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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(196)テョレ町

 騒動も取りあえず一段落してテョレ町に戻って来た【黄金】一行は、ギルドマスターのシャールに顔だけ見せると解散になる。


 ドロデス、ジャレード、オウビの三人は精神的にも肉体的にも疲れたのかさっさと宿に向かっており、ギルドの食堂にはミランダとスロノがいる。


「そう言えばミランダさん。俺、ふと思ったのですけど、<槍術>を持っている人って一癖も二癖もありませんか?」


 今回の事件で初めて会ったサルーンもそうだし、少し前からソルベルドの態度が良い方向に一変したのだが余りにも強烈だったので、ひょっとしたら自分の知らない知識の中で<槍術>を持つ事による何らかの影響があるのかもしれないと考えたスロノ。


「そうね。実際に見たのは二人、ソルベルドさんとサルーンさんだけど、二人共強烈なのは間違いないわね」


 スロノ同様<槍術>を持っている二人を嫌でも知っているミランダも、それ以外の面々については普通能力を開示しないので誰が<槍術>を持っているのかなど知る訳も無いながら、その意見が正しいのかもしれないと思い始める。


「ですよね?でもミランダさん。俺と初めて会った時、ミランダさんも槍を手にしていたのを忘れていませんか?」


「ちょ、ちょっとスロノ君?私は真面目だと思うわよ。弟子夫妻を追いかける人とか、常に惚気まくっている人とは違う・・・わよね?」


 スロノに指摘され、確かにスロノと出会った時には<補強>を持っていた為に本来の能力である<魔術>が行使できずに、槍を抱えていた事を思い出したミランダ。


 槍を抱えていただけで<槍術>が発現したわけではないのだが、ひょっとしたら自分も怪しい分類に含まれるのかもしれないと少々自身が無くなっている。


「あはははは。大丈夫ですよ、ミランダさん。でも、ひょっとしたら能力による影響で行動が変化する人はいるのかもしれませんよ?」


 日本人としての知識が微かにあるスロノなので、性格診断や占いと言った言葉が町中にも溢れていたと思い出し、この世界においても能力による占いや性格診断が出来るのかもしれないと考えた。


 もちろん真剣に検討するのではなく笑い話程度の考えなのだが、ミランダは何かを真剣に考えている。


「それはそうかもしれないわね。豪快な性格になるのは身体強化系統・・・それも重厚な武器を使う能力が当たるのかもしれないわ。それに、リリエルさんも能力と性格が本当にあっていると思うし、スロノ君のその考えはとっても面白いわね」


 豪快な性格については恐らくドロデスの事を言っており、リリエルに至ってはスロノもその通りだと思い否定する要素が何一つないので、何だか楽しくなり始める。


「えっと、じゃあ能力って色々あるじゃないですか?それぞれに考えられる性格を言ってみませんか?」


「面白いわね!いいわよ!!私からで良いかしら?」


 結構二人で盛り上がって勝手な話をしているのだが、Sランカーに名乗りを上げたスロノやAランカーのミランダに対して文句を言ったり盗み聞きをしたりするような強者はこのギルドには存在しない。


 但し・・・この二人に対して特殊な思いを抱いている人物は未だテョレ町で活動しているので、暫く不在にしていたスロノとミランダが戻ったのを確認すると接触を図る。


「あの・・・スロノ君?」


 エルロンに拉致されてギルドに救い出され、エルロンの脅威は暫定的ではあるが今のところは無くなったと各ギルドマスターに本部から通達があったので、【飛燕】の一員として活動しているリノ。


 その後ろにはミランダを何とも言えない表情で見ている【飛燕】のミンジュ、ラドルベ、バリュー。


「あぁ、こんにちは。どうしましたか?」


 完全に【黄金】の一員として活動してSランカーでもあるスロノは、すっかり余裕を取り戻してリノと直接相対しても心揺さぶられる事はない。


「私、本当にどうかしていたの。これから変わった私を見て欲しいと思って、思い切って声をかけさせてもらったの」


 これが本心からの言葉なのは間違いないがスロノにとってみれば今更だし、その後ろでリノがスロノに取り入る事が出来れば【黄金】とSランカーが後ろ盾になってくれる可能性が高いと思っている【飛燕】男性陣の視線を明確に感じ取り、不快に感じている。


「俺は忙しいので、態々見るような事はしないしできないですね。でも、変わったのは良い事だと思いますよ?頑張ってください」


 スロノの言葉遣いは以前とは異なって丁寧な話し方になっており、これが今の標準なのだが、リノにとってみれば相当壁があり内容も要求を完全に無視している形なのでもう目はないと感じたのか、ぎゅっと目を瞑った直後に謝罪する。


「スロノ君、本当にごめんなさい。それと、ありがとう。私は私で頑張るから、スロノ君も頑張ってね?」


「ありがとうございます」


 これでも態度に変化が無いので、リノは完全に諦める事が出来たのだが男性陣は違う。


「ちょ、ちょっと待て。ミランダ!俺達の状況は分かっているだろう?もう首が回らないんだよ。何とか昔のよしみで、少しで良いから融通してくれないか?」


 依頼未達成による借金が未だ返済できていないので、なりふり構っていられないミンジュ達。


「ミンジュさん。行きましょう!私達は必死に頑張るしかありませんから!」


 それを抑えたのは予想外にも借金には一切関与していないリノだったので、スロノは一瞬だけ表情に変化が出てしまうが、だからと言って手を差し伸べる事はしなかった。


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