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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
204/235

(193)対応①

 数日はギルド本部で心と体を癒した一行だが、Sランカー三人は指名依頼がその短い間にも溜まっているので、本部から離脱する。


「ホンマ助かったで。そやけど、あのクソ野郎(エルロン)がまだ生きとるんは間違いないさかい、気ぃー付けてや。なんかあったらワイにも連絡が欲しいねん。直ぐに助けに行ったるわ」


 本当は能力を使えない状況に陥っており、<槍術>SSが更に<補強>Eで強化されているので、能力を使用した際には制御できないながらも異常な強者独特の雰囲気は消しきれないソルベルド。


 命を懸けて助力をしてくれた存在に対して命を懸けて報いるのは当然と考えており、ミューも納得している。


 もちろん何かあって向かう際には今回の様に二人で共に散る事を大前提としているのだが、その覚悟をおくびにも出さずにお礼を告げているソルベルド。


 Sランカー三人も、エルロンが脅威なのは間違いないながらも対処できる可能性が高いと思っており、過剰に警戒をしている様子はない。


 スロノは一時<操術>Sでエルロンの情報を得ようとしたのだが、流石に闇ギルド本部は生前ラルドが各種魔道具を配備していたおかげで情報を抜かれる事無く、エルロンの情報は全く手に入らなかった。


「バカ弟子。何時までここに残っているんだい?新婚旅行中なんだろう?それに、拠点は王国バルドだったはずだねぇ。闇ギルドの動きもラルドが死亡して止まったようだし、場合によっては一旦国に戻って無事を報告した方が良いと思うけどねぇ」


 一気に三人抜けた事で、ソルベルドとミューも動くべきだと告げているサルーンなのだが、ソルベルドは歩く事もままならないサルーンを一人にする事が出来なかった。


 それに・・・これからは高速移動をしようとしても制御できる可能性が低いので、予想以上の威力・速度で移動して何かに激突する可能性もあり、そうなるとある意味生身のミューが大怪我を負ってしまう。


 何をするにも今迄通りにはできないので、新たな一歩が踏み出せない。


 事後ではあるが色々と事情を聞き及んでいたミューは、何も口にする事なく黙ってソルベルドに寄り添っている。


 サルーンも体力が無くなってしんどいのか、今迄通りにソルベルドに絡む事が出来ずに休むために部屋に移動してしまい、何度目になるのか分からないが悲しそうな視線を向けているソルベルド。


 最愛の夫の姿を見て、ミューは意を決して口を開く。


「ソルベルド様・・・思い切って、スロノ様に相談しては如何でしょうか?」


 この場の面々はスロノが<収納>、<魔術>、<操術>を持っている事は理解しており、通常能力は一つ、多くても二つで、二つ目の能力は育たないと言う一般常識から逸脱しているのも理解している。


 そもそもリリエルの回復術の能力自体を何らかの物体に押し留める事など、世の中に存在しているどのような能力であっても不可能だと知っている。


 つまり、スロノはこの常識では計り知れない能力者だと認識しているのだが、今までは敢えてその辺りを聞く事や、情報開示に繋がるような事は一切していない。


 本来能力に関する詮索はタブーなのだが、ここまで落ち込むソルベルドを回復させるためにはそうも言っていられないと、冒険者としての最低限の礼節とも言える部分を破るべきだと告げている。


「それは・・・難しい問題や」


 流石にSランカーともなれば能力についての常識は嫌と言う程知っており、自らの能力は公になっているがスロノの能力が公になっているのは<魔術>Sだけなので、それ以外の能力に対して調べる事に繋がる行為はどうしても拒否感が出てしまう。


「ソルベルド様の想いは理解しています。ですが、コレはサルーン様の為でもあるのです。大丈夫です。スロノ様ならば笑顔で話を聞いて下さいますよ?私も同席しますから、頑張りましょう?」


 スロノの今迄の態度や愛する妻からの後押しもあって、スロノがいるうちに話しておこうと覚悟を決めるソルベルド。


「スロノはん、ちょっとええか?」


 ミューと共にスロノに話しかけたソルベルドは、スロノの表情が一瞬曇ったのを見逃してはいなかったのだが、今更後には引けないと祈る気持ちでスロノの反応を待つ。


 スロノはソルベルドがミューと共に自分だけに声をかけてきたので、惚気攻撃の対象になってしまったのかと身構えただけであり、真面目な話を聞きたくないと言う思いは爪の先程も無い。


 ソルベルドが今までに散々惚気の口撃をしてしまった結果とも言えるのだが、互いに緊張の表情のまま数秒が経過する。


「わ、わかりました。その・・・恋愛とかそう言った話じゃないですよね?それならば、きっとドロデスさんが聞きたがっていると思いますよ?」


 ドロデスが近くにいない事を目ざとく確認した後に、迷いなく生贄に差し出すスロノ。


 スロノの表情の変化の原因がわかったソルベルドとミューは、緊張からか少し脱力してしまう。


「スロノ様。そのお話は別の機会にさせて頂くとして、今回はサルーン様の件で相談があるのです」


 ミューの言葉を聞いて、今じゃなくて後で聞かされるんだ!と思ったスロノだが、これから真面目な話が始まる様なので他の面々に聞かれないように移動する。


「スロノはん。ワイの師匠の事やが、スロノはんも知っての通りにラルドに能力を消失され、その上で・・・気が付いていると思うんやが、ワイに残った能力も譲渡したんや。その結果があのザマや。頼む!何とかならへんやろか?」


 自らの能力についても話す事が必要なので、迷う事無く事実を告げている。


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