表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
201/235

(190)大森林⑨

 エルロンはラルドが敗戦する可能性が高いと判断して、逃走に意識を向け始めている。


 ラルドの攻撃が当たる回数よりも受ける回数の方が圧倒的に多くなった頃、心臓の当たりに攻撃を仕掛けたサルーンの一撃を受けた所に何らかの道具があったらしく、何が起こったのかエルロンですら分からない状態でサルーンが吹き飛ぶ。


「ははははは、甘いぞサルーン。これで残るはお前だけだ、ソルベルド」


 完全に攻撃を反射する特殊な魔道具だったようで、サルーンの一撃を完全に反射されてその身に受けてしまったので動く事もままならずに倒れているサルーン。


「ババァ!」


 サルーンを守る位置に一気に移動して槍を構えるソルベルドだが、サルーンが戦闘を継続できないのは誰の目からも明らかだ。


「恐らくあっち(大森林)も終ったようだな。お前にも理解できるだろう?ソルベルド!」


 周囲に張り巡らせた道具の力で状況を把握していたラルドは大森林側からエルロンが出てきた事は分かっていたので、余裕が出来た今、ソルベルドと虫の息のサルーンの心を完全に折る為に敢えてエルロンを見る。


「・・・」


 大森林の中で戦闘し、戻っているのがエルロン一人である事が示す事実は一つであると考えたソルベルドは、散ってしまった仲間の為にもこの場でラルドとエルロンを始末しなくてはならないと覚悟を決めるのだが、現実を把握する能力にも長けているので自分の命はここまでだとも思っている。


 このままミューに気が付かれない様に敢えて距離を取りつつ戦闘する事に意識を向け、最後にミューをもう一度だけ視界に入れたい気持ちをグッと堪え、槍を構える。


 僅かな視線の動きでミューの存在を悟られる事を避けた為なのだが、前方にいるラルドと多少森の方面にいるエルロンではない存在、背後に倒れているサルーンからか細いながらも明確に声が聞こえ。


「バ、バカ弟子・・・アタシからの最後の手向けを渡すから、受け取りな」


 何か・・・視線や気配察知をラルド達から外すわけには行かないので想定になるが、サルーンの手が足に触れたと思った瞬間、そこから熱いながらも一切不快感が無い、寧ろその熱と癒合すかのような何かが流れ込んでくる。


 その作業は一瞬なのだが、熱が収まったと思った瞬間に自分の力が劇的に上昇した事を把握したソルベルド。


 サルーンは最早自分では動く事もままならないのでラルドに対峙する事は出来ず、これから弟子であるソルベルドがラルドとエルロンを相手にする以上は残った能力をソルベルドに委譲する事を決めた。


 力の劇的な上昇は体が付いてこない事が殆どだが、癖を含めて近似している動きが出来る能力者による移譲であれば当てはまらない。


 何故このような事が出来るのかは不明だが何をされたのかは把握したソルベルドは、振り向く事無く背後でただの老婆になってしまった師匠のサルーンに本心から礼を伝える。


「師匠・・・助かったで。ワイが師匠からの力を使ってこの場をきっちりと収めたるさかい、安心して見とってや」


 一方のラルドとエルロンは急激に力が上昇したソルベルドに対して何が起こったのか理解できずにいたのだが、ラルドは流石に能力を消失させるような道具を作り上げるだけの技量と知識があるので、何らかの方法で能力を委譲した事を悟る。


 レベルの概念がどのようになっているのかは不明だが、明らかに以前サルーンが発していた強者の気配をソルベルドが引き継いでおり、多数の魔道具を消費した今の状態では単独での勝利は厳しいと思っている。


「エルロン!」


 回復薬をエルロンに投げつけると、今度は逆にエルロンとラルド対ソルベルドの二対一に持ち込む。


「クソベルド。師匠だのなんだの言っていやがったが、他人の能力を奪いやがったのか?下種野郎が!」


 エルロンも状況を把握した結果この結論に達しており、自分が行えば正義だが他人が行えば悪なので、そこをついて少しでも動揺を誘う。


 ラルドもこうなってしまっては相当な犠牲があるのかもしれないと思いつつ、未だ発動させていない巻物・・・奥の手とも言える<補強>Eの使い処だと考えていた。


 当初ラルドは、エルロンの助力によってサルーンとの一騎打ちの予定だったのだが、ソルベルドとサルーン二人を相手にしていたのでこの巻物を使用するタイミングが無かった。


 結果的にサルーンが能力を失ってソルベルドに集中した今、正にこの巻物を使用する絶好のタイミングだと慎重に発動のチャンスを窺う。


 エルロンもラルドが何かをしようとしているのは分かるので、直感で今のソルベルドには勝てない事を理解した以上は隙を生み出す事に専念する。


「クソベルド。テメーの薄っぺらい正義はその程度だったんだよ!そのムカつく偽善の仮面を叩き割ってやるから、かかって来いよ!」


 自ら突っ込めば何かをしようとしているラルドの邪魔になるばかりか、場合によっては自分も被害に遭いかねないと考えたエルロン。


 内心必死で挑発して、ソルベルドからの攻撃を受け流す為に構える。


「ワイのこの一撃は、大森林で散った仲間の想いもあるんや。成仏なんぞせんでええで?永遠に恨みを募らせたまま漂うのがお前に相応しい末路や!」


 流れる槍捌きを見せつけた後に、以前と同様刺突の構えになるソルベルド。


 対してエルロンは棒を含めた武器を持っているわけではないので、素のままで<闘術>を使って受けるための姿勢を崩さない。


「ホナ、永遠にさよならや。化けて出てきてもええで!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ