表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
182/234

(172)落ち込んでいたが・・・

 ギルド本部で体を休めていた【黄金】やソルベルド夫妻、そしてサルーン。


 翌朝、総代シュライバと共に食卓を囲んでいる。


「シュライバ、随分と良い部屋を準備してくれていたんだねぇ。おかげでゆっくり休めたよ。他の鼻垂れ共も同じようだねぇ」


 生まれ変わった愛弟子に送る能力を消失されて意気消沈してはいたが、負の感情を引きずらないのも高ランカーに至る資質である為に、すっかり平常心に戻っているサルーン。


 同じく【黄金】やソルベルドも平常心に戻っており、そうなるとどのようになるのかと言えば・・・


「はぁ~、ムサイおっさんと恋愛の経験すら知らなさそうな若者・・・そしてババァ。そんな中に一輪の花。映えるわ~」


 師匠であるサルーンの周囲への気遣いを一切気にする事も無く独自の世界で語り始めるソルベルドは、妻であるミューと共に何故かツヤツヤしている。


「ソルベルド、お前・・・」


 ドロデスが何か言おうとしたのだが、昨日とは打って変わって平常運転だと気が付いた為に、絡まれてはかなわないと即座に言葉を飲み込む。


「ソルベルド・・・色々と大丈夫か?」


 一方で、ソルベルドの本気を知らない総代シュライバは自ら地雷原に突撃してしまい、サーッと波が引く様に【黄金】やサルーンまでもが距離を取る。


「よくぞ聞いてくれました、シュライバはん!!どう見ても恋愛経験ゼロの有象無象にこの話をしてもおもろないと思っとったねん!無駄に年齢だけ重ねたババァもおるしな?そやけど、流石にギルド本部総代ともなれば数多の経験をしとるんやろ?そこにワイの素晴らしい話を知識として詰め込んでおけば無敵やで?」


 見た目上は痩せて眼鏡をかけている上に能力は<操術>なので本人は冒険者としての力はあまりなく、実は恋愛経験もたいして無いシュライバなのだが、ソルベルドにとっては話を聞いてくれる相手がいればそれで良いので、勢いのまま話が始まる。


 結構こき下ろされている【黄金】やサルーンだが、【黄金】は何か言おうものなら絡まれて被害甚大になる事が確実であると理解しているし、サルーンは今の所本心から愛弟子が立ち直ったのか判断できないので静観している。


 言い訳も出来ない程に明確な戦力差で叩きのめされたのだから、現役Sランカーとしての矜持もあるのだろうと配慮した結果だ。


 それほどまでにソルベルドと対戦していたエルロンが驚異的な力を持っていたのだが、サルーンは自らの<槍術>SSをもってしても緊急対応で全力ではなかったにしろ致命傷を負わせる事が出来なかったので、レベルが下がってしまった今では真面に向き合えるのか怪しくなっている事も理解済みだ。


 敵は何時この本部に襲い掛かってくるのかもわからない状態なので、可能であれば総代が出した現役Sランカー招集が完了する前の・・・今すぐにでも対策を検討したかったのが本音なのだが、最早そのような話題を口にする雰囲気ではなくなっている。


 全員が揃ってからそう時間はかかっていないのだが、何故かソルベルドの真正面に座らされているシュライバは早くも燃え尽きており、その横に笑顔で座っているミューは時折ソルベルドに飲み物を提供している。


「ミランダさん。ミューさんのあの行動って・・・ひょっとして、ソルベルドさんが話し易いようにしているのですかね?」


「私も思ったけど、余計な事は考えない方が良いし、見ない方がいいのかもしれないわ。今は朝食をしっかりと食べて、体調を万全にしましょ?」


 今までの経験が活きており、ソルベルドのあり得ない程の甘い甘~い独演会が開催されている中で刺激しないように配慮しつつではあるが、平然と食事を口にしている【黄金】。


「アンタ達・・・相当図太いねぇ。まっ、それくらいの胆力が無くては冒険者なんて職業を継続できるわけはないねぇ。アタシも見習うかねぇ」


 胆力ではなく経験だと言いたいのだが、沈黙は金とばかりに全員が無言で食事を食べており、この場にはソルベルドの声と僅かな食器のこすれる音が響く。


「ソルベルド様?そろそろ私達もお食事にしませんか?」


 【黄金】やサルーンが間もなく食事を終えると漸く気が付いたのか、ミューがソルベルドに対して食事を勧め、シュライバが必死で食らいつく。


「そ、そうだぞソルベルド!食事を抜くなどあってははらない。何時何があるのか分からないからな。不測の事態にも油断なく対応できるように普段から鍛え、可能な限り生活基盤を整えておくのも高位ランカーの務めだ!」


 この惨状から抜け出したい余りに一般論を必死で繋ぎ合わせているシュライバなのだが、その必死の努力などどこ吹く風で、ソルベルドはミューの言葉にだけ反応する。


「流石はワイの女神や。食事は大切やもんな。シュライバはん?あんさんも朝食はしっかりと食べた方がええで?」


 誰のせいで今迄何も口にする事が出来なかったのか!と言えれば相当気が楽なのだろうが、そこから派生して再び地獄が来る事を恐れたシュライバは素直になる。


「そ、そうしよう」


 その様子を、少々距離が離れている場所から見ていた【黄金】とサルーン。


「あの様子だと、もう立ち直ったのかねぇ?」


「サルーンさん。昨日の対戦の件を心配していたのですか?私が見る限り、ミューさんに慰めてもらって完全に・・・必要以上に立ち直っているように見えますよ?」


 生まれ変わった後のソルベルドと係わる時間は圧倒的にサルーンよりも長い【黄金】なので、気持ちが沈んでいる様子がない事は間違いないと告げるミランダ。


「そうかい、ありがとうねぇ。あのお嬢さん(ミュー)は本当にバカ弟子を任せられるねぇ・・・でも、これからが本番さね。ラルドとエルロンだったかい?あの連中が黙っている訳はないからねぇ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ