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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(38)ミランダの決意と【飛燕】①

 スロノから突然パーティー加入、それも拠点を移して新たなパーティーに加入する事を勧められてしまったミランダ。


 墓標については自分が作った物であり正直な所ネックレスさえあれば良いと切り替える事が出来るので、元パーティーの【飛燕】がいない場所で活動するのも“有り”だと思えている。


 流石に自分がこれほど大切にしていると知っているはずの思い入れのあるネックレスにまで手を出されてしまったので、今回は運良く戻ってきたので事なきを得たが今後何をしてくるか分からないと言う不安も有った。


「あの・・・スロノ君も一緒ですよね?」


 共に過ごした時間を思えば楽しい事ばかりだったので、思わず聞いてしまったのだが・・・スロノは優しく微笑むだけで軽く首を横に振る。


「俺はその町を拠点にしているパーティー、【黄金】って言いますけど、以前共に行動していました。でも、ある程度旅をして色々な出会いを経験し、もっと見た事のない世界を感じたいと思ったんです。正直俺もミランダさんとの活動は本当に楽しくて魅力的ですけど・・・大丈夫です。俺もずっと放浪するわけじゃないと思いますから、絶対に遊びに行きますし何時かは戻りますから!」


 恩人でもあるスロノの決断を余計な感情で切り捨てる訳にはいかないと思ったミランダは、それならば残り短い間は本当に楽しもうと切り替える。


「わかったわ。じゃあ、移動の旅も含めて沢山楽しみましょう!あっ、でも【黄金】に加入できなかった時は私もスロノ君について行くわよ?」


「あははは、そんな事は無いと思いますけどね。一応伝えておきますけど、リーダーのドロデスさんとは会話ができますが他の二人は本当に寡黙です。俺も話しているのを聞いた事がない程ですけど、全員凄く良い人達ですよ」


「ありがとう。スロノ君がそこまで言い切るのだから安心ね。じゃあ、申し訳ないけど少しこの辺りを綺麗にしてから旅の準備で良いかしら?」


「もちろんです。俺も手伝います!」


 手作りの墓標、両親との生活の思い出が残っているボロボロの家屋を二人で掃除した後に宿に戻りながら旅の準備をするのだがやはりどことなくミランダの表情は曇っていたので、何とか元気を出してもらおうと夕食は豪勢にしようと考えているスロノ。


 この後は旅の準備とギルドへの挨拶と進むので、当然の様に翌朝の強制的な約束とも言えない待ち合わせに赴くわけもないミランダ。


 実際に長く生活をしていたこの町、両親との思い出の建屋もあるこの町から出るのは相当な勇気がいるようでミランダは決心が鈍らない内に勢いで行動するべきだと判断したのか、夕食の後にスロノと相談して直に出立する事にした。


 ある程度の荷物を纏めているのでそのまま背負って町から出るのだが、実際にはその他の必要な物資はスロノがしっかりと自らの能力である<収納>E.で保管している。


 夜も更け始めてから町を出るのは危険と隣り合わせである為に門番は少々渋い表情になったのだが、町を救った大英雄であり有り得ない程の実力を持っていると知られているミランダが対象であれば強引に引き留めるような事はしない。


「こんな夜更けに・・・その格好から察すると旅ですか?寂しくなりますね。ご存じの通りに夜は夜で夜行性の獣やら魔獣やらがおりますので、街道とは言え決して油断しないでくださいね。俺達の町を救って頂き、ありがとうございました!」


 気持ちの良い門番と別れの挨拶をして、【黄金】が拠点としている町に向かって少々長旅を楽しむ事にしたミランダとスロノ。


 翌朝・・・


「いつになったら来やがるんだ?早くしねーと現地に到着するのに数時間必要なんだぞ?依頼達成後は日が暮れちまうじゃねーかよ!」


 門の前で、絶対に来る事のないミランダを日が昇る前から待ち続けている【飛燕】の三人。


 実は今日の依頼を達成して元の評価に戻った上で暫くミランダに依頼をこなさせる算段でいた為に、なけなしの金を全て使って良い宿に泊まり無駄に英気を養っていた。


 つまり・・・今日依頼をこなせなければ完全に文無しであり、正直相当レベルが低く何とか食うに困らない程の報酬を得られる依頼ならばこなせるのだが、今日はギルドの評価判断基準となるレベルの高い依頼を完全に受注してしまったのでその選択肢だけは無い。


 かなり焦り始めているミンジュを始めとした三人は、揃ってミランダが両親と生活していた家屋に向かう。


「おい、随分と綺麗になっているじゃねーか?」


 最後の別れとして感謝の気持ちを持って掃除をしたので相当綺麗になっており、昨日見た状況とは明らかに異なっている事に何故か不安を感じている【飛燕】の三人。


「あいつ等、普段はどこに泊まっているんだ?」


「確か・・・木漏れ日亭だったような?」


 当然目的の宿に向かうのだが、そこで驚愕の事実を知る。


「おい!ここにミランダが宿泊しているだろう?まだ起きていないのか?」


「あぁ、英雄のミランダさんね。昨晩遅くに町を出ると挨拶してスロノさんと共に出て行かれましたよ?」


「「「はっ??」」」


 揃ってアホ面を曝け出して全く同じタイミングで全く同じ事を言っている【飛燕】の三人は、自分達がある意味危機的状況に陥っている事に気が付く。


「あいつ・・・形見だの思い出の品だの偉そうな事を言っておきながら、あっさりと捨てたのかよ!」


 思わず愚痴を吐いて再びミランダが過去に生活していた家屋に向かい、埋めた場所を確認する三人だ。


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