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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(224)エルロンの失策

 ある程度今迄の戦闘場所から距離を取らされていたエルロンは、嫌でもリリエルが完全に復活してしまった状況を把握してしまう。


「チッ・・・クソ野郎が!」


 こうなると瀕死のはずのビョーラやリューリュも完全復活してしまうので呪詛を吐くのだが、だからと言って状況が改善するわけでは無いのは理解している。


「スロノ・・・テメー、回復薬でも隠し持っていたかよ?やっぱり最初にテメーを始末しておくんだったぜ!」


 その直後にエルロンの背後一帯に大きな火柱が立ち上る。


「アンタ・・・随分と甚振ってくれたじゃない?実力主義だからその部分だけを見れば私が弱かったで済む所だけど、私にも立場があるのよ?このまますんなりと引き下がるわけにはいかないのは分かるわよね?」


「俺も完全に同意する」


 内容はともあれ普通に会話している様に聞こえなくも無いが、リューリュが行使した直前の火柱同様にビョーラも苛烈な攻撃を仕掛けている。


 一方でエルロンと実力が唯一拮抗しているソルベルドは・・・ここで自らが攻撃を仕掛けてはビョーラ、リリエル、リューリュの邪魔になる可能性が高いと自らを諫めていた。


 視界に愛しいミューの肖像画(・・・)が入っているおかげで冷静さを取り戻したからであり、コレはスロノが過去に世界を守る護符としてかなり有益だと強引に持たされていた品なのだが思わぬところで有効に活用できている。


 はたから見れば命を懸ける戦いの場でスロノが肖像画を掲げている不思議な行動になるのだが、そうでもしなければあれ程ブチ切れてしまったソルベルドであればスロノ自身が渡した武器を使って完全に暴走しかねないと思ったからだ。


 エルロンを意識の外から吹き飛ばして見せた実力なので被害は甚大になると確信したが故のとっさの行動だが、これで冷静になったソルベルドは軽くスロノにお礼の意味を兼ねて手を上げると新たな槍を顕現させる。


 スロノから渡された非常に攻撃能力の高い槍であり、ソルベルドが手にした瞬間にエルロンに対して攻撃を仕掛けていたSランカー三人とその攻撃を難なく捌いていたエルロンも一瞬で意識をソルベルドに向けてしまう。


 それほどまでに圧倒的な実力を周囲に撒き散らしていたからであり、Sランカー三人は状況を把握した結果自分達が攻撃を行うのではなく周囲への被害を防ぐ方向に力を使った方が良いと即座に正しく判断している。


 三人が一気に攻撃していた場所から離脱すると、ソルベルドもその意図を正確に把握して攻撃に対する余波を気にせずに暴れられると笑みを浮かべる。


「ホナ・・・見たくも無い害虫を視界にいれ続けるのも鬱陶しいさかい、ここらでしまいにしよか?」


「・・・何をしやがった?」


 実力があればあるほど敵の力量を把握する力にも長けているので、エルロンはこのままではソルベルドには勝てないと思い打開策を探す時間を稼ぐために問いかけのような言葉を口にしている。


 このままでは敗北は必至だし、立ち位置から最も弱い存在である【黄金】一行に攻撃する前にソルベルドだけではなくSランカー達にも阻害されてしまう。


 更に言えばエルロンと対峙する位置に他の面々全員がいる為に、攻撃の余波を気にする素振りを見せていたソルベルドの行動にも制限がかかっていない状態になっている。


 今の所手詰まりで逃走についても難しいだろうと思っているのだが、だからと言って何もしなければ消滅は確実だと把握している以上は少しでも勝利に向かえる可能性がある方向の動きをするエルロン。


 問いかけに返事が来るとは思っていないのでジリジリと【黄金】達との距離を詰めており、コレは一人でも人質にできれば逃走が可能だと判断したからなのだが・・・ソルベルドであればその程度の動きは直に把握が出来る。


「おっと、それ以上動くんであればワイもこれまでの様に甘い対応では済まなくなるで?雑魚らしく大人しくしときーや!」


 刺突の姿勢を見せているソルベルドなので、これ以上動けば命がないと身をもって把握しているエルロンだが・・・思い返せば一度捨てた命だと捨て身の攻撃を仕掛ける事にした。


 このままソルベルドに攻撃を仕掛けては何も得るものがなく完全に敗北する可能性が極めて高いと冷静に判断できている部分もあり、闇ギルドに出していた指令・・・数週間後にSランカーや【黄金】、テョレ町への武力や経済的な攻撃が少しでも実を結ぶように最も戦力維持に有用な聖母リリエルを始末する事にした。


 もちろん手駒となっている貴族を使った捨て身の攻撃も行わせる予定なのだが、エルロンの脅威を長期間間近に感じていない事もあってエルロンが消息不明となった場合には裏切られる可能性が高い事は把握している。


「リリエル!テメーだけは道連れだぜ!!」


 一気に加速してリリエルに渾身の一撃を加えようとするエルロンだが、流石に距離が開いていた為にリリエルは防御姿勢をしっかりと構築できている。


 今の実力で行けば防御姿勢があろうがなかろうがダメージを負う事は間違いないが、即死は間違いなく免れるのでスロノがいる以上問題ないと思っているリリエル。


 当然周囲の面々も指をくわえて見ている訳も無く、残念ながら【黄金】では何も出来ないが他のソルベルド以外のSランカーはエルロンに対して苛烈な攻撃を仕掛けている。


 攻撃を躱す事は余裕なのだがその分移動距離が必要になり攻撃着弾の時間が予定よりも必要になってしまい、僅かな時間によってソルベルドからの邪魔が入る可能性が高いと知っているので多少の怪我は無視して突き進んでいるエルロン。


 その視界にはリリエルしか入っておらず、体感であと一息で一撃を加えられると確信した瞬間に意識が飛んでしまう。


「・・・ソルベルドさん、ありがとうございます。正直に言うと今の私では完全にエルロンの攻撃を防ぐことはできませんので助かりました」


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