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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(34)ハーネル

 スロノは安全の為にある程度ハーネルと距離を取ったのだが、逆にハーネルとしては遠距離攻撃の能力を持つ為に丁度良い射程になってくれたと喜んでいる。


「スロノと言ったかしら~?貴方も私への不敬な態度を罰する意味で、ミランダと共に消してあげるわ~」


 もう正々堂々の勝負ではなく、消すと言い切ってしまっているハーネル。


 何故か自分の中に感じている能力、その力が一気に跳ね上がった感覚があったので、ここにきて漸くレベルが上昇したのかと思っていた。


「ふ、ふふふふ、丁度良いタイミングだわ~。やっぱり私が最強なのよ~!」


 目にもとまらぬ速さで弓を出して攻撃態勢に移行すると、スロノやミランダの行動を確認するまでも無く溢れ出る力を開放するかのように矢を放つ・・・のだが、悪魔の能力である<強化>Dによって無駄に強化されてしまった能力を制御できるわけも無く、その矢は弓から離れる前に大爆発を起こす。


 それも威力が増したままなので、距離を取っているミランダやスロノも軽く吹き飛ばされてしまったほどだ。


「だ、大丈夫ですか、ミランダさん?」


「ゴホッ、私は何とか大丈夫。スロノ君は?」


「俺も、かろうじて・・・大丈夫でしたよ」


 本当は二人共に結構な怪我をしていたのだが、<回復>を自らに付与して癒し、さり気なくミランダに対しても声をかける前に癒していた。


 そうなると震源地であるハーネルがどうなっているのかが非常に気になる所で、まさかの追撃が来るかもしれないと若干警戒したのだが・・・<弓術>Bが無駄に強化されているおかげか自身の身体能力、つまり防御力も強化されていたようで見かけ上怪我はしていないように見えるのだが、気絶して倒れていた。


「あの・・・アレ(ハーネル)、どうしようか?スロノ君」


「えっと、この場所ではもう依頼は達成できませんから、少しだけ場所を移動して依頼を達成する・・・で良くないですか?そのままギルドで納品時に事情を話せば、間違いなく資格剥奪だと思いますけど?」


 倒れているハーネルを無視する形で、荒れ果ててしまった場所から移動してスライム討伐の依頼をセッセとこなしてそのままギルドに戻る。


 ここまで荒れてしまう程の破壊力のある攻撃と言う名の自爆を行った以上、元より安全であると言われているこの周囲に危険な存在が近接してくるわけも無いのでハーネルを救助するような事も、その必要性も感じずにいた。


「・・・と言う事がありました。まさか突然攻撃されるとは思いませんでしたけど」


 と説明しているスロノは、さり気なくハーネルから悪魔の能力であるが非常に貴重な<強化>Dと、今後更に余計な事をされては面倒だと言う思いから<弓術>Bも回収している。


「そうか。あの様子だと絶対に何かしでかすとは思っていたが、申し訳ない。俺の管理不行き届きだ。もっとしっかりと脅しておけば良かった。で、どうする?正直に言うと完全な言いがかりで致命傷になり得る攻撃を受けた事になるので、死罪も有り得るが?」


「し、死罪・・・ですか?」


 ギルドマスターがあっさりと恐ろしい事を言うので、思い起こせば似た状況を経験してはいるのだが少しだけ腰が引けてしまったスロノ。


「それはそうだろう?常に仕事で身の危険があるのに、仲間、同僚から攻撃を受ける様な事まで許されては依頼を安心してこなせないだろう?そこはしっかりしなければならない所だ」


 言われてみればその通りなのだが、正直全ての能力を収納してしまったので全く脅威になり得ないただの人、寧ろ何も特技と言えるモノが存在しない人に成り下がっているハーネルなので、必要以上の罰を与える事がなくとも今後生活に困窮するのが罰になるだろうと思い厳しい罰は行わないように告げる。


「あの・・・ミランダさんも良いですか?俺としては死罪まで行うのはちょっと抵抗があると言いますか、普通に資格剥奪で済ませて頂ければと思います」


「私は構わないわよ。それに、何かあればしっかりと守ってあげるから安心してね?」


 そこまでの必要は全くなくなっているのだが説明できるわけも無く、少々苦笑いで対応しているスロノ・・・その後はミランダの素晴らしい<能力>の話でギルドマスターが勝手に盛り上がってしまい中々帰れず、何故かギルドマスターと共に夕食まで食べる流れになっていた。


「ふ~、今日は何と言うか、精神的に疲れたな・・・」


 独り言のつもりだったのだが、ベッドで寝ているように見えたミランダは起きていたようで直に反応する。


「そうね。私もあれほど露骨に人から攻撃をされそうになった事は無かったので、ちょっと驚いちゃったわ。でもスロノ君?ギルドでも言ったけれど、絶対に私が守ってあげるから。スロノ君のおかげで普通に能力が使えるようになった私が絶対に守るからね?」


「あ・・・ありがとうございます」


 まさか起きているとは思わず、更には予想もしていなかった程に繰り返し守ってくれると伝えてくれたミランダに感謝しつつも、疲れたのはギルドマスターとの食事だったとは言えずに眠りについた。


 翌日のギルドでは・・・依頼書が貼り出されているボードに大々的にハーネルが冒険者資格を剥奪されたと告知されており、スロノとミランダがギルドに到着した頃には散々文句を言い散らかしたハーネルは既にギルドにはおらず、どうやら町も出て勝手に獲物を狩る為に森に入って行ったようだ。


 その情報を聞いたスロノ・・・ハーネルが能力を持っていない事を知っているのはスロノだけなのだが、それ故にスロノだけがハーネルの性格から雑魚と呼ばれる獲物を相手にするわけがないと確信している為に、結果、無事にギルドに戻ってくる事は無いだろうと思っており事実その通りになる。


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