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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(19)スロノの過去⑩

スロノの過去〇シリーズは終わりです

 スロノの背中には致命傷には程遠いが刺し傷が生々しく残っており、未だに血が滲んでいる状態。


「スロノによればよ?見た通り無防備な背後から麻痺毒を注入されたようだぜ?随分と非道な事をしやがるよな?生きたまま魔獣の餌に差し出して、その間にテメーらだけはトンズラしようってんだから救えねー。俺としちゃー、正直な所これほどの悪事が立証できりゃー資格剥奪だと甘いんじゃねーかと思う訳よ」


「確かにその通りだな。その話が事実であれば資格剥奪では済まないのは当然だろう。良くて死罪、悪くて同じ罰を与えると言った所か?」


 【黄金】のリーダーの言葉に同意しているギルドマスターの声を聞き、何故か三人の冒険者はガタガタ震えだす。


 これだけで誰がどう見ても有罪なのだが、ここまで来てしまってはどう謝罪しようが命は無いので僅かな望みに賭ける。


「そ、そんな傷は証拠になり得ないと思いますが?」


「随分と激しく動揺しているじゃねーか?激しくガタガタ震えやがって、生まれたての獣かよ?で、テメー等はどうせ何時誰が付けた傷か分からねーって言いてーんだろ?聞くところによると、そっちの帯剣しているお前。懐に小太刀を持っているらしいな。そこの微妙な膨らみに隠していやがるのか?その切っ先についている毒とこの傷に残っている毒を鑑定すりゃー、これ以上ない程の物証だろ?その上、その小太刀の形と傷の形を一致させても証拠が補強できるんじゃねーか?どうだ。違うか?」


 もう言い逃れする事は出来ないと理解したのか、回復薬を飲んでいる<魔術>Dを持つ男も震えによってしっかりと回復薬が飲めない程の動揺っぷりだ。


 正直この男だけは囮にするような行動を理解してはいなかったのだが事後報告で状況を聞いており、結果的に自らが助かったので何も問題はないと思い命の恩人と言っても過言ではないスロノが死亡したとしても何も思う所はなく、寧ろ助けてくれた仲間にお礼を伝えていたほどなので同罪だ。


「決まりだな。資格剥奪の処理はしなくても良いぞ。業務に戻れ」


 ギルドマスターに言われた受付は何故そのような指示を出したのか分からないままだが、目の前に来ていたスロノに対して微笑むと自席に戻って行く。


 三人のレベルDの冒険者達も、資格剥奪の処理を中止すると宣言したように聞こえたので僅かな光明が見えて口々に謝罪を始める。


「も、申し訳ありませんでした!」


「初の依頼で動揺していました。二度とこのような事は致しません!」


「俺達が間違っていました。今後は誠心誠意依頼を遂行します!」


 この辺りから周囲の冒険者は興味が無くなったのか、再び喧騒に包まれ始めるギルド。


「ここじゃあ邪魔くさいな。【黄金】と、スロノだったか?疲れている所に悪いがちょっとだけ時間をくれ。ついでにこいつらも連れて来てくれよ」


 ギルドマスターがこの場を纏めた上で移動し、関係者がギルドマスターの後に続く。


 着いた先はギルドの地下であり、そこには犯罪者を確保する牢が準備されている、


 三人の冒険者も全くの無罪で見逃されるとは思っていなかったので投獄程度で済めば御の字と安堵しており、指示されたまま黙って自ら牢の中に入って行く。


―――ガチャ―――


 全ての武器や防具は没収されており、素のままで中に入っている三人を確認するとギルドマスターはしっかりと鍵を閉める。


 重傷を負っていた<魔術>Dを持つ男は、ある程度回復できた為にこのままの状態でも命に別状はない。


「じゃあ、お前等の処罰を告げる。なんだか資格剥奪の処理を止めた事を勘違いしているようだが、これから死亡する連中の資格を剥奪しても意味がないからな。しっかりと罰を受けろ。ただ、俺はお前等と違って優しいから二つの選択肢を提示してやる。一つ目は森の深い位置に連行されて放置される事。運良く町に戻ってくれば本当に冒険者資格剥奪だけで済ませてやる。二つ目はこの場で斬首。さぁ、どっちが良いか直に選べ!」


 資格が剥奪されてしまえば今後の生活は非常に厳しいものになるのは目に見えているのだが、今は生きるか死ぬかの瀬戸際なので僅かでも生き残れる可能性に賭けてしまった三人の冒険者。


 冷静に考えれば長く恐怖を味わって死亡するのが確実なのだが、生存の可能性があると聞こえてしまい迷わず結果的に過酷な方を選んでしまったのだ。


「お、俺達は森を選ぶ。そうだろ?」


 <剣術>Dの男が同意を求めるようにこう告げると、残りの二人も同じだったようで激しく頷く。


 一人で行動しては絶対に助からないと理解しているのだが、三人集まって補完し合えば生き残れる可能性が高くなると思っていた。


 パーティーで行動する事をギルドが推奨している理由も、普通は一つしか持てない、複数あっても一つの能力しか真面に使えないので互いを補完し合うべきとの理由なのだが、森の深い場所になれば浅い場所に居るレベルDにさえ歯が立たない三人ではどうなるかは明らかだ。


「聞いたか?【黄金】の面々にはこの場で依頼だ。こいつらを明日にでも森の奥にぶち込んでくれ。スロノは何か要望はあるか?っと、罰の軽減は出来ない事は明言しておこう。冒険者に甘い対応をしては今後無法地帯になって手が付けられなくなるからな。戒めは戒めとしてしっかりと行われるから有効に働くんだ」


 こうなる事を見越して森の深くまで行ける実力のある【黄金】をこの場に同行させたようで、残る当事者のスロノに対しては罰に対する要望を聞くギルドマスター。


 突然振られても特に要望はないと思ったのだが冷静に考えれば死罪になるのであれば三人の持っている能力が欲しいと欲が出ているスロノなので、人に触れるだけで能力を収納できるかのテストにもなる良い機会だと思い、また、あれ程の悪行をしてきた人物なので後腐れも無いと割り切れていた。


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