表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
234/237

(223)大暴風の誤算

 本来の意味は異なっているが暴風エルロンの名の通りにこれまでにない程の暴風を撒き散らす攻撃だが、過去とは異なって<補強>により過剰に強化されている力まで使いこなせている動きの為に暴風の威力はまったく比較にならない程になっている。


 余波だけで大きなダメージを受けているSランカー・・・特に意識の無い聖母リリエルは致命傷になりかねないのだが、そこはスロノがなんとか<魔術>により暴風を相殺しているのでかろうじて問題は無い。


 他のSランカーも障害物の影に移動する事によって何とか事なきを得ているのだが、このまま大暴風が吹き荒れてしまうと現状維持も難しくなる。


 スロノは一先ずリリエルを完全に回復させる事で熟練の<回復>を行える状態にすれば、大きな負傷を与えられてしまい動きがままならないビョーラやリューリュを遠距離から復活させる事が出来ると考えていた。


 今のスロノではそこまでの技術がなく難しいのでリリエル頼みになるのだが、予想以上に余波が激しい事から<魔術>で相殺せざるを得ず・・・<回復>を行う余裕は一切なくなってしまった。


 スロノは何となく程度の理解だがソルベルドが戦場を移動する様に意識している事は分かるが、過去に敗北を知って冷静に戦いを進める意識が芽生えたエルロンもスロノが理解できる程度の事は既に把握している為に上手く誘導できていない。


「はっ・・・姑息なクソベルド。甘ちゃんの考えそうなことは分かるぜ?周辺に屯している雑魚を庇いてーんだよな?そうはいくかよ!!テメーも纏めて始末してやるからよぉ?楽しみしておけや!!」


 ソルベルドは何度も攻撃を往なし逆に攻撃し・・・を行っているのでエルロンの力量をかなり正確に把握しつつあり、この状況で戦場の移動は難しいと悟る。


 だからと言ってエルロンの挑発に屈するわけにはいかないし、体感では互角の力量である以上はスロノから渡されている武器を使えば一気に優位に傾くと理解した。


 とは言え一度も使用した事の無い武器の為に周囲への被害が想定できず、負傷者が近接している以上は無暗に使用できない為に現時点では宝の持ち腐れになっている。


「雑魚程良く吠えるのは今も昔も変わらんのやな。威嚇して自分を強く見せるしかできない哀れな存在なんやな」


 二人は戦闘をしながらも相手の話しをしっかりと把握できているのだが、負傷しているSランカー、防御に力を使っているスロノ、そもそも力が一段落ちているのでこちらも防御に全神経を集中している【黄金】では言葉が雑音にしか聞こえていない。


 その間にも攻撃の余波だけではなく明らかに周囲の存在を狙った攻撃が増え始めており、そちらの防御にも手を回しているソルベルドは反撃の糸口がつかめないでいる。


 仮に・・・スロノによって一時的とはいえ<槍術>がSSに引き上げられていなければ、周囲も纏めて瞬殺だった可能性が極めて高い。


 共に体力も技術も略同格なのだが周囲を気にせずに暴れまわれるエルロンと守る者がある為に気ままに全力で攻撃できないソルベルドでは優位差は明らかで、圧倒的にソルベルドの攻撃回数が減少する。


「テメーから受けた屈辱、纏めて返してやるぜ?何だったか??ナントカとか言う獣人に腑抜けにされているんだったよな?そいつもテメーの前で甚振ってやるからよ?」


 勝利が見えてきたと感じたエルロンは過去の屈辱を果たす為に・・・より復讐を楽しむために今後の行動を明確に口にしてソルベルドを焦らそうと心理戦まで加えているのだが・・・これは全くの逆効果になってしまう。


「何やて??」


 ソルベルドの底冷えするような声が聞こえた直後、何故か吹き飛ばされて距離が開いてしまう。


「ワイの至宝・・・世界の至宝をどうするって?教えてもらおうか!クソエルロン!!」


 完全にブチ切れてしまい口調も変化してしまうが、同時に・・・こうなるとミューと敵以外には配慮できない状態になる。


 一気に手に持っているギルド支給の槍をエルロンに投げつけるのだが、エルロンとしては距離が在る分多少の余裕をもって避ける事が出来ている。


「はっ!<槍術>が唯一の拠り所のくせに最も重要な武器を手放すのかよ。っと、コレは手元に戻るんだったな。はははは、これでテメーは丸腰だ!」


 自らもギルド支給の武器については詳しく知っているので投げて手元を離れても一旦遠距離から収納してしまえば再び手元に戻す事が出来ると知っているので、全力でソルベルドが長年愛用していた槍を破壊する。


 こうなるとエルロンの言っていた通りに最も有効な武器を手放した状態になるので、思った以上に煽りに効果があったと笑みさえ浮かべているエルロン。


「今更何をしてもテメー等が助かる術はねーぜ?」


 この僅かな時間で逆転の一手となり得るのはリリエルによる回復だと思っているので、未だにスロノの近くで意識がないままではあるが一気に始末しようと近接する。


――ガガッ・・・ドン――


「な!このクソベルド!何をしやがった?」


 今の自分を吹き飛ばせるのはソルベルド以外にはあり得ないと思っているので誰が何をしたのかは不明ながらも吹き飛ばされた事実だけを持ってこのように告げているエルロンだが、返事を待つ前に再び吹き飛ばされる。


 だからと言って大きなダメージを受けているのかと言えばそのような事は無く、長年の経験からか無意識下で敵の攻撃によるダメージを受けない様に反射的に動けている。


 スロノとしては思いがけない所から時間を稼いでもらえたので<魔術>による暴風の相殺を瞬時に停止して一気にリリエルを回復させる。


「う・・・ん。あぁ、助かりましたスロノさん。今の状況も理解しましたので、以降は私に対する防御は不要です」


 流石はSランカーであり、意識を戻した瞬間に瞬時に状況を把握してみせた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ