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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(46)変わらない者

「ここが【黄金】が拠点にしている町のギルドだ。どこもギルドは変わらないと言うのが俺の感想だが、獣人国のギルドは経験がない。そこはどうだ?」


「そうですね。見た目も中も・・・種族が違うだけで依頼を受ける形態も変わらない様に見えますね」


 今はフードを被っているが、耳さえ見えなければ獣人とは判別し辛いので普通に周囲を観察して感想を伝えているハルナ。


「先ずは、受付に聞く・・・」


「おい、スロノじゃねーか?」


 受付に【黄金】の動向を確認しようとした所、背後から懐かしい声が聞こえてきたので嬉しそうに振り向くスロノ。


 予想通りに【黄金】メンバー四人が揃っており、後から加入したミランダも元気そうでスロノに対して笑顔を向けている。


「久しぶり!本当に久しぶり、皆!」


「おいおい、随分と立派になったじゃねーか。で、こっちの少女・・・か?お前の妹か、奥さんとか言うんじゃね~だろうな?」


「ははははは、ドロデスさん。似たような事をミランダさんの時にも言っていましたよ!」


 おかしくなって以前の様に敬語に戻ってしまったスロノだが、このままの流れで全員が食堂に移動する。


 当然有名なパーティーなのでこの場にいる冒険者達の注目の的になっているのだが、当人達は慣れているのか一切意に介す様子を見せなかった。


「これは・・・予想以上と言うか。ミランダさんまで凄いですね。視線が痛い・・・」


「最初は私も戸惑ったけどいつの間にか慣れちゃった!スロノ君も同じ状況になれば嫌でも慣れると思うわよ?っと、そうだ!最後の別れの時、なんで私に何も言わずに行っちゃったのよ!!思い出したわよ!凄くショックだったんだから!」


 本来は早めにハルナの紹介をしたかったのだが、何故かスロノの糾弾が始まってしまいしどろもどろになる。


「え?あ、その。何と言いますか、やっぱり悲しい別れは経験したくないじゃないですか?折角新たな門出で調子が出てきている所に水を差す事になると言いますか、何と言いますか・・・ごめんなさい!」


 結局何を言っても言い訳でミランダを悲しませた事実は変わらない為に素直に謝罪するスロノと、本気で怒っているわけではないので既に笑顔になっているミランダ達。


「ふふ、これ以上虐めるとスロノ君がかわいそうだからやめておくわね。で、今日はどうしたのかしら?」


 どうやら【黄金】の交渉についてはミランダが主に行う流れが出来上がっているようで、しっかりと話は聞いていながらも男三人衆は早くも酒を口にし始めている。


 いつもの事よ・・・と言うような笑顔をスロノに向けたミランダは、その後視線をスロノの隣にいるフードを被っている女性に移す。


「・・・獣人の方かしら?この方も私の時の様な事になっているのかな?」


 何故か一発で獣人と言い当てられてしまったのだが、結局存在を明かす事になるのでそこは問題ないと思いつつも随分と詳細な情報を一見で掴めるようになっているなと感心しているスロノだが、新たな能力に芽生えているのかを確認するような無粋な事はしない。


「そうなんですよ。色々と国で問題が起きているそうです。【黄金】の皆さんにお願いしたい事があるとの事で、随分と過酷な旅をしていた人です。残念な犠牲を出しながらも必死に旅をしている中で、俺と出会ったんですよ」


 【黄金】は家族と同義の存在で、父とも言えるドロデス達がいる為に自然と言葉が綺麗になっているスロノ。


「そっかぁ。大変だったんだね。でも大丈夫。お姉ちゃん達に任せてよ!」


 どうやら交渉を任されていると言う事はその後の行動の決定権もミランダにあるようで、頼み事の内容を聞かない内に手を貸すと伝えているミランダとその言葉を聞いても眉一つ動かさずに酒を煽っている男三人。


「えっと、ドロデスさん達も良いですか?俺もそうですけど、具体的に何をするのか聞いていないのですが」


「ん?あぁ、スロノの紹介でミランダが受けたんだ。何も問題はね~よ」


 想像以上にあっさりしており、相当ミランダと自分の事を信頼してくれている事に気が付いて相変らず懐の大きな人だと安堵する事が出来ている。


「じゃあその話は私が聞きますね。厳ついおじさんでは話し辛いでしょう?スロノ君は皆に旅の話しをしてあげて。あっ、勿論後で私にも色々聞かせてね!」


 ミランダはハルナの手を優しく取ると近くの席に移動して、個別に話を聞く事にしたようだ。


「おいおい、ヒデーなミランダ。誰が厳ついんだ?こんなに愛くるしいのによぉ。なぁ?スロノもそう思うよな?」


 素直に首を縦に振れないような事を笑顔で伝えてくるところも相変わらずだなと思いつつ、これまでに色々な経験をした話をして盛り上がり、結局夜通しギルドで騒ぎ倒してしまった。


「うぇ、ちょっとはしゃぎすぎちまったか?アレ?ミランダとあの嬢ちゃんはどうした?」


 最も早く意識を取り戻したのはドロデスで、受付がその様子を見ると走り寄って来た。


「も~、ここは宿泊場ではありませんよ?ミランダさんから伝言ですが、ムサいオジサンの面倒は見られないのでハルナさんと宿に戻っているとの事でしたよ」


 【黄金】の人柄や実績があるので受付は本気で怒っているわけではないのだが、言われた方はここまで気が緩んでしまった事に少し驚きつつ恥ずかしい気持ちになっていた。


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