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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(195)対応③

 スロノとソルベルド、ミューが真剣に隅で話をしているのは理解しているこの場の面々だが、敢えて話を聞かない様に自分達の話に集中している配慮を見せている。


 高いレベルの能力を持っているので、聞こうと思えば聞こえてしまうのだ。


「とりあえず、申し訳ありませんが少し時間をください」


「わかったで」


「宜しくお願いします、スロノ様」


 信頼しているとは言っても露骨に目の前で能力を収納するのは憚られたスロノなので、敢えて何かしらの準備が必要だと匂わせてこの場を濁す。


 正直ソルベルドは能力を使えない状況に陥っているので、スロノが全力で気配を消して手始めに<槍術>S一つを収納し、その後に<補強>Eを収納すれば良いと思っている。


 能力が使えないからと言って油断しては、体に染みついた特殊能力に依存しない力によって気配を察知されてしまう可能性があるのかもしれない。


 サルーンに能力を付与する際もレベルがSSでなければ今の自分の全力を出せば気が付かれる事はないだろうと判断し、夜も更けた頃に実行予定だが、即日にできなかったのには別の理由があった。


 夜も更けて各自が部屋に戻り休むのだが、どう考えても全員が眠っている頃を見計らい気配を完全に消してソルベルドの部屋に移動したスロノは高い能力を行使中なので嫌でも中の気配を察知してしまい、夫婦仲睦しい状態の気配を感じて一気に撤収していた。


「も~、緊張感のかけらも無い!って、安堵したからなのか?だとすると、明日に余計な口撃を受ける可能性があるかもしれない?気を付けないとな」


 一人結論を出しつつ、正直疲れたのでこれ以上起きているのも苦痛だった為、差し当たり後日に対応する事にして就寝した。


 実はその後数日同じ状況に陥り恥ずかしいやら何とも言えない気持ちになりつつも、必死で毎日のようにソルベルド夫妻の部屋に向かい・・・漸くその日を迎える。


 流石に扉を開ける時には緊張したのだがそこさえ乗り切れば後は楽なもので、難なく<槍術>Sと<補強>Eを収納すると、サルーンに<槍術>Sだけを戻して自室に戻る。


「ふ~、正直エルロンと対峙する時よりも緊張したかもしれないな。これで喜ばれると、いよいよ口撃が始まる可能性が高い。注意が必要だ」


 ここ数日はソルベルド夫妻からの惚気攻撃が無かったのだが、懸案事項が解決したと理解すれば一気にマグマが噴火するかもしれないと警戒を露わにするスロノ。


 翌朝・・・気落ちしているのか体が痛むのかは不明だが、中々サルーンが朝食時に現れない事が続いていた食堂に、笑顔のサルーンが現れる。


 動きも軽快で誰がどう見ても能力を取り戻した事は分かるのだが、全員が高い確率でスロノが何かしたと・・・サルーン本人すらもそう理解しつつも、“良かったな”としか思わずに深く詮索する事はない。


「ソルベルドさん。例の件ですが、無事に完了しましたよ。ソルベルドさんの余計な能力についてもとある方法で消滅させる事に成功していますから、安心して下さい」


 具体的な方法や現状について誰もが説明を求める事なく朝食は終了し、他の面々とは異なって気配からサルーンやソルベルドも能力が使えるようになっていると理解する事は出来ない総代シュライバも、場の雰囲気から事が全て上手く行ったのだと把握しながらもそこには触れずにいる。


「突然だが、例の件からこれだけ時間が経過してエルロン側からの動きが無いので、本部に留まっている必要はないだろう?」


 サルーンの面倒は責任を持って本部で見ようと思っていたのだが、どう考えても能力を取り戻したように見える事から解散を宣言するシュライバ。


 ソルベルドも憂いが無くなり、【黄金】も言われた通りにこの場に留まる必要性を感じない事から、解散する事になった。


「今後エルロンに関して何らかの動きを掴んだら、情報は共有する。定期的に近場のギルドに顔を出しておいてくれ」


「ホナ、ワイ達はちょっと遠回りしながら王国バルドに戻るさかい。今回の件の報告もあるんでな。落ち着いたらテョレ町にも行くよって、構ったってや?」


「おぅ。待ってるぜ!だがよ・・・お前等の惚気話はもう腹一杯だからな?そこんとこは絶対に忘れるなよ?」


 最も被害に遭っていたドロデスがソルベルドと固い握手をし、その後はあっさりとした別れで、スロノには深く頭を下げた後にミューを優しく抱えて消えて行ったソルベルド。


「それじゃぁ、アタシも行くかねぇ」


「サルーンさん、何処に行かれるのですか?」


 すぐにサルーンも出立すると言うので、ミランダが何の気なしに目的地を問いかける。


「それは決まっているねぇ。バカ弟子の観察(・・)だねぇ。ある程度プライバシーは配慮するけど、自由に動ける内に孫を抱きたいからねぇ。行動を把握しておく必要があるねぇ」


 ソルベルドとサルーンに血の繋がりはないのだが、未だ見ぬミューとの子供を孫と認定し可愛がりたいので、以前ソルベルドに言われた通りにストーカーになりつつある。


「そ、それは良かったです。えっと、程々に・・・」


 ソルベルドとサルーンの信頼関係を目の当たりにしたので、想像以上の悪い方向には行かないだろうと願いながらサルーンを見送る。


「おい、スロノ。今回は色々(・・)と大変だったな。俺達ももっと経験を積んで行くからよ?これからもよろしく頼むぜ!」


 どう考えても自分達よりも格上・・・そもそもSランカーに成っているので当然だが、過去に面倒を見た人物に完全に抜かれている事は全く気にならず、今度とも行動を共にしようと告げるドロデスと、改めて信頼できる人物達と行動を共に出来ると喜んでいるスロノも本部を後にした。


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