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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(23)その後のスロノ

うっ、もう仕事が目の前に・・・

 ギルドマスターから呼ばれた部屋での話を終えて、再びギルドの食堂に戻っている【黄金】一行とスロノ。


 流石に相当な経験をしているのか、スロノの表情を見ただけで何を考えているのかある程度理解したドロデス。


「その表情だと、決めたみてーだな」


「はい。今迄、本当に有難うございました。俺、能力は<収納>で戦闘系ではありませんけど、皆さんと共に依頼を受ける事が出来て本当に良い経験になりました。俺も頑張りますので、皆さんも気を付けて!」


「おう。ありがとよ。俺達は明日一日準備に充てて、明後日には出立するつもりだ。ギルマスの指名依頼であれば大概状況はひっ迫しているからな。っと、そうだ。この周辺の環境や依頼の内容はもう凡そ把握しただろう?どうせなら独り立ちついでに他の場所に拠点を移して活動したらどうだ?若い内にいつまでも一か所で燻っちゃー、でかくなれねーからな!」


 スロノとしては再び一人で活動する事になるので、ぼんやりとこの町でいつもの収集・運搬依頼をこなす日常に戻るのかと漠然と考えていたのだが、ドロデスの提言には納得する部分があったのか全く悩む事なくすんなりと受け入れる。


「そうですね。そうします!ありがとうございました!」


「その方が良いぜ。だけどよ?あの時のクズみてーな連中に騙されねーように、十分に気をつけろよ?」


 その後は互いに別れを惜しむかのように飲み明かし・・・と言ってもスロノはまだ若いので飲めないのだが、冒険者らしく楽しい一時を過ごしてさっぱりと別れた。


 翌朝、何時もの時間にギルドに来たスロノだが、当然のように【黄金】一行はこの場にはいないので受付に向かい別れの挨拶をする。


「あの、実は俺もこの町を出て他の町で色々な経験をしようと決めました。昨日ドロデスさん達ともその話をして、そうしたいと思ったのです」


「・・・そうですか。寂しくなりますけれど、その意志は尊重しますよ。でも話をしたのはドロデスさんだけで、他の二人は何も話さずに頷いていただけじゃないですか?」


 長くこの町で受付をしているからか【黄金】パーティーの事をよく理解している受付の軽い冗談に和み、決心が揺らがない内に準備してこの町を出ようと決める。


「じゃあ、今まで本当にありがとうございました。納品場の担当の方、ギルドマスターにもよろしくお伝えください」


 本当はすぐ隣の建屋にいつもお世話になった担当がいるのだが、決心が鈍りそうなので礼を失するとは思いつつも会わずに去る事を決めた。


 町から町への移動手段としては戦力がない人々は護衛付きの馬車を使うのが標準で、スロノもいくら数多くの能力を収納しているとは言えこの町では能力が<収納>Eだと公になっている以上は怪しまれる事を避けるために乗合馬車に乗っている。


 費用に関してはギルドからの補償を得ていた事やや【黄金】パーティーと共に活動し、出費がほとんどない状態であったので十分以上に収納できているので何も問題はない。


 移動中に獣や魔獣が襲い掛かる事も有ったようだが、護衛の者達は慣れているのかそもそも街道故に普段から冒険者が危険な獣達を駆除しているからか、襲われていると認識する間もなく新たな町に到着する事が出来ていた。


「ここが、新しい仕事場・・・か」


 取りあえず宿で凝り固まった体を解しているのだが、ギルドでどのような立場で依頼を受けるのかで悩んでいる。


 鑑定されない限り能力が明らかになる事なはいので戦闘系の能力があると宣言の上で活動しても良いのだが、スロノを知っている人物がいた場合には大きな問題に発展しかねない。


 能力が<収納>なのに例えば<魔術>を行使している所を目撃された際の言い訳としては魔道具があるのだが、そもそも高い能力を与えてくれる道具はとてつもなく希少であり当然高価なので、スロノが持っている時点で疑惑の対象になるし道具を奪おうとする連中の的になる可能性が高い。


「う~ん、そうなると・・・折角環境を大きく変えたのに今までと変わらず?」


 非常に悩んだ結果、羨ましがられない程度の力であるレベルD相当の力を使う範囲で冒険者活動を行う事にし、仮に自分を知る者に見つかったとしてもレベルD程度の力を与えてくれる道具であれば一般市場になくは無いので言い訳もできると考える。


「決まり・・・だな。となると、どんな能力を使う事にするのが良いのか。仮に【黄金】パーティーの様に仲間と共に行動する事になるのであれば、しっかりと役に立つ能力を事前に伝えておかなくてはならないからな」


 自らの能力を積極的に明らかにするのは愚の骨頂ではあるがパーティーを組む際の開示は例外とされており、互いを補完するのに何が不足しているのかを把握しなくてはならないから当たり前なのだが、当初の開示と実際に必要とされている能力が異なった際には面倒な事になるので慎重に能力を選ぶスロノ。


「ダメだ。実際にこの町で活動する際に何を求められているのかわからんのに、この場でグダグダ考えても出る訳ないよな」


 ひょっとしたら流石にレベルEではだめだが、レベルは明らかにせずにある程度の実力を示す事で素の能力である<収納>を求めてくれる仲間が出来る可能性もなくはないので、結局は現場を確認してから決める事にしたスロノは初の遠出とあって疲れた体を休める事にして眠りにつく。


「ふぁ~、まさかここまで起きられないとは思っていなかった。本当に良く寝たな。体は正直だと言う事か?」


 窓から差し込む光から間違いなくいつも活動していた朝の時間帯は過ぎ去っている事に気が付いているスロノだが、自由業の為に焦るような事は無くベッドから立ち上がって軽く体を解したうえで着替え、遅めの朝食を食べてギルドに向かう為に部屋から出て行く。


 【黄金】と共に行動していた時はリーダーのドロデスと会話をして他の二人は頷くだけであったのだがそれでも楽しく活動する事が出来ていたため、この辺りから一人の行動を寂しく思っていたスロノは独り言を言い始めるようになっていた。


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