなのか石鹸を渡してくれたので、スロノの感覚では簡単に手に入れられる値段なので一つ位ならば頂いても問題ないだろうとありがたく受け取る。


「ありがとうございます」


 スロノの知識は一般的な石鹸をイメージしており、ソルベルドが販売している石鹸が相当高級品でこの町では手に入れるために犯罪まがいの事が行われる場合もあるなど知る訳もない。


「かまへん。ワイが勝手にわけわからんことを言ってしもうたからな。ホナ、今後機会があれば是非とも何かこうたってや?」


「わかりました。ありがとうございます!」


 訳が分からないうちに手に入れた石鹸を懐にしまい込むと、もう目の前のソルベルドの姿は消えていた。


 不思議な感覚に襲われて間もないので、無駄に自らの能力を周囲に把握されることを嫌って収納は使わなかったスロノ。


 これも単独で旅をして得た経験によるものだ。


「凄いな。商人なのにあれだけ早く動けるなんて相当修業したのか、高い能力を持っているけど冒険者が肌に合わなかったのかな?」


 感想を言いつつ周囲の店に意識を向けて移動しているのだが、背後に数人の男が忍び寄りスロノにぶつかると懐の石鹸はあっという間に盗まれる。


 今のスロノでは盗まれた事すら気が付けないので、多少よろけてしまった事もあって謝罪もなく逃げていく男達に少し厳しい視線を向けているだけ。


 この行動もソルベルドに観察されていたとはわからないのだが、本当に能力のない一般人の対応であったことからこれ以上ソルベルドが疑いの視線を向けることはなかった。


 その後、スロノが宿に宿泊するために中に入ると……


「おや?兄さん。またお会いしましたな。ワイもここで泊まろうと思っとります。ここで会ったのも何かの縁。どうでっしゃろ、一緒に夕食でも?」


「あ、昼間の。良いですね。俺はこの町に今日初めて来たので色々教えていただけると助かります!」


 その後夕食は何もなく終わったのだが、最後の精算時に石鹸のお礼と情報を教えてくれたお礼としてスロノが支払うと口を開く。


「えっと、ここは俺に支払わせてください。石鹸も頂きましたし、情報も聞かせて頂きましたから」


「ホンマでっか?それは嬉しいけど、兄さん。あの石鹸、スラれてまっせ?」


「え?」


 なんでこのタイミングで……と思わなくもないが、仕舞った懐をまさぐると言われた通りに石鹸がなく少々焦ってしまう。


 財布は収納しており支払いは問題ないのだが、石鹸をくれた相手を目の前にして使用せずに紛失しているのだから申し訳ない気持ちになっている。


「本当に申し訳ないです。折角頂いたのに、使う前に無くしてしまったようです。結構栄えている町なのにスリがいるんですね」


 こう言いながらもスボンのポケットに手を入れて<収納>していたお金を取り出し、あたかもポケットの中から取り出したかのようにして支払いを済ませているスロノ。


「兄さんは優しそうやけど隙が多いのや。気を付けたほうが良いで?」


◇◇◇◇◇◇◇◇


「って言う、二度目の旅の直後に起こった事なんですよ。結構遠くにいたのに瞬間に移動できる行商人、俺が気付かずに石鹸を盗られたことも把握していたなんて凄いですよね?あ!そうだ。気が付いていたならすぐに教えてくれれば良かったのに!」


 今更?と思うことを口にしているスロノは自分に能力を付与したところや収納したところはぼかして話をしたのだが、ミランダを除く【黄金】三人の表情が険しくなっていることに気が付く。


「あ、あれ?俺、何か余計なことを話しちゃいました?」


「ちょっと、三人ともどうしたのかしら?厳つい顔がこれ以上ないほどに厳しくなっているわよ?」


 スロノとミランダが少し心配そうに三人に話しかけると、三人は互いに視線を合わせて何やら意思疎通を図ったのか頷いた直後にドロデスが説明を始めた。


「初めにスロノと別れる切っ掛けになった、ギルドマスターからの依頼を覚えているか?」


「はい。精神的に疲れたので暫くこの町での依頼の受注を制限していた時に俺がミランダさんを連れてきましたよね?」


 ここまで真面目な表情を見たことがないので、緊張しながら答えていたスロノだ。


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