表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
170/239

(160)敵とは・・・

 時は少し戻り、時折パーミット公爵が襲撃を受けるようになり、王国バルドの国王が多数の犠牲を払って情報を掴みサルーンに対処を依頼した頃。


「やはりサルーンが前面に出てきたな。あの女が出てきた以上は最悪を想定して尚足りない。余計な作業は一旦中断し、あの女の対処に全力を向けろ!」


 地面に胡坐を組んで座っている大柄な男は頭上に角が見える鬼族と呼ばれる存在であり、人族と比べると長命な種族である事は間違いない。


 指示を出している男は、少し前に自らの企みが瓦解して罪を償う事になったミュラーラ元公爵から、王国バルドにいる恨みの対象であるパーミット公爵とその娘であるミュー、更に差し出す報酬に見合えば王国バルドも破壊する様な依頼を受けていた。


 頬に大きな傷があり、その傷に触れるようにしながらサルーンの動きに最大限の警戒をするように指示を出している鬼族の男。


「承知しました、ギルドマスター」


 鬼族からの命令を受けた人物は鬼族をギルドマスターと称してこの場から消えるのだが、王国バルドでも把握していた通りにサルーンが前面に出てからはパーミット公爵が攻撃を受けなくなったのにはこの男の指示があったからだ。


 配下の男は鬼族の男をギルドマスターと呼んでいたのだが、当然ここは普通のギルドではない。


 かつて<操作>Sを持っていたミルロンが行っていたような後ろ暗い事を何でも行う、所謂闇ギルドであり、その頂点にいる鬼族の男がギルドマスターと呼ばれているだけで真っ当な組織ではない。


 部下が去ったので静寂に包まれているこの部屋で、不敵な表情をしている鬼族の男。


「あの時の借り・・・この傷の借りを返すチャンスがやって来たぞ、サルーン。まさかこれほど都合の良い依頼が舞い込んでこようとは、正に復讐をしろと悪魔が配慮してくれたに違いない!」


 神を信仰しているわけではないので鬼族の男にとって超常の存在は悪魔になるのだが、何れにしてもサルーンに恨みがある人物なのは間違いない。


「まさかこの俺が逃走せざるを得ない程の実力を持っているとは思わなかったが、今はあの時の俺ではない。対してサルーンは所詮人族、既に衰えが来ているのは間違いないからな。能力を消滅させた後に復讐するも良し、無能を曝け出した状態で生き地獄に送るも良しだ」


 当初パーミット筆頭公爵程度であればそう労力を必要とせずに対処できるだろうと考えており、依頼元は既に断罪されてこの世にはいないのだが報酬を受け取っている以上は最低限の仕事をこなす事が信条なので、配下の一部をけしかけていた。


 ところが想像以上に相手の戦力が高く、また同じく攻撃対象に指定されていたミューに至ってはSランカーが夫になっており、その男は自分が恨みを持っているサルーンの弟子である事まで突き止めて運命を感じている。


 そこまで情報を集めれば間違いなくサルーンが表に出てくるだろうと想定しており、事実その通りになった瞬間にこの依頼の関係者全員をサルーン対処に向かわせていた。


 今の所吉報は一切なく追跡に向かった人物、攻撃に向かった人物が返り討ちにあっているとの報告だけしか上がってこないのだが、これから復讐する人物が無力ではないと知る事が出来たと気分は良い。


「もう少し時間が必要か?」


 座りながらも手を伸ばして紙を見ると、そこにはあの禍々しい魔方陣が薄暗い光を発していた。


「これでサルーンの能力を消滅させて弟子のソルベルドも無力化し、目の前でパーミットとミューとか言うパーミットの娘を消せば良いだろう。その時が待ち遠しいぞ!」


 この鬼族の男が魔方陣、サルーンの能力、その辺りの知識があるのは当然で、かつてSランカーのサルーンと行動を共にしていた存在であり、自らは目立つのを避けたのか戦闘系統の能力ではないからSランカーとして登録しなかったのかは不明だが、<錬金>Sの能力を持っている。


 この能力があればこの程度の魔方陣の作成はお手の物だし、過去冒険者としてサルーンと共に活動していた際にもその能力を使って自らを補強し、そもそも種族の関係から人族とは地力が異なるので相当な成果を出せていた。


 逆に言えば、これ程の能力があっても生命力を犠牲にしなければ能力を無効にできないとも言える。


 実は冒険者ギルドが練成している武具も<錬金>の能力者が作業をしているのだが、レベルSに至っている人材はいないので、この鬼族の男が作る武器に勝る品は世に出回っていない。


「サルーン・・・お前が容赦なく設立ばかりか加入を断ったこのギルド、ここまで巨大な組織になったぞ。世界に光があれば当然闇もある。その闇をコントロールする事が出来れば世界は平定するのは間違いない。この崇高な考えを理解できないばかりか、容赦なく攻撃してくるとは。復讐の時は間もなくだ。待っていろ!」


 過去、人族のSランカーと行動を共にしている時点で注目を浴びてしまい、それが能力を公にしないで活動している鬼族であれば扱いが悪くなっていたのは容易に想像でき、そこから闇の部分にも視線が向くようになっていた鬼族のラルドと言う男。


 敢えてその部分()を管理する必要があるので自分がその頂点に立つと宣言したのだが、その際にサルーンにこれ以上ない程に反対され、それでも意見を曲げなかった時に突然攻撃され命からがら逃げだした過去がある。


 サルーンとしては本気で攻撃したわけではなく目を覚ましてほしい気持ちがあり、勿論回復薬も常備していたのでしっかりと傷を癒すつもりでいたのだが・・・その後互いの接触がまったくなくなり僅かな行き違いが埋めきれない大きな溝に発展していた。


 そして訪れた大きな転機・・・ミュラーラ元公爵の依頼を皮切りに、互いが再び接触する時がきてしまう。


 能力を使えば治せる当時の傷を敢えて残して恨みを忘れないようにしているラルドと、当時の事は記憶の片隅に追いやらており、今は弟子の改心に心を躍らせながらも今回の対応の為に動き回っているサルーン。


 両者が再び相まみえるのは、そう時間がかからないだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ