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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
33/233

(33)【飛燕】②

「お、おい、どうする?」


「どうするもこうするもねーだろ、ミンジュ!一刻も早くおまけ(スロノ)つきでも構わねーからミランダを加入させるんだよ!」


「俺もそう思うぜ。いや、それしかねーだろ!あの化け物じみた力が必要なんだよ!」


 ギルドマスターから呼ばれてギルドに赴いた結果いつの間にか超問題児となってしまったハーネルを脱退させる事は出来たのだが逆に恨みの対象になってしまった事を悟り、自らの身を守れる実力を持っているミランダをおまけ(スロノ)を引き受けても良いので加入させるべきとの結論に至る【飛燕】の三人。


 手持ちも少なくなっている事もあって、間もなく依頼受注が出来るとも言われている事からギルドでミランダと交渉する為にその存在を探している。


 朝早くから呼ばれて赴いた事が功を奏していつもの最底辺の依頼を受ける為に依頼書を剥しているミランダとおまけのスロノを見つけると、三人は足早で近づいて行く。


「お、おい、ミランダ。ちょっと話がある」


 急に元仲間から声をかけられて不思議そうな顔になるミランダだが、真の能力に目覚めて毎日スロノと行動を共にする事で心に余裕が出来たのか普通に対処する事が出来るようになっている。


「何ですか?今日も毎日の依頼を受けるので忙しいのですが・・・少しだけならば聞きますけれど、10秒以内でお願いしますね?」


 普通に対処すると言っても元仲間に対して無尽蔵に時間をとるつもりも無く、しっかりと10秒とあり得ない程短い時間で制限をかけている。


 言われたミンジュとしては一瞬眉間にしわが寄るが、ミランダには自分達を守護してもらうつもりなのでグッと堪える。


「ミ、ミランダ、良く聞いてくれ。俺達はお前の自己犠牲の精神を無駄にしない為に苦渋の決断でパーティー脱退を受け入れていたが、そろそろ互いに歩み寄っても良い時期に来たんじゃないだろうか?」


 言っている事は意味不明だし普段の口調から大きく逸脱しているので、今度はミランダの眉間にしわが寄る。


「ミランダ、俺からも言いたい事がある。ミンジュの言う通りにお前の自己犠牲の精神を無駄にしないように我慢していたが、もうお前はなにも我慢する必要はない。以前の様に俺達【飛燕】で共に行動するのが互いの為だ」


「そうそう。ミンジュやラドルベの言う通りだ。それに俺バミューからも追加の提案がある。今ミランダは、その・・・スロノと行動を共にしている事位は知っている。そこで、大きな心でスロノも共に【飛燕】の加入を許可してやろうと思っている。どうだ?これ以上ない程に良い提案だろう?」


 余りにも勝手な言い分に呆れてしまい何も反応する事が出来なくなってしまったのだが、不快な三人の【飛燕】の表情を見て我に返ったミランダは過去の仲間達の勝手な言い分を切って捨てる。


「あの、私に何もメリットが無いのでお断りしますね?」


「ばっ!おい!!いつまでも漁りしか出来ねー奴と共に行動する方が良いと言うのかよ?ふざけてんのか?」


 あっという間に被っていた猫を脱ぎ捨てて勝手な言い分で怒鳴り散らすミンジュなのだが、以前のミランダとは違って自信に満ち溢れているので一切動じる事は無く再び切り捨てる。


「全くふざけていませんよ?貴方達に毎日同じ依頼がこなせますか?できないでしょう?先ずは人の為になる仕事をしっかりとこなせるようになってからお話ししましょう。そのような日が来ると良いのですが。では、私達は忙しいのでこれで失礼しますね」


 散々な言われ様だったのだが、スロノはこの隙に自分に<鑑定>を付与して目の前の最もうるさかったミンジュと呼ばれている男を鑑定した結果見た目通りに<剣術>でレベルDをもっており、いっその事この男に<強化>を付与してやろうかとも考えたのだが、元凶とも言えるハーネルに付与するのが最適だと思い直して何もせずにミランダと共に受付に向かい、未だに呆けている【飛燕】三人をよそにギルドから出て依頼を達成しに向かっている。


 いつもの場所に到着すると・・・


「まぐれで獣達を始末できたミランダさんじゃないですか~」


 毎日同じ依頼を受けている事は有名になっているミランダとスロノなので当然二人が向かう場所も知られており、そこで待ち構えていたハーネル。


 完全な逆恨み以外の何物でもないのだが、何時まで経っても自らの能力レベルが上昇しない事に業を煮やして直接的に対決してやろうとこの場に来ていた。


「貴方、随分と調子に乗っているみたいじゃないですか~。今ここで私と正々堂々と勝負しましょう。どちらが上なのかしっかりと教えてあげますよ~。能力レベルだけでは測れない冒険者としての知識と経験を持って、貴方を叩き潰してあげます~」


 勝手な言い分に呆れながらもこの言葉を直接聞いて本当に少しだけ思いとどまっていた部分もきれいさっぱり無くなったスロノは、この場で<強化>Dをハーネルに付与する事にした。


 ハーネルが持っている能力は<弓術>Bであり<強化>Dよりもレベルが高いため、メインの能力となる<弓術>Bは威力が増すが完全に暴走して全く制御できなくなる。


「あの、ハーネルさんですか?こんにちは。俺はスロノと言います。ご存じの通りミランダさんとパーティーを組んで行動しているのですが・・・あなたは<弓術>Bを持っている事で凄く有名ですよね?それほど強大な力をお持ちであれば余計な戦闘をする必要はないのではないですか?」


 軽く諭す体でハーネルの前に移動し、さり気なく帯剣している鞘でハーネルに触れて悪魔の能力である<強化>Dを排出・付与するスロノ。


「<収納>風情が偉そうな事を言わないでもらえるかしら~?」


 回答は想像以上だったので、悪魔の能力を付与した事を全く後悔する必要がなかった事に安堵してミランダの近くに戻るスロノだ。


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