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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
165/238

(155)ギルド本部へ①

「まったく、誰が何を企んでいるのか・・・アタシはゆっくりと余生を楽しみたいんだけれどねぇ」


 万国共通の認識で危険な場所であるはずの大森林に侵入し、能力の高さから周囲が異常な状態であると正確に理解しつつも普通の態度を崩さないサルーン。


 常に平常心であり続ける事も強さの一つと理解しており、態度に変化はないながらも警戒を怠る事無く空間、木、地面、夫々に何らかの異常が無いのかを確認している。


 大森林の中である以上は全てが異常と言っても過言ではないのだが、得体のしれない人物達がこの周辺で何をしていたのかを知る必要があるので、人が関連するような異常がないかを必死で探している。


「ん?」


 やがて、枯葉を槍でどかした際に人為的に置かれた紙を発見する。


 複雑な模様が描かれているので魔術か呪いか、何らかの術を発動する為の媒体である事だけは間違いないが、今までの経験からサルーンは多少の知識はあってもこれ程複雑な模様を目にした事が無く、その用途までは分からない。


「コレは・・・安全の為にギルド本部に持って行った方が良いのかねぇ?この場所から移動した際に起動する可能性も考えると、遠隔でコイツ(魔方陣)を隔離できる能力を持った人物がいると助かるんだけどねぇ」


 どう考えても怪しいこの紙をどう処理すべきか悩んでいるサルーンだが、突如として背後にある木の上に一気に飛び乗ると、少し間をおいて魔獣が数体現れる。


 サルーンの実力であれば対処できる存在ではあるが、何が起きるか分からない大森林なので戦闘を避けており、この行動がエルロンとは異なって未だ入り口を認識できる距離に待機できる結果となる。


 仮にこの場で戦闘しようものなら、後から後から魔獣が襲い掛かった挙句に入り口から遠ざかる方向に誘導されるので、やがて方向感覚を失って森から出る事は不可能になっただろう。


 特にそこまで知識があって回避したわけではないのだが、極めて冷静に行動が出来た結果だ。


 木の上にいても周囲の殺気は感じるので警戒は怠っていないのだが、眼下の魔獣はサルーンの気配をしっかりと掴んでいるようで木の下からサルーンを見上げる形でウロウロし始めて増殖している。


 魔獣達は足元が疎かになっているので、今は部分的に見えてしまっている謎の模様がある紙を踏みつけると、その一体が紙に強制的に吸われるように消えて行く。


「・・・アレは相当危険だねぇ。特段何らかの術が発動しているようには見えないから、大規模な術を発動する為の生命力を集めているのかねぇ」


 サルーンの仮定は正しく、とある人物が今は亡きミュラーラ元公爵からの依頼を受けて大規模な呪いを発動しようとしていた。


 対象は当然逆恨みながらもパーミット筆頭公爵一族であり、そこから派生して王国バルドにも広がっている。


「あれほどの品であれば、アタシの中途半端な知識で行動するのは危険だねぇ」


 知識・経験のない範疇の事を独断で判断しては良い結果にならない事を知っているので、模様を部分的ではあるがしっかりと記憶した後に一気に木の上を高速で移動して入り口に向かったサルーン。


 比較的浅い位置だったおかげで問題なく森の外に出られたので、そのままありとあらゆる情報が集約されているギルド本部に向かう。


「あの森に侵入していた連中は、自らもあの模様に飲まれたんだねぇ。何も知らずに飲まれたのか、知っていて飲まれたのか・・・どっちにしても悲しい結末だねぇ」


 サルーンは遠くからこの場を観察していた時に、森に侵入して浅い位置をウロウロしていた人物達が忽然と姿を消していたので何がどうなったのか不思議に思っていたのだが、不本意ながら謎が解けてしまった。


「まったく、厄介な事だねぇ」


 疾走しているサルーンは大森林から脱出直後にある程度気配を消して移動しているので、ここまで追跡していた人物達のレベルではサルーンが森に出てきた瞬間は把握できたのだがその後の動きを全く掴めず、大森林故に再び飲まれてしまったと思い未だ無駄な監視を続けている。


 一方のスロノ側では、相当な力を持つ魔獣の監視が行われていたのでサルーンを見失う事無く、呟きや方向から間違いなくギルド本部に向かっていると判断して【黄金】とソルベルド夫妻も移動を始めていた。


「ホンマ申し訳ないで、ミューはん。せっかくの新婚旅行が・・・」


「いいえ、ソルベルド様!コレは私の、パーミット家に係わる事ですから、こちらの方が申し訳ありません!」


 同行している【黄金】一行をそっちのけで二人の世界に入っているのだが、移動速度の関係でミューをソルベルドが大切に抱きかかえている為に、他の面々はそこから派生する甘々の惚気攻撃を受けない様に放置している。


「この速度であれば、恐らくサルーンさんと同日には到着できそうです」


「そりゃー良かったぜ。一応シャールには本部側に俺達が向かうから、それまでサルーンを留め置くように伝言を頼んだからよ」


 ドロデスは今回の話をしっかりとギルド本部に伝達しており、スロノはSランカー招集時以来の二度目の本部へ向かう。


 実力者揃いの為に苦も無く本部に到達すると、全員が会議室に案内される。


「ババァ!何で大森林に一人で入っとんねん!ワイはそんなに頼りないか?」


 中には総代のシュライバ、秘書官ミミ、そして引退済みの元Sランカーサルーンが待機しており、サルーンの姿を確認したソルベルドは開口一番思っていた事をそのまま直接ぶつけていた。


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