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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(53)若手の貴族と護衛①

 護衛として見た目は同じパーティーメンバーとして活動している同年代の三人は、それぞれの能力は最低でもレベルDの上位と言う年齢にしてはあり得ない程高い実力を有している。


 一般的に言われている最強がレベルBであり【黄金】が持っているレベルAになると異常と言っても良い世の中である事から、弓の速度、近接速度、魔術の構築速度からも相当な修練を積んだ結果得た力である事は誰しもが理解でき、一瞬でヤジは消え去る。


 【黄金】の面々も年の割には相当強いと言う事は雰囲気や立ち振る舞いだけで把握していたのだが、想像よりも少し上の動きを見せている事から感心(・・)している。


 スロノは開始直前にある程度能力を自らに付与しているので三人が持ち得ている能力は全てレベルまでしっかりと把握できており、誰が何をしてくるのか・・・誰しもが複数の武器を持っているのだが、正確に攻撃手段を把握してあっさりと矢を躱すと同時に矢を掴んで近接している者の一撃をいなすと、掴んだその矢を間髪入れずに魔術を構築している者に投げつける。


 過去に魔獣と戦闘する際にもここまで鮮やかに全てを躱されて対処された経験がなく、今の実力になってからは訓練中を含めても少なからず相手に隙を生み出させる事に成功していた為に、逆に自分達に大きな隙が出来る三人の護衛。


 動揺は魔術の構築に大きな影響を与えるので、これ以上術継続して今の術の構築を行う事は不可能だと即座に判断した男は中途半端な状態の炎の魔術をスロノの近くの地面に発動し、中途半端ながら爆発を起こす。


 目くらましと共に破片でダメージを与える事、この短い時間で自分達が仕切り直しをする事を目的に切り替えて行動していたのだが、魔術を行使できる護衛の元には予定とは異なって誰も戻ってこなかった。


 小規模ながら爆発の影響が収まった頃には、何故か既に倒れている<弓術>と<闘術>を持っている護衛の二人と無傷で自分達を見ているスロノが見えた。


「お、おい!早く何とかしろ!!なんであいつ(スロノ)が平然と立っているんだ!」


「お前は俺達の護衛だろうが!まさかお前の術の巻き添えで味方にダメージを与えたのか?」


 貴族の二人は相変わらずスロノとは大きく距離を取った状態で喚いているのだが、今の現象を把握できているのは当事者のスロノを除けば【黄金】とギルドマスターのシャール位だろう。


「スロノ!スゲーじゃねーか。いくら雑魚とは言っても上位の雑魚の攻撃を難なく捌き、その後もしっかりと動揺している最中に仕留める。中々できるモンじゃねーぞ?」


 敢えてドロデスが二人をスロノが難なく倒したと説明して見せているのだが未だ二人の貴族達は信じる事が出来ずに、慌てて魔道具の効果を無効にする魔道具に視線を向ける。


「故障・・・か?」


 思わず漏れてしまうのだが、二人の行動は実戦で言えば敵に最大の攻撃を躱された挙句に反撃されている状況の中での大きな油断であり、周囲の冒険者達からも呆れの視線を向けられている。


 唯一<魔術>を持っている護衛だけはスロノから視線を外す事はないのだが、魔術を構築できるほどの時間があるとも思えずに打つ手がないながらも、何とかこの場で勝利を収めようと必死で打開策を考えている。


 その苦労を全く理解する事の出来ない二人の貴族は魔道具が正常に機能しているように見えているので再びスロノに視線を移し、唯一残っているこの場の護衛である人物にこう告げる。


「直にあのスロノとか言う薄汚い者を仕留めてこい」


「そうでなければ、お前はクビだ!」


 今のスロノの動きを視認する事すらできなかったので周囲にいる冒険者でさえも絶対に勝利する事は出来ないと把握できているのだが、相当な脅しと共に命令されては動く他なく、決死の思いで威力は弱いが発動の速い術を連続で行使してスロノに襲い掛かる。


「あいつ・・・相当だな」


 観戦している冒険者の内の誰の言葉かは不明だが、一人残されている幼い護衛がどう見ても状況に応じて戦術を変えているので相当な場数を潜っている事は理解できている。


―――ボンッ――ジュー―――


 小規模の爆発や視界を奪う煙、時折直接スロノを狙う炎魔術が発動されているのだが、その全てを華麗に躱し、気が付けばいつの間にか<魔術>とこの世界では珍しく二つ目の有益な(・・・)能力である<鑑定>を持つ男も残りの二人の護衛と同じく倒れ伏している。


「ば、バカな!!コレは何かイカサマをしたに違いない!恥ずかしくないのか?」


「これだから平民は気に入らないんだ。クソッ!!宣言通りにお前は、いや、お前等は今この場を持ってクビだ!」


 何故か怒り散らしながらも護衛の三人を放置して勝手に闘技場から去ろうとしている貴族二人だが、周囲の冒険者達がその行く手を阻む。


「おいおい、まだお前等が望んだ試合は終わっちゃいないだろう?しっかりと貴族様は最後まで自らの発言に責任を持ってもらわないとなぁ!」


「ど、どけ!不敬だぞ!!」


「邪魔だ!どけと言っているだろうが!」


 二人を遠距離から護衛をしている人物もいるのだが周辺の冒険者全てが敵になっているこの現状では二人を助け出す事などできる訳も無く、更にはその冒険者の中に【黄金】やギルドマスターまで居る事からできる事はないと黙って成り行きを見守っている。


 所詮はこの程度の忠誠心しか持たれていない二人なので我が身を犠牲にしてまで守るべき存在と言う認識を持たれていなかったし、事実この場で見捨てられている。


 若い二人も護衛は同年代の三人と自らの親から告げられており、実際は陰から数人の熟練の騎士を一般人に装って護衛の任に就かせていたのだが、普段から横柄な二人に嫌気がさしている騎士は主の命令である為に嫌々ながらも護衛に就いているが、自ら余計な喧嘩を吹っ掛けて勝ち目のない戦いに身を置いているのだから良い薬だと言う思いでいる。


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