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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
52/235

(52)【黄金】と

 この若手二人の貴族、今はかろうじて冒険者として活動している事を許されている存在は、ギルドマスターであるシャールや【黄金】の立場を理解できていない。


 ギルドは独立機関であり国と相互援助関係にあるが王侯貴族の威厳が通じるのかと言えば必ずしもそうとは言えず、ある意味民のための組織である冒険者ギルド、国のための組織である貴族や騎士達と言う位置付けになっている。


 国家の危機、則ち市民の危機に対応すべく協力関係になる事は有っても、王侯貴族達の強制的な命令に従う必要はないと言うのが冒険者ギルドの立ち位置だ。


 つまり・・・シャールとしても偉そうにしている貴族の二人に何を言われようが全く問題ないと言う事になる。


 ギルドに属している冒険者達も専属契約をしていない限りは何ら縛られるような事も無く、更に言うならば【黄金】一行のように他国にも顔が利く程の強力な力を持っている者達であれば場合によっては王侯貴族達の方が遜って対応する事が多くなっている。


 間違いなくその辺りの知識がないままに冒険者として民と共に活動している二人なのだが、今更そこをシャールやドロデスが諭しても全く聞き入れられる状態ではない事は明らかであり、痛い目を見る必要があると言うのが共通の見解だ。


 この二人の親は自らの子供の性格は把握していたので早い段階から民と触れ合う事によってしっかりとした意識、例えば自分達貴族が優雅に生活できているのは各種素材を手に入れてくれている冒険者と言う存在がいるからであり、冒険者達は時には命の危険を冒してまで依頼を実行していると言う事をその身を持って理解して感謝の気持ちを持って欲しいと言う思惑があった。


 残念ながら結果は全く真逆になっており、自分達が特別な存在であるために下々の者達は常に遜る必要があると言う強い意識を根付かせるだけになってしまっているのだが・・・間もなくその高くなっている鼻はスロノによって容赦なくへし折られるだろう。


「じゃあスロノ、準備が良ければ始めたいのだが・・・大丈夫か?」


「はい。問題ありません。敢えてもう一度だけ確認しますけれど、何が起きても罪を問われないと言う事で良いですよね?」


「当然だな。これほど不利な状況で、そもそもこの戦闘すらまごう事なき言いがかりによるものである以上、ギルドマスターとしてそこは責任を持って断言できる」


 自分達は貴族だと明らかにしたにもかかわらず完全に無視されていることに加えて相手(スロノ)とばかり話をしているので非常に面白くない二人と、その背後に表情を変えないながらも戦闘の準備を整えている三人の護衛。


「では、これからスロノと五人の戦闘を行う。コレは公式の戦闘であり、両者合意の元真剣勝負で行われる。従って、何が起きようが一切事後に文句を言う権利はないと言う事を改めて明言しておく。両者準備は良いか?」


「はい、大丈夫です」


「はっ、その余裕の表情を泣きっ面に変えてやるぜ!」


「立場と言うモノを分からせてやる!それも貴族である俺達の責務だからな!有難く思えよ!」


 若手五人の内貴族と明言している二人は残り三人の背後に隠れるように移動しながらも、言っている事だけは偉そうな事を大声で発している。


「これが俺達の切り札だ。<収納>Eしかないような雑魚が魔道具の力を得て勘違いしたのだろうが、これさえあれば本当の実力で勝負する他ないからな!泣き喚いてももう遅いぞ!」


 事前に宣言していた通りに魔道具の効果を打ち消す魔道具と言うあり得ない程の効果を持つ品を起動させたようで、周囲にいる野次馬の様な冒険者達も自らが所有する魔道具が起動しない事を確認して驚いている。


 この魔道具は親の過保護とも言うべき思いから渡されている品であり、護衛として共に近くで行動させている三人や若干距離をとりつつも護衛している別の者達でも対処できない事象に対応する為、つまり二人の安全を確保する為に渡していたのだが、まさか不条理な決闘で使用されるとは夢にも思っていないだろう。


「おい、スゲーな。流石は貴族と言った所だが・・・」


「これって元に戻るんだろうな?俺のコイツ(魔道具)も結構値が張るんだが、これで使えなくなったら目も当てられないぜ」


 一部の者達は何も考えずにこの場所に来ているので、現時点で使用不能になっている魔道具が元に戻るのかが非常に心配になってしまう。


「安心しろ、平民共。スロノとか言う薄汚い奴の教育が終われば、俺達の魔道具の起動を止めてやる。そうすれば自然と使えるようになる」


 この魔道具を起動した貴族の一人が周囲の声に反応して偉そうに回答しており、一部の者は安堵しつつも相当年下に偉そうな態度で対処された事から自然とスロノを応援するようになる。


 もとより【黄金】の信頼度やギルドマスターであるシャールに尊敬の念を抱いている冒険者達なので、その一行が応援しているスロノを応援してしまうのは自然な流れと言えるだろう。

 

「スロノ!やっちまえ!!生意気なクソガキを消滅させろ!!」


「そうよ!ドロデスさんの言う通りよ。思い切りすり潰しちゃって、スロノ君!!」


 【黄金】唯一のブレーキと言って良いミランダですらこうなので周囲の冒険者達も沸き立つようにスロノを応援しているが、逆風吹き荒れているこの状況でも貴族二人の表情は変わらないし、元より相当訓練されているお付きの者達三人の表情も変わらない。


 二人の貴族の実力はさておき、流石に【黄金】やギルドマスターには手も足も出ないながらも実力としては年齢の割に相当高いお付きの三人である為に、そう年齢が変わらない<収納>Eに負ける要素がないと判断している。


「では、これより開始する。はじめ!」


 シャールの開始宣言と同時に護衛三人の内の一人が弓を即座に射ると一人は一気に近接し、最後の一人は魔法を構築しており、その速度、威力から考慮すると<魔術>Dの上位の力は持っていそうに見える。


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