表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
217/235

(206)鑑定へ②

 通常は貴族、それも上位貴族に対しては遜るのが一般的なのだが、ドロデス達【黄金】にしてみれば敬う価値のない連中に下げる頭は一切持ち合わせていない。


 そもそも貴族と係わるのが嫌で仕方がないドロデス達なのだが、そこにエルロンが加わって今回の強制鑑定が行われているので多少攻撃的になるのは当然だ。


 一方であり得ない暴言を吐かれたと思っているテヘラン侯爵は、ドロデスの発した言葉を理解できずに動きが止まる。


 かつてこれほどの暴言とも言える言葉を耳にした事は無く、また高位冒険者と言っても所詮は平民から命令口調で話されたのだから脳が理解するのを拒否していたのかもしれない。


「だそうだぞ、テヘラン侯爵。無理を言って突然来てもらっているのだ。急ぐのは当然ではないのか?」


 そこにサミット国王が横やりを入れた事で漸くドロデスが何を言ったのか・・・何を命令してきたのかを理解して厳しい視線になりつつも、立ち位置的には国王の臣下なので反論できずにいる。


 貴族としてこの場にいるエルロンも同様で、本来であれば今ここで【黄金】一行を容赦なくすり潰してやりたい気持ちになっているのだが、流石に数度敗戦を経験したからか危機察知能力が上昇しているようでスロノから得体の知れない雰囲気を感じ取り動くに動けないでいた。


 仮に動ける状態だったとしても、これからも暫くは王国シャハの男爵と言う立ち位置を堅持しなくてはならないので動くつもりはなかった。


 権力ではなく本当に自らの力がある存在であればスロノを含む【黄金】に対して暴言や暴挙を行えるわけもないのだが、今回エルロンが火付け役になり実際に動いたテヘラン侯爵も権力はあるが自らの戦闘能力は極めて低いので危険度が分からない。


 同様に・・・過去スロノとギルドで対峙してコテンパンにやられ、更にはユリード子爵家でのパーティーで絡んだ二人の伯爵家子息も実力はないので、家の権力をかさに口を挟んでくる。


 常識も持ち合わせていない存在なので、サミット国王の前でも暴言を吐けるのはある意味強心臓なのかもしれない。


「おい!そこの筋肉ダルマ!お前ごときが何を偉そうにしているんだ!テヘラン様に対するその暴言、許せるものではないぞ!」


「全くだ。そもそも俺達は過去のお前等の態度を許していないからな。今後テョレ町だけではなく王国シャハでも真面に活動できると思うなよ?」


 言いたい放題だがこの場にいる貴族の中でこの二人の家よりも格上はテヘラン侯爵しかおらず、二人の後ろには爵位は低いながらも戦力としては最強と言って良い暴風エルロンが存在している事は周知の事実である事から全員が黙っている・・・唯一の例外を除き。


「ブラコッテ、ムーラン!その方等、何時発言して良いと言った?そもそも呼ばれてもいないお前等が何故ここにいる?」


 唯一立場が上で敵勢となる国王サミットが、ここぞとばかりに追撃する。


「それは今後の国家繁栄の一助となる為、経験を積ませるべく私が連れてまいりました」


 誰がどう見ても二人揃ってそのような殊勝な事が出来る人材ではないし取ってつけた言い訳だと理解できるのだが、発言者がテヘラン侯爵なのでこれ以上否定しては時間がかかるだけだと苦言を呈した後に矛を収める国王サミット。


「かなり自己主張が激しいな。もう少し貴族として、いや、人として成長する方が先だろう。では【黄金】一行も時間がないとの事なので早速鑑定を始めるが良い」


 本来は国家一丸となって苦難に立ち向かい力を合わせるべき存在が貴族なのだが・・・半数近い面々が明らかに国王サミットと相反する立ち位置にいるのには明確な理由があり、国王サミットの妻、王妃が獣人族である事が上げられる。


 遥か昔から刷り込みの様に互いが互いを憎んでいるような形になる人族と獣人族だが、一旦はソルベルドの影響もあって露骨な態度は鳴りを潜めていた所に味方として同格の存在であるエルロンが現れたのだから、再び攻撃的な意識が芽生えていた。


 更に降ってわいたように、同じく獣人族や獣人国家と交流していると明らかになっている【黄金】にも楔を打てるチャンスなので、これ幸いと乗っかった貴族が多数いたのが現実だ。


 流石にそこまでは理解できないままこの場に来ている【黄金】は、さっさと必要な鑑定を実施して王城から去ろうと思っている。


「この水晶に手を当てるが良い」


 あくまで自らが格上だと再認識させるように告げたテヘラン侯爵は、持ち込まれた水晶を指し示して【黄金】に向かって指示をする。


 特に誰かを指定したわけではないが、全員が鑑定の対象になっているので順番はどうでも良いと思っている。


「きっと俺が色々疑われている様なので、俺が一番手に行きますよ」


 そこにスロノが名乗りを上げ、直近で二回目の経験なので慣れた手つきで水晶に触れる。


 本来水晶の中に能力が投射されるのだがココでは敢えてその表示がこの場の全員に見えるように細工されていた為、水晶から壁に向かって能力が大々的に投射された。


「想像はしていたがよ?プライバシーも冒険者の禁忌もあったもんじゃねーな。こいつ等揃いも揃ってクソだぜ?」


 その中にはユリード子爵を含めた国王サミット側の人間は入っていないのだが、逆に言えばテヘラン侯爵を筆頭に半数近くが対象になっている。


 大々的に表示された能力は、<魔術>Sと<収納>E.。


 正直スロノとしては予想に反して能力が拡大表示されたために<収納>のレベルが明確になってしまうと一瞬焦ったのだが、この程度の拡大ではxの文字が真面に見える事は無かったので安堵している。


 だが・・・この僅かな動揺をエルロンが見逃すはずがない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ