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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(204)国家からの命令

「成程。では手始めに【黄金】一行の能力を全て開示させなければ、国家反逆の可能性があると主張するのだな?」


「その通りです、テヘラン侯。まぁ、正直な所自分がこのような事を言うのもどうかと思われるかもしれませんが、ギルドを野放しにしては良い事はありません」


 自ら冒険者として活動していた際に相当暴れた挙句に除名までされているのは公知になっている為、真実を話す事で少しでも信頼度を上げておくべきとの思惑があるエルロン。


「確かに私もギルドの手綱を全く握れていないこの現状は問題だと思っていた。ギルドが管理している物資は生活の一部になっていると言っても過言ではない。なれば当然貴族として管理し、応分の報酬を手に入れるべきだ」


 ギルド反対派の目的はそれぞれなのだが、ラルドが集めていた情報によれば目の前のテヘラン侯爵が反対派の中で最も爵位の高い人物であると理解したうえで出たくもないパーティーに出て声をかけていた。


 実際にはギルドが存在する場所を統括する存在に対して応分の費用が支払われているのだが、直接的にテヘラン侯爵の手に入っていない所が不満だと勝手な持論を述べている。


 テヘラン侯爵のギルドに対する否定的な考えの理由を初めて耳にしたのだが、エルロンにとって理由はどうでも良いので表情に変化はない。


 実はテヘラン侯爵・・・この会話の中でエルロンの表情の変化を注視しており、表情の変化である程度相手の思惑を読み取る術に長けていたのだが、理由はどうあれ自らの発言に対して全く表情に変化がないのでエルロンの本心が読み取れずに僅かに困惑する。


「互いに利害が一致しているので、テヘラン侯からサミット陛下(国王)に進言されては如何でしょうか?」


 その間にもエルロンは目的を果たす為に早く行動に移すべく、具体的な内容を提示している。


「む・・・確かに。謀反の可能性があるのであれば国家としては非常に由々しき問題だからな。早速明日にでも進言するとしよう」


 闇ギルドマスターとして君臨しておりSランカーとして得た情報もある事から王国シャハの国王サミットがこの提言を受け入れる可能性は低いと知っているエルロンだが、一方で多数の貴族から同じような声が聞こえれば無視できないのも知っているので同じように無数の貴族と接触している。


 後日・・・


「【黄金】の面々はちょっと来てくれ」


 ギルドマスターのシャールが少々疲れたような表情で【黄金】を呼び出している。


「あー、シャールのその表情で何が起きたのかは理解したぜ?あのクソエルロンが俺達の能力開示を主張したんだろ?で、ギルドとしても断れねー状態になった・・・違うか?」


 執務室のソファーに座っているギルドマスターのシャールと、対面の位置に座っている【黄金】。


「ドロデスの予想通りだ。まぁ、予想するまでも無く起きる事だと分かっていたとは思うが、エルロンは貴族連中を動かしてサミット陛下に色々と文句を言ったらしい」


「だろうな。実はよ?この前ミランダとスロノが参加してクソ野郎に会ったパーティーがあっただろう?」


「確か、ユリード子爵のパーティーだったな?」


「そうだ。俺はその場にいなかったが、エルロンの態度から思う所があったらしくユリード子爵が俺達に情報を教えてくれていたんだ。何でも俺達が本来Sランクに近い能力を持っているが秘匿し、国家転覆を狙っていると騒いだらしいぜ?」


 直近でエルロンと相対する事になったパーティーの主催者であるユリード子爵は現役Sランカーを含む【黄金】の方が信頼に値すると思い、エルロン達に関する情報を耳にした段階でパーティーリーダーのドロデスに伝えていた。


 エルロンの本来の素行を良く知る貴族、更に実父が直近で原因不明で死亡しているとなれば信頼に値しないのは当然で、正しい方向に導くか不可能であれば少しでも対抗すべく動くのが貴族であるはずだが、欲に目が眩んでいるテヘラン侯爵一行には該当しなかった。


 ユリード子爵は自ら積極的に情報を得るために動けたわけではなく、やはり相手は強大な力を持っていると知っている為に何もせずに得た情報を流すだけだったのだが、それだけでも今の子爵の立場であれば最大限の努力なのだろう。


 ギルドマスターの執務室にいる面々も正直貴族関連の話しが全く理解できないスロノ以外はドロデスの言葉を聞いただけでユリード子爵の行動に敬意を表しており、少し説明を受けたスロノも理解する事が出来た。


「で、サミット陛下は相当無駄な作業だと主張されたらしいが、多勢に無勢で押し切られてしまった様だ。どうする?」


 シャールが聞いているのはこのまま素直に鑑定を受けるのか、この国の貴族の影響を全く受けない異国に拠点を移すのか、完全に無視をするのか・・・の三通りになる。


 正直な所スロノ以外は自らの能力はもはや公になっているも同然だと思っているので今更鑑定を受けようが全く問題はないのだが・・・Sランカーとして<魔術>の能力が公知になり、更にはあまり実用的なレベルに無い<収納>の能力が公知になっているスロノに対してはその限りではないと、スロノ以外の全員の視線が一点に集中する。


 ドロデス達はスロノが具体的にどのような能力を持っているのか問いかけるような事は一切しないのだが、少なくとも<操術>を高いレベルで持ち他の能力も持っていると確信している為に鑑定されれば問題になる可能性が高いと心配になっていた。


 その心配の視線を全く気にせず、スロノは平然とこう告げた。


「一番問題ない対処方法は鑑定を受ける事ですよね?一度受けたので今更感はありますけど、皆さんがそれで良ければ俺もそうしますし他の方法が良ければそれに従いますよ?」


「・・・スロノ。仮に再鑑定でも本当に大丈夫か?恐らくエルロンもその場にいるぞ?」


 あまりにもあっけらかんとしているので一応念を押しているドロデスなのだがスロノの返事は変わらなかった為に、最も軋轢が起きない鑑定を受けて能力を開示する方向に舵を切った【黄金】だ。


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