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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
24/234

(24)新たな人物との出会い①

「今日から新生スロノの記念すべき活動初日だ。気合を入れて行くぞ!」

 

 自分を鼓舞する様に独り言を言いながら、冒険者が集うギルドを探しつつ町を散策する。


 朝も過ぎた時間であれば基本的に冒険者はギルドで受けた依頼を達成しに町の外に向かうので、冒険者らしき装いの者達に逆行する形で進めばギルドに到着するだろうと言う推測の元移動した結果難なく目的地に到着する。


「ギルドは・・・中も外も変わりは無いっと」


 町の雰囲気に違いはあるもののギルドの建屋、外観、内装、中の雰囲気は以前の町と何ら変わりがなかったので、依頼受注の方法も同じだろうと依頼書が貼り出されているボードに向かう。


「あの、始めて見る方ですよね?私とパーティーを組みませんか?」


 その途中でスロノに声をかけてきたのは、黒髪をポニーテールにしてやや上目遣い気味にスロノを見つめている槍を手に持つ女性だった。


「え?あの・・・確かに俺は今日からこの町で働こうと思っていますけど、突然勧誘を受けても困ると言いますか、何と言いますか・・・お姉さんも俺の能力を知らないのに勧誘しても後で困りませんか?」


 町に必要とされる能力、冒険者が必要としている能力の把握すら終わっていない、寧ろ始まってすらいない状態で勧誘を受けてしまったスロノなので、本当は少し嬉しかったりするのだが飛びつくような事はしない。


「ギャハハハハ、ついに初見の子供にも声をかけるのかよ?みっともねーぞ、ミランダ!」


 近くにいる男の冒険者が、スロノとスロノに声をかけたミランダと言う女性の会話を聞いてわざとらしく大声で囃し立てており、その声を聞いたギルドにいる冒険者も同じように笑い出す。


 スロノとしてはあまり気分の良い状況ではないので表情が曇るが、何を勘違いしたのか捲し立てていた男が馴れ馴れしくスロノの肩に手を回してこう告げた。


「よぉ、コイツだけはやめておけ。コイツと共に行動すると何時巻き添えを食うかわかったモンじゃねーぞ?人畜無害っぽく槍を持っちゃーいるが、こいつの能力は<魔術>Bだ。あり得ねーレベルだけどよ?全く制御できね~レベルBだから、共に行動している仲間も纏めて攻撃しちまうんだよ!」


 教えてくれている事が事実であれば確かに相当危険な仲間と言う事になるのだが、そうは言ってもこの場の全員が一人の女性に対して侮蔑の視線を向けているのはどうなの?と思わなくもないスロノは、その視線を受付に向ける。


 受け付けの一人と視線が合ったのだが、どうやら目の前の男の説明が正しいのかどうか確認したがっていると思われたようで深く頷かれた。


「で、でも。それだけ力が有るのであれば、一人で活動する事も出来るのではないですか?」


「ブハハハ、お前も言うね~。コイツ一人じゃ獲物なんて見つける事は出来ねーし、術の発動にも時間がかかるからその間に襲われちまうんだよ。だから、体の良い生贄を日々求めているって言う訳だ!」


 スロノは女性に話しかけたつもりなのだが、相変らず馴れ馴れしい男が勝手に答えを返してきた。


 実はこの時には【黄金】と共に行動して得た<鑑定>B、間もなくレベルAに統合できる状態の能力を持っていたので自らに付与して女性を鑑定してみるスロノ。


「あ・・・なるほどね」


 最早独り言が癖になってしまっているのか思わず漏れた一言なのだが、馴れ馴れしい男としては自分の言った言葉に納得したのかと思い笑いながら去って行き、目の前の女性も軽蔑されたと思って下を向いてしまっている。


 どうやら大きな誤解をされてしまったと判断したスロノは、両手で槍を抱えるように持ちながら下を向いている目の前の女性に優しく話しかける。


「あの・・・少しあっちでお話しませんか?俺って今日初めてこの町のギルドに来たので、色々と教えてください!」


 まさかこのような事を言われるとは思っていなかった女性は、バッと顔を上げて少々潤んでいた目でスロノを不思議そうに見つめている。


「さっ、折角ですから一緒に食事でもどうですか?」


 ここはギルドの中なので当然冒険者同士が争いを起こそうものならば資格剥奪は確実で、そもそも馴れ馴れしくも相当失礼な態度をとっていた冒険者の男としても、話し方を含めた行動に一部褒められない所は有れ、何も知らずにパーティーを組んでしまってはスロノに命の危険がある事を親切心から教えていただけなので、その後の判断は自己責任と言う原則の元に今のスロノの行動に何も文句を言う事は無い。

 

「何を食べますか?色々教えて頂きたいので、今日はご馳走させてください」


 鑑定した結果見えたのは能力以外に空腹状態である事を把握してしまったスロノは、お礼と言う体で食事をしてもらう事にしていた。


 遠慮する女性に半ば無理やり食事を勧めながら話をしつつ、鑑定で見えた能力について考えているスロノ。


 もちろん能力も既に把握しており、ミランダと呼ばれていた目の前の小柄な女性はあの男が言っていた通りに<魔術>Bを持っていたのだが、本当に希少とも言える二つ目の能力である<補強>Dも持っていた。


 本来の能力を補強する能力、レベルが上がれば他人に対しても効果がある能力ではあるが、しっかりと制御できなければ威力だけが増大して全く制御できない状態が出来上がる。


 正に今のミランダがその状況に陥っており、彼女は当初<魔術>だけを持っていたのだがいつの間にか<補強>まで出現し、その辺りから魔術の威力は一気に上がるのだが、反比例するように全く制御が出来なくなり、術の発動にも時間が必要になっていた。


 当時の仲間は異常状態に陥った可能性を考慮して高いお金をかけて鑑定しようとしたのだが、この世界で能力を正確に把握できる<鑑定>の高レベル能力持ちも希少で、当然相当な費用が必要になる事からミランダが遠慮し、結局足を引っ張る事を気に病んだ為に脱退してソロで活動を始めていた。


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