表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
150/236

(140)ミルロンとエルロン④

何故かコロナで目が痛いです

 ミルロンはこの蜘蛛が敵に回ると厄介であり、出口までの襲撃はミルロンが居れば良いと思っている。


 一方のエルロンはミルロンが支配下に置いている蜘蛛の力で迷う事無く出口に向かえると思っていたのだが、突然ミルロンが蜘蛛を毒殺したので焦っている。


「落ち着け兄貴。コイツ(蜘蛛)は俺の支配下から抜け出しかかっていたから止む無く始末した。今までの移動時間から考えると、出口はそう遠くねーぜ?」


「!?・・・お前の支配から抜ける様な魔獣かよ。想像以上に過酷な環境だな」


 エルロンの前提ではミルロンは能力を失っていないので、その状態からの支配を強制的に抜けるような存在がいる事に驚愕しているが、間もなく出口と聞いて進むべき方向は分かっているので、蜘蛛が進んでいた方向に向かって歩き出す。


「ミルロン。新たな魔獣を支配下に置くか、支配下にある魔獣を呼び寄せたらどうだ?」


 相手が兄とは言っても能力が使えない今の状態を知られるのは弱みを晒す事になるのでプライドが邪魔をして許容できず、適当な言い訳を告げる。


「この森に呼び寄せても、到達する前に全滅だろうよ。それに、正直あの蜘蛛を支配下に置くので相当な力を消費したからな。新たに準備するのは正直ちょっと厳しいぜ」


 <操作>についての知識がある訳ではないエルロンなので、ミルロンにそう説明されるとそんなモノかと思いながらも急ぎ足で出口の方向に向かう。


「あ、兄貴!ちょっと待て!」


 相当疲弊させられるこの森から早く出たい気持ちがあるので無意識の内にかなりの速度で移動してしまったのだが、ミルロンはその速度に全く追随できないので遥か後方から声が聞こえて初めて止まる。


 振り返ると、これまた見た事も無い様な多足魔獣がミルロンの背後から攻撃する直前だったので、急ぎ戻り一撃で始末する事に成功したエルロン。


「た、助かったぜ、兄貴」


 幸か不幸か直線的な動きしかしていないので向かう方向を見失ってはいないが、このまま戦闘が起っては再び延々と出口の分からない移動を繰り返す事になると悟ったエルロンは、戦力にならないミルロンを使う事にした。


「ミルロン。お前が先頭を歩け。魔獣共は俺がしっかりと始末してやるが、その際にお前は進んでいる方向を見失なわねーようにしろ!」


「・・・意味が分からねーが?」


 この森で迷った経験が無いミルロンは、ここで初めてエルロンから状況を聞かされて相当劣悪な環境にいると悟る。


「わ、わかったぜ。俺が急ぎ移動するからよ?兄貴の感覚でずれがあれば後方から指示してくれ」


 軽い気持ちで出口は直だと言っていたが、蜘蛛に乗っていた時間から推測したに過ぎないので、一刻も早く次の襲撃が無い内に出口が見える場所まで到達すべきだと全力で走るミルロン。


 今実行できる最も早い移動方法はエルロンがミルロンを抱えて全力で移動する事だが、敵の急襲時に対応が一瞬遅れる事で致命傷になりかねずに断念している。


 ミルロンの後方を追随しているエルロンは、自分と比べると相当遅い移動速度に正直イライラしつつも、これが脱出の最後のチャンスだと思い周囲の警戒を怠らない。


 時折現在地を確認したい気持ちに駆られて一瞬だけ空を確認するのだが・・・相変わらず飛翔種が多数飛び回っているので舌打ちをしつつ前方を見ると、エルロンが多数の魔獣に囲われ始めていた。


 数少ない信頼できる人物である事も有り、無意識の内にミルロンを進行方向に軽く押して自分がミルロンのいた位置に来ると、襲い掛かる魔獣を全て叩きのめすのだが、ミルロンがいる方面の魔獣だけは余波によってミルロンが被弾する可能性を考慮して全力で攻撃できず、中途半端な動きになり敵からの反撃を被弾してしまう。


 吹き飛ばされたミルロンは一瞬顔をしかめて文句を言おうとするのだが、後方からエルロンが魔獣と戦闘している姿を見て助けてくれたのだと理解しつつも、正直少々押されている事に気が付く。


 戦闘系統の能力があればとある位置だけ攻撃を弱めているのでどう考えてもミルロンが原因なのは分かるのだが、能力なしの存在ではそこまで理解できずにただ単に押されているように見える。


「コレはまずいんじゃねーか?」


 このままエルロンが敗北すれば間違いなくミルロンも抗う事なく敗北するので、それならば敵をエルロンが引き付けている内に向かうべき方向に進んだ方がまだ助かる目があると思ってしまう。


 多少距離があるので遠目でエルロンの戦いを見つつ、ゆっくりと変化を悟られない様に後方に後退りして距離を広げて行くミルロン。


 何時になったら終わるのかと思う程に周囲から魔獣が溢れ、彼等は全く戦力の無いミルロンは存在しないものとして強敵であるエルロンに向かって行ったことも、エルロンの行動を後押ししてしまう。


 エルロンの姿が魔獣に囲われて見えなくなった瞬間を見計らい、ミルロンは180度体の向きを変えて全力で移動する。


 背後から聞こえる激しい戦闘の音が徐々に遠ざかり体感で数時間、命がけで全力疾走をし続けた結果・・・


「や、やったぜ!」


 外の光が見え始め相変らず足元から不気味な気配を感じつつもそのまま最後の気力を振り絞って走り抜け、とっくに【黄金】とスロノは撤収しているので誰も証明する手立てはないのだが、大森林からの生還者として名を連ねる事になる。


 一方のエルロンは、何とか迎撃した魔獣が森に吸収された後に周囲を見回したのだが何処にもミルロンの姿は無く、既に死亡・吸収されてしまったのかと思い肩を落としていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ