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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(49)冒険者との衝突

 【黄金】一行の行動はその実力を良く知るギルドマスターのシャールであれば理解できているのだが、若手冒険者達はまるで自分達の追跡技術が粗くその行動は完全に把握され、剰え外敵から守ってくれていたかのように聞こえている。


 守ってくれていたかのように・・・ではなく実際に気が付かれないレベルで守っていたのだが、それすら無駄だったと思わせるほどの悪態をついてきたので今後一切の助力を行わないと宣言していたドロデスと、そこを止めたり否定したりしない交渉役のミランダ。


 スロノ、そして王族である獣人のハルナもドロデスの言っている事は全てしっかりと理解できており、この場で何もわかっていないのは難癖をつけている若手冒険者だけ。


「何を言っているのかわかりませんが、今まで皆さんには何もしてもらっていませんからね。それこそ余計なお世話ですよ」


 相当な危険から身を守ってもらっていたのだが、その行動すら把握する実力がない若手冒険者は捨て台詞を残して去って行く。


「はぁ~。すまなかったな。全く、あいつ等は。このまま同じ行動をすれば直にあの世に行く事を理解していないのが困ったものだ。だが、申し訳ないがギルドとしては一応罪を犯したわけではない冒険者を守る義務があるからな。生き残る為に多少の教育を施す事は許容してくれよ?」


 罪人に対する扱いが非常に厳しいのは当然だが、逆に罪を犯していなければ生存率を上げるためにギルドとして配慮する必要があるのも当然であり、しっかりと主張しているギルドマスターに対してミランダが問題ないと告げる。


「仕方がないですよね。若気の至り・・・と言う範疇を大きく逸脱している気がしますが、私達としても無駄に死亡するのを望んでいるわけではありませんから。そこについて文句は言いません」


「あぁ、助かる。じゃあ俺はこれで。っと、スロノ!久しぶりだから、近い内に旅の事を聞かせてくれ!じゃあな!」


 ギルドマスターのシャールはそのまま若手冒険者達を小走りで追いかけて捕まえると、全員纏めて教育するようで別室の方に消えて行った。


「あの・・・お話させて頂いても良いですか?」


 再びこの場にやって来た受付はあれ程全員が怒っている【黄金】を見た事がないので少々怯えつつも、しっかりと依頼書を手に握りしめて再び受注のお願いに来ている。


「あら?ごめんなさい。さっきも同じ書面を持っていたようなので、何か依頼を持って来ていたのですよね?なんですか?」


「実は、【黄金】の皆さんに受けて頂きたい依頼が・・・」


「だから何度も言っているだろうが!お前等じゃ逆立ちしても気が付かないレベルで助けてもらっているんだよ!!」


 受付が依頼内容を話そうとした所、シャールが消えて行った方向から怒鳴り声が聞こえて話が止まってしまう。


「は~。予想はしていたけど、ギルドマスターにすら文句を言っている様ね。折角命を無駄にしないようにと言う善意の行動なのに、報われないわね」


「そうだな。だが、あのバカ共ももう引けね~んだろ?だったら、その身で報いを受けるほかね~よ。もう俺は本当にあいつ等の面倒は見ねーぞ?そもそもあれだけ偉そうな事を言いやがったんだから、依頼は自分達だけでしっかりこなせば良いだけだ。俺達の後をコソコソ嗅ぎまわるように飛び回りやがって、うっとうしい連中だぜ!」


 少々怯えてしまった受付をよそにミランダとドロデスは涼しい顔で会話をし、ジャレードとオウビ、そしてスロノは同じく少々怯えてしまったハルナに対して無駄にデザートを勧めていたのだが・・・


 突然ギルドマスターが新人冒険者に対して教育していた部屋の扉が開いて中から指導を受けていた面々が相当不満そうな表情で勢いよく出てくると、その中の二人がわき目もふらずにスロノの元にやってくる。


「おい、お前!俺達と勝負しやがれ!!」


「そうだ!<収納>Eしか持っていない雑魚のくせに、死地から戻れるわけがないんだよ。その事実を嫌と言う程分からせてやるよ!」


 喚いているのは相変わらず二人なのだが、同じく教育の対象とされている若手の残り三人は一歩引いた状態で静観しているように見える中、再びドロデスが切れる。


「あ?しつけー野郎だな?パーティーメンバーでもねーテメー等が他人様の能力を公衆の面前でレベルも含めて何度も大々的に宣言しやがって。そんで、相手が戦闘系の能力を持っていねー事をわかった上で偉そうに喧嘩を吹っ掛けんのか?あ?クソ雑魚共が!」


 ドロデス達は類まれなるその能力と今迄の過酷な経験から、スロノは目の前の若手が言っている通りに<収納>Eだけの能力を持っているわけではないと何となく理解しているのだが、ミランダ加入時の様に特別な状況ではないので冒険者の流儀として突っ込んで聞く事は絶対にしない。


 ミランダにとっても、スロノは自らの能力をしっかりと調整してくれた大恩人。


 能力の調整などは絶対に<収納>Eだけで出来ない事は考えるまでも無く理解しており、以前スロノ自身も他の能力を持っていると自ら告げていたのだが、そこについて余計な事は一切言わない。


 そうなるとこの状況は、この町・・・王国シャハのテョレ町と言う発音しにくい町ではあるが、この町のギルド最強、そして周辺の町だけではなく遠くの町、国家にもその名を轟かせている【黄金】のメンバーから厳しく恫喝されて震えている若手の冒険者達と言う図が出来上がる。


 スロノとしては余計な戦闘は避けたいし、仮に戦うとしても無様な敗北だけは何となく自分自身が許せないので能力を使う事になるのだが、その結果が余計な軋轢、疑いを周囲の者に持たれる可能性がある事も理解している。


 ここまで公に<収納>Eと言われているのに若手とは言え恐らく戦闘系の能力を持っている者に難なく勝利してしまっては、【黄金】のメンバーとは異なって根掘り葉掘り事情を聞く者、調べようとする者が後を絶たないのは想像に難くない。


 このまま放置するのもありなのだが、今後単独で行動している際に人目のない所で若手冒険者達から余計な事をされかねないと言う思いもある事から、思い切って動く事にした。


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