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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(180)対策⑤

 冒険者最強の称号であり、冒険者だけではなく色々な立場の者達からも羨望の眼差しで迎えられるSランカーの一人、陰のソルベルドが、自らの力不足を明確に認めた上で助力を求めて頭を下げている。


 この立場になるまでは過酷な修練があるので自らの力に対して誇りを持っており、通常敗戦を素直に認める事も無ければ同格に助力を求める事など無いのだが、今のソルベルドはミューを守る事が自分のプライドよりも遥かに重要になっている。


「本当に変わったねぇ。でも、今のバカ弟子は嫌いじゃない・・・いや、寧ろ好ましいねぇ。お三方。アタシの方からもお願いするよ」


 そこにソルベルドの師匠であるサルーンも頭を下げる。


 スロノとは異なって、長い修練の末にSランカーに至った存在ともなればサルーンの話は聞き及んでおり、その二つ名である“疾風のサルーン”の実力が桁外れである事も理解している。


 理解しているのだが・・・今のサルーンは通常のSランカーと比べて多少経験による上積みがある程度で、過去を含めてSランカー最強と謳われていた存在であるとは思えなかった。


 各自がそんな事を思いながらも、シュライバの紹介もあって目の前で頭を下げているカラフルな髪の毛をした女性がサルーンである事は疑いようが無く、自分とは格が違うので力の本質を感じ取れないだろうと思っている。


「サルーンさん、頭を上げてください。私達はソルベルドさんへ助力する為にこの場に来たのです。きっかけはシュライバさんの招集である事は間違いありませんが、道中に召集の理由も知りました。何が言いたいのかと言いますと、自らの意志で助力する為にここに来たのですよ?」


 聖母リリエルらしく穏やかな笑顔で告げ、リューリュやビョーラも頷いている。


 正直流星ビョーラに関しては直接的にエルロンと対峙する理由がないと思われがちだが、過去に自らが大切にしている者・・・孤児院で生活をしている子供達を人質にとるような形で交渉とも言えない脅迫をされた過去がある。


 一旦は大森林で死亡したと情報を得て安堵したのだが、何故か生存していた挙句にソルベルドに完全に勝利したと情報を得たので、同格が集結しているこの機会を逃す事無く不穏分子(エルロン)を排除・・・抹消する事に決めていた。


「ちょっと良いか?もう少し情報を展開しておきたい。知っている可能性はあるが、確認の意味もある」


 再びシュライバに視線が集まる。


「エルロンが復活した理由・・・そもそも死亡していなかった可能性が高いと思うが、そこは今重要ではない。対策を考えるにあたり何故強くなったのかを検討した結果、エルロンが使用しているグローブが特殊である可能性が高いと判断した。同行しているラルドは仮定の域を出ないが<錬金>の能力を持っている可能性が高く、ラルドが作成した特別な武器を装備したのだろう」


「ラルドの能力を推測したのはアタシだねぇ。そう長い時間じゃないけど共に行動をした時、そして先日対峙した時の情報からそう判断したから、間違いないと思うねぇ」


 シュライバの説明を補足するかのようにサルーンが話し、仮定の域は出ないながらもかなり高い確率でエルロンが強化された原因を知る。


 強化の原因が理解できたので、余り考える事が得意ではないドロデスが思った事を口にすると、直にご意見番のミランダに否定される普段の流れが見え始める。


「じゃあよ?手っ取り早く一気にエルロンを囲っちまって、武具を破壊すりゃー勝ちじゃねーか?」


「ドロデスさん、そんな簡単に行かないわよ。先ず囲う所が難しいでしょ?私達、あの時にエルロンの動きに対応できると感じたかしら?」


 実際に戦闘を行ったわけではないが、エルロンとソルベルドの戦いに介入できるとも思えなかったばかりか、現実的に迎撃しようと思い行動したのだが全く相手にならずに訳の分からない内に吹き飛ばされてしまった。


 厳しい現実を突きつけられて黙ってしまうドロデスだが、決して臆したり怯えたりしたわけではない。


「そこは俺が対処してみよう」


 【黄金】のジャレードやオウビほどではないが、結構寡黙で知られている流星ビョーラが髪の毛と同様綺麗な茶色の目を真っすぐシュライバに向けて告げる。


「そうだな・・・ビョーラであれば多少避けられても攻撃の数が桁違いだから、武具に損傷を与える事が出来るかもしれない」


 明らかになっている各自の能力なので、期待される効果を敢えて説明するシュライバなのだが、少し前のドロデスと同様にサルーンに否定される。


「ちょっと待ちな。シュライバ、耄碌するにはまだ早いさねぇ。楽観しすぎだよ。あのラルドが作った武具が簡単に破壊できると思っているのかい?確かに数撃ちゃ数発は当たるだろうが、強化された状態のエルロンの攻撃を支えているんだよ?それだけの強度がある武具を破壊できるのかい?」


 言われてみれば攻撃力が上がっているエルロンの打撃にも耐える力があるグローブなので、通常の攻撃を被弾しても破壊される可能性は低い。


「あ~、面倒クセーな。いくら考えても良い案なんて出ねーよ。こうなりゃー、気合!精神論で撃破する他ね~だろ?」


 サルーンの言葉は否定できる要素が何もなく、結局話が振出しに戻ってしまい多少イライラしたドロデスが、このまま話を続けても良い案などは出てこないと精神論を語りだす。


 だからと言って全てを精神論で進めるわけにも行かないので、最低でも誰がどのように動くのかと言った基本的な部分だけを決める方向に移行し、やがて全てが決定した。


「良し。これで行く他ないだろう。未だあの二人から攻撃が無かったのは僥倖だ。あいつ等の行動を掴めていれば此方から逆襲する事も出来たのだが・・・残念ながら結果は結果として受け止めよう。では、幸運を祈る!


 敢えて存在を曝け出す面々と、気配を消す面々とに分かれて大森林に向かった。


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